英語の迷い道(その47)-「香りの記憶」-「紙」で本を読む意義 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

高校の図書館には独特な香りがあった。古書が饐(す)えたような黴臭い香りである。真夏でもあまり暑くはなくて何処か冷んやりとしていた。

 

古本屋にも同じような饐えた香りがある。学生時代よく古本屋を散策した。古本を眺めていて飽きることはなかった。これは焼き物と同じである。

 

新刊本の本屋にも香りがある。新しい本には独特な良い香りがある。新しい紙の香りとインクが混ざったような表現しがたい香りだ。

 

高校の頃に住んだ町のバス停のそばに一軒の本屋があった。小さな新刊本屋である。私より少し年上のきれいな姉妹が居た。

 

その本屋の独特な香りを今も思い出す。「香りの記憶」というものは長い間残るもののようである。

 

 

昨今、メールやpdfなどの電子データで文書を受け取ることが多くなったが、私は依然として「紙」が好きな方である。重要な文書は印刷して「紙」にして読む。赤鉛筆やマーカーでマークしたり、項目ごとに分類してファイルに綴じたり……。

 

 

以下の京大の問題は、そんな電子文書(書籍)に関するものである。

 

 

(問題)

近年、電子書籍の普及が急速に進んできた。アメリカほどではないが、日本でも、パソコンや耳慣れない機器で文章を読む機会は増える一方である。しかし、中高年層に限らず、紙の本でないとどうも読んだ気がしないという人も多い。論文でも小説でも普通にコンピュータで執筆される時代だけれども、きちんと製本された真新しい本には、何とも言えない味わいがあるらしい。

(京都大学 2014年)

 

(拙・和文英訳)

In recent years, electronic books have become widespread in a rapid pace. Although not so much as in the United States, even in Japan, there are more and more opportunities when we read texts on a personal computer or other unfamiliar devices. However, not only middle-aged and elderly people, but also many young people feel that they have not read a book completely unless they read it in paper. Although papers and novels are usually written by computers these days, it seems that brand new books that are properly bound up have a taste beyond description.