「気難しい」という日本語からまず浮かぶのは fastidious という形容詞である。この語の定義は以下の通り。
Fastidious:
1) If you say that someone is fastidious, you mean that they pay great attention to detail because they like everything to be very neat, accurate, and in good order.
「全てのことについて非常にきちんと、正確で、順序正しくあることを好むがため、細部わたり大きな注意を払う人」
2) If you say that someone is fastidious, you mean that they are concerned about keeping clean to an extent that many people consider to be excessive.
「大抵の人が行き過ぎだと思うような程度まで清潔に保つことに気を遣う人」
2)は潔癖症のこと。1)のような輩と付き合うのは面倒だ。それが顧客であればなおさら厄介なことである。
「気難しい」ならまだしも、それを越えて「偏屈」となるとコミュニケーション自体が難しくなる。これを表す cantankerous という形容詞がある。定義は以下の通り。
Cantankerous:
Someone who is cantankerous is always finding things to argue or complain about.
「いつも論争(自説を主張)したり、不平不満をぶつけたりできるものを探している人」
不運にもそんな輩に巡り合い仕事上暫くの間コミュニケーションを取らなければならない時期があった。まあ今は人間関係の修業だったと考えている。但し、英文ではこの単語見かけたことは無い。
2019年11月初旬、新日鐵(現・日本製鉄㈱)関連のN社からベルギー・ブリュッセルへの通訳派遣の案件が舞い込んできた。言語は日本語⇔英語、期間11月末から12月初旬の1週間ほどだった。
11月下旬には例の「日中韓三カ国環境大臣会合」の大規模多言語通訳を控えていたが引き受けざるを得なかった。また、コーディネートも私がする以外なかった。
通訳の内容はN社がベルギーのD社に納入した設備(equipment)の障害の対応に関するもので、インバーター、インダクター、キャパシターなどの用語が出てきたが文系の私にはさっぱりわからなかった。
N社の担当エンジニアI氏は幸い大学の後輩(工学部・学士)で、門外漢の通訳者と私に丁寧に技術的基礎を説明してくれた。但し、ある問題があった。それは「D社の担当者がかなり気難しい年配の技術者」らしいことだった。いわゆる前述の fastidious である。
ただ、これに関してはI氏が既に相応の対策を講じていた。D社担当者に対する受け応えのポイントをルール化して簡潔に整理していた。
「この男は捌ける!」と思った。「Iさん何年目ですか?」ときくと「今3年目です。」との答えが返ってきた。まさに「栴檀は双葉より芳し」と思えた。
I氏に同行した男性通訳者は、ベルギー・ブリュッセルでの通訳を卒なくこなして帰国してきた。
令和改元のお祭りムードが続いていた2019年の後半、通訳案件でビジネスも活況、来る2020年もこんな好景気が続くと思っていた。