大分県内の案件は今まで殆ど実績が無かったが、大分市に本社を置くファミリーレストラン「ジョイフル」の海外進出パンフ(改訂版)の和文英訳、和文繁体字訳を地元の印刷会社N社経由で受注したのが2019年3月だった。
その後、N社の紹介で大分市内の印刷会社、O社からも翻訳の見積り依頼が入るようになった。令和が始まった2019年5月、O社から大分市が作成した原稿「大分市市政要覧」の和文英訳の見積りが入ってきた。
内容は大分市長の挨拶に始まり、大分市の市域概要、観光・グルメ、文化・スポーツ、歴史・文化、産業経済、環境、教育・社会、行政など多岐にわたるもので相当の翻訳量があった。また、顧客(大分市)からネイティブチェック要との指示があった。見積りを提示し、価格交渉を経て何とか本案件を受注することができた。
本案件の翻訳者の選定に当たっては、内容が九州地域(大分)に深く関係したものであることから、可能な限り大分近郊のメンバーを選定するようにした。一次翻訳は鹿児島在住の翻訳者、校閲(チェック)は私が行い、ネイティブチェック宮崎県在住のアメリカ人(夫アメリカ人/妻日本人)チェッカーを選定した。
◎原稿(大分)⇒一次翻訳(鹿児島)⇒校閲(福岡)⇒ネイティブチェック(宮崎)
上記の九州在住メンバーで翻訳作業を進めたが、原稿には大分市内の細かい地名や施設の名前、また祭祀や地場のイベントなど伝統・文化的な用語も多く含まれ、難解ながらも結果的には楽しい作業となった。
一時翻訳者の英文の漏れなどをチェックしつつ、市長の挨拶文をより格調高いものに改訂したり、訳語のチェックや改善を進めるうちに自分自身も大分市に興味が持てるようになり大分市の文化や歴史の概要を理解することができた。
自分がチェックした英文をネイティブチェッカーに送り、それがチェックされて戻ってきたものを見て愕然とした。
私は、ネイティブチェックについて、従来、英語として違和感のある表現を排除して改訂する程度のものと考えており、それまでその程度のネイティブチェックを施した製品を納品してきた。
だが今回ネイティブチェック結果は従来と全く異なるもので、かなり大胆な改訂が施されていた。改訂後の英文には格調高さだけでなく自然な勢いが付加されている印象を受けた。
「この英文はネイティブじゃなきゃあ書けないな!」とはっきりと認識できた。本ネイティブチェック結果は一次翻訳者にもフィードバックしお互いに感想を語り合った。
この仕事でもう一つ印象に残っているのが大分市の本件の担当者(女性)の能力の高さである。一次納品後の英文の校正結果について問い合わせたところ実に明快な回答が返ってきた。海外留学、海外勤務経験がある管理職の方だった。特に英文表記のルールについて「自分はまだまだ勉強が足りないな!」と反省させられた。本件を何とか納品できたのは2019年7月中旬、梅雨明けが近づいていた。
なお「大分市市政要覧」は以後も毎年改訂が続けられ、現在も大分市のホームページにPDF版が掲載されている。
https://www.city.oita.oita.jp/o029/shisejoho/annai/shiseiyoran/2022.html