続・英語の散歩道(その82)-日中韓三カ国環境大臣会合①-干し柿の甘さの秘密 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

昨日、この秋初めての干し柿を食べた。糖度は今一つだったが、日本最古のドライフルーツ、秋も酣(たけなわ)の感があった。

 

 

この時期、ちょっと田舎道を走ると、あちこちの軒下に柿が吊るされているのが見られる。たくさんの柿がまるで簾のように吊るされている光景を柿簾(かきすだれ)とか柿暖簾(かきのれん)と呼ぶそうだが、これも秋の風情に彩りを加えている。

 

干し柿にするのは渋柿で、実は元々甘柿より糖度が高い。乾燥させることで渋み成分であるシブオールというタンニンが水溶性から不溶性になる変化(脱渋反応)が起こり渋みが無くなるらしい。干し柿の糖度は甘柿の約4倍と言われている。

 

なお干し柿の表面に吹いた白い粉はブドウ糖、果糖、ショ糖などの糖分が結晶したもので柿霜(しそう)と呼ばれており、中国では生薬とされ「柿が赤くなれば医者が青くなる」とも言われている。

 

          里古りて柿の木持たぬ家もなし             松尾芭蕉

 

 

 

 

北九州市環境局から「日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM21)」の通訳の話が来たのは2019年7月中旬のことで、かなり大規模な通訳案件だった。

 

中国語⇔日本語の同時・逐次通訳各1名、韓国語⇔日本語の同時・逐次通訳各1名、英語⇔日本語の逐次通訳が5名の合計9名の通訳者を手配する必要があった。会合の開催は11月下旬ということで、当初は概算見積りという形で話を進めていった。

 

各国の環境大臣他VIPには各国がそれぞれ複数名の通訳者を同伴してくるので、当社に依頼があったのは、ホストである北九州市長および福岡県知事、並びに局長クラスに対する通訳だった。なお当時の日本の環境大臣は小泉進次郎氏だった。

 

また、メインの会合自体の通訳ではなく、会合後夕刻からの歓迎レセプション、および大臣一行に同行する中国・韓国の学生や若手ビジネスマンが昼間に市内を視察することに対応する通訳だった。

 

中国語・韓国語の通訳は、同時通訳が歓迎レセプションでの北九州市長および福岡県知事のスピーチに対応し、同時・逐次通訳双方でメインの円卓でのVIPの歓談に対応した。

 

また、英語の逐次通訳5名は、その他の円卓の間に配置し、日本語⇔中国語⇔韓国語のコミュニケーションのサポートを行う形だった。実際のところ、中国および韓国のVIPは英語が話せる方が多く、英語の通訳は想像以上に活躍することができた。

 

 

英語、中国語の通訳者は問題なく手配できたが、韓国語については確保していなかった。本番まで時間があったので、登録通訳者の紹介などで何とか市中から確保することができた。結局英語の男性通訳者1名を除いて残り8名が女性という陣営になった。

 

「イケメンの小泉氏に会える!」ということから女性陣からは黄色い声が上がっていた。

 

 

果たして本番当日、私は朝一で「北九州国際会議場」赴いた。市内を視察する中国・韓国の学生や若手ビジネスマンを乗せる貸切バスが10:00に出発することになっていた。

 

 

 

視察に同行する中国語と韓国語の逐次通訳各1名と国際会議場で事前におち合い簡単な打ち合わせを行った。2人の通訳者とはその時が初対面だった。2人ともかなり緊張していた。何度となくこんな雰囲気を味わってきたのか私は冷静だった。「まあ、何とかなる!」と思えた。

 

二人を貸切バスに放り込んで一段落した。これから14:00くらいまでは一息つくことができた。喫茶店で当日の行程を確認したり昼食を取ったりしながら時間を潰し早めに歓迎レセプション会場の「リーガロイヤルホテル小倉」に入った。

 

 

 

ホテル周辺にはテロに備えて機動隊を乗せたバスが3台くらい停まっていた。またホテル内のあちこちに厳つい黒服のSPが配備されており、物々しい雰囲気を醸し出していた。