英語の迷い道(その27)-「空蝉の世(Mortal Coil)」 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

蝉の抜け殻があちこちで見られる時期となった。蝉の抜け殻(または蝉そのもの)を「空蝉(うつせみ)」と呼ぶが、これは夏の季語である。

 

この「空蝉」。広辞苑で引くとその第一義は意外にも、①この世の人、生きている人間②人間の生きているこの世、現世、世間(空蝉の世)とあった。「現人(うつしおみ)」(生きている現実の人間、この世の人の姿)が転じて「空蝉」となったらしい。

 

 

 

 

「空蝉の世」を英語では Mortal Coil (= transient life) と表現する。Coil は通常、綱・針金などを巻いたもの・輪を意味するが、《古・詩》(古語・詩的な表現)「混乱・人生(騒々しいこの世)」という意味でも使用されたらしい。

 

 

For in that sleep of death what dreams may come,

When we have shuffled off this mortal coil.  (“Hamlet” by Shakespeare)

 

「この世の煩わしさから逃れた死の眠りの中でどんな夢を見るのか?」(拙訳)

(『ハムレット』シェークスピア)