年末年始一冊の本を読んだ。佐和隆光著「経済学とは何だろうか」というものである。1982年2月発刊だから私が大学を卒業する寸前のものである。佐和氏は大学2年時に「計量経済学」を担当されていた教官である。テキストは「数量経済分析の基礎」というものだった。
この本を読んで知ったこと。
「新古典派経済学」と「ケインズ派経済学」を折衷して成立した「近代経済学」は世界恐慌後の1930年代以降米国で制度化され1950年代に日本に移植された。そして1960年代には隆盛を誇ることになった。
しかしながら、その前提となる仮定の非現実さなどから1970年代に入ると批判と反撃にさらされた。批判した側にはマルクス経済学者などを含むが同書では総称して「ラディカル派」と呼ばれている。
私が大学に在学した1978年~1982年という時期は、まさに「近代経済学者⇔ラディカル派」の論争の真っただ中にあった。
京大では大学2年から学部講義を受講できた。確かに「経済原論」が近経とマル経で1年毎に交互に講義されるとか、原論総論がマル経で原論各論が近経などといった一貫性のない講義が続けられていた。
経済政策に至っては、日本経済の成長化政策とか安定化政策ではなく、大野英二教授のドイツの金融資本成立史的な講義が行われていた。講義にやたらドイツ語が出てきて、何処が経済政策なんだ?と疑問に思いながら毎週受講していた。要は、各教官が自分の専門分野を好き勝手に講義している状況だった。
そんな混沌とした状況の中で、受験勉強程度の知識しかない自分が、如何に専攻分野を見いだし将来に向けて勉強していくかの判断がどれほど難しかったかを同書を読んで痛感した。当時の自分を正当化するわけではないが、それを知っただけでも同書を読了した価値があったと思える。
今のようにネットで情報が取得できたならばそんな苦労は無かっただろうが。