キャラと私には共通点があった。誕生日と血液型が一緒だった。同じ誕生日の人間とはそれまでの人生で殆ど出会ったことが無かった。また酒が好きという点も同じだった。
GEOS小倉校は駅前のビルの10階にあったが、キャラは時々生徒を引き連れ教室を抜け出しビルの屋上でレッスンを行うこともあった。屋上には小さな祠(神社)が設置されていた。商売繁盛を祈念したものだが、キャラは不思議そうに祠を眺めていた。
生徒によるプレゼンが始まって直ぐの2003年暮れ、クラスで忘年会を開催した。時期はキャラと私の誕生日前後の土曜日で場所は「小倉ホルモン」という焼肉店だった。店を決めたのは証券マンのJYでキャラに日本のホルモンを食べさせたかったらしい。
キャラはホルモンに抵抗を示すことは全くなくビールや日本酒をガンガン飲みながら美味しそうに平らげていた。
会社は2003年にISO9001認証を取得した。これにより事務手続きは標準化されたが面倒にもなった。ISOの人事や人材開発・教育業務への適用は一部に留まったが、自分が新規に創り上げた規定や制度などがISOに浸食されていくことに対して少し抵抗心を持つようになっていた。
しかし、その当時のISOの担当者(室長)が同社の代表取締役社長に就任したことを知ったのはつい先日のことである。
翌2004年、生徒によるプレゼンが定着し始める一方で、生徒の入れ替りも多くなっていった。2004年夏前後、ある生徒がクラスに入ってきた。地場の大手電機メーカーに勤務するYIという私と同年齢の男性だった。専門はロボット工学だった。
同じクラスの西高の先輩でもある年配女性は彼を mild-faced gentleman と表現したが、まさにそんな雰囲気の男だった。福岡・修猷館高出身で早稲田・理工卒。JYが東京に異動した後も、彼とは長い付き合いが続いており今も時々飲みやカラオケを楽しんでいる。
そしてもう一人YTさんという女性が入ってきた。北九州市の職員で、ご主人が郷里北九州へ転職・Uターンしたことに合わせて北九州市の中途採用試験を受験して入庁したらしい。彼女も早稲田・教育卒だと聞いた。フラメンコや花粉症のプレゼンは彼女によるものである。因みにご主人は小倉西高の後輩だった。
当時YTさんは小倉南区役所に勤務していたが、後に環境国際戦略部や企画部に異動、私が翻訳者になってからも翻訳・通訳の営業で訪問することになり、彼女とも長い付き合いになった。
そんな2004年の暮れ、会社での資格が1ランク昇格した。これも「標準契約書」や「自己啓発支援制度」の創設の功績によるものに思われた。
「自己啓発支援制度」に英検・TOEICを取り込んだことから若手の昇格試験に英語を取り込むことを企画し総務部長の承認を得た。
さてどんな問題を出そうかと考えた結果 …… 「あなたが現在担当している業務の内容を100語程度の英語で説明しなさい。」という問題とした。いわゆる自由英作文である。但し英和・和英辞典の持ち込みを可能とした。
昇格試験への英語の導入については賛否両論があったが、昇格対象者の競争心に火をつけたところもあり、同時に社内での英語学習意欲も高まり英検やTOEICの受験者も増えていった。
2004年暮れのクラスの忘年会は、小倉・古船場町の居酒屋「活魚 なべげん」で行った。キャラがこの店である事件を引き起こすことになった。