蝉の抜け殻があちこちで見られる時期となった。蝉の抜け殻(または蝉そのもの)を「空蝉(うつせみ)」と呼ぶが、これは夏の季語である。
この「空蝉」。広辞苑で引くとその第一義は意外にも、①この世の人、生きている人間、②人間の生きているこの世、現世、世間(空蝉の世)とあった。「現人(うつしおみ)」(生きている現実の人間、この世の人の姿)が転じて「空蝉」となったらしい。
「空蝉の世」を英語では Mortal Coil (= transient life) と表現する。Coil は通常、綱・針金などを巻いたもの・輪を意味するが、《古・詩》(古語・詩的な表現)で「混乱・人生(騒々しいこの世)」という意味でも使用されたらしい。
For in that sleep of death what dreams may come,
When we have shuffled off this mortal coil. (“Hamlet” by Shakespeare)
「この世の煩わしさから逃れた死の眠りの中でどんな夢を見るのか?」(拙訳)
(『ハムレット』シェークスピア)