続・英語の散歩道(その85)-汚れある悪戯-渚ゆう子「京都慕情」 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

最後に京都に行ったのが翻訳者にデビューした2008年の9月だから、気が付けばもう14年になる。その10年後の2018年11月、京都旅行を企画してホテルまで押さえたが残念なことにドタキャンになった。

 

以来、コロナ禍もあって行けていない。学生時代、ブラブラ、ダラダラと過ごしたのが噓のように敷居の高い街となってしまった。

 

 

 

 

 

 

阪急京都線は桂で嵐山線と分岐する。大学2年から3年にかけてその阪急桂駅に週2回通った。家庭教師のアルバイトをしていたからだ。

 

生徒は中学生2年生の男の子で進級を挟んで1年余り教えた。勉強が好きな子ではなく腕白だったが大したことも教えられず、彼の話し相手、遊び相手になっただけだった。

 

母親とは死別しており父子家庭だったが、父親も高校生の兄も料理が得意で講義のあとの食事が楽しみでもあった。

 

その子の家は阪急桂駅から歩いて5分くらいのところにあった。毎週2回、夕方2時間ほど主に英語と数学を教えた。駅から家まで行く途中に川があったような無かったような ……?記憶が定かでない。

 

結局その子は、父親の勧めもあり推薦でトヨタ自動車直営の全寮制の工業高校に進んだ。卒業後はトヨタ自動車への入社が保証されていると聞いた。理科も車も好きだったから良かったのではないか。今は高給取りになっているかも知れない。

 

 

 

その子から面白い(?)話を聞いた。ある日、彼が桂川の近くを友人(悪ガキ)たちと歩いていると一人の老人が川岸に腰かけて尺八を演奏していた。老人は自らの演奏に悦に入り河岸の風景に完全に溶け込んでいたという。

 

そんな老人に対して彼ら悪ガキどもが悪戯を仕掛けた。老人の背後の地面に爆竹を仕掛け導火線を長くして火をつけた。爆竹は爆発、老人は驚いて川にはまり、老人愛用の尺八も川を流れて行った。勿論彼らは一目散に逃げた。

 

老人が無事だったのか ……?どこまで本当の話なのか ……?それはただ桂川のみが知ることである。

 

 

 

この曲の最後のフレーズ「遠い日は二度と帰らない 夕やみの桂川」を聴くと少しほろ苦い思い出が蘇ってくる。なお、英訳は10年近く前に若気の至りで作ったものを改訂してみたが、決して満足できるできではない。

 

 

 

「京都慕情」

 

あの人の姿懐かしい 黄昏の河原町

恋は恋は弱い女を どうして泣かせるの

苦しめないでああ責めないで 別れのつらさ知りながら

あの人の言葉想い出す 夕焼の高瀬川

 

遠い日の愛の残り火が 燃えてる嵐山

すべてすべてあなたのことが どうして消せないの

苦しめないでああ責めないで 別れのつらさ知りながら

遠い日は二度と帰らない 夕やみの東山

 

苦しめないでああ責めないで 別れのつらさ知りながら

遠い日は二度と帰らない 夕やみの桂川

 

 

(拙英語訳)

“Longing for Kyoto”

 

I remember that man, standing at Kawaramachi in the twilight.

Why would love make such a feeble woman cry so much?

Don’t tease me! Ah, never blame me! For all I know how hard a breakup is, Takase River at the sunset reminds me of what he said to me.

 

Embers of love in those days are simmering in Arashiyama.

Why couldn't I forget and erase any and all about him?

Don’t tease me! Ah, never blame me! For all I know how hard a breakup is, Mt. Higashiyama in the twilight makes me learn that those days never come back again.

 

Don’t tease me! Ah, never blame me! For all I know how hard a breakup is, Katsura River in the dusk brings me home that those days never come back again.