続・英語の散歩道(その7)-契約・法務部門の構築と自己啓発支援制度 | 流離の翻訳者 果てしなき旅路

流離の翻訳者 果てしなき旅路

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴16年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

2003年3月。営業部から管理部・人事部門に異動し人材開発を担当することになった。社員教育や研修の企画・運営などである。現・担当者が同年末で定年退職するため引継ぎ期間を踏まえた早めの異動だった。営業部の直属の上司が、私の資質や文書化能力などを考慮して、私を同部門に推薦したと聞いた。

 

現・担当者から業務の引継ぎを受けながら、私は開発部門や営業部門勤務で感じていた問題意識を管理部の業務の中に具現化したいと考えていた。

 

 

その一つが契約・法務を管理する部門を社内に構築することだった。会社と他社(顧客)との間のシステムの開発・運用の請負や業務委託(準委任)、また他社への派遣出し、他社からの派遣受けなどである。

 

請負と業務委託の境界は微妙なところが多く、また派遣受けと絡むと二重派遣など違法となるケースもありデリケートな問題であった。2003年の秋頃から、総務部門長と協力してこのような契約形態を整理・文書化して役員への説明を行った。2004年の春過ぎ、最終的に契約形態ごとに「標準契約書」を作成し、全社員に対し数回にわたり説明会を開催した。

 

管理職含めて法務関連は全く知らないという社員が多く、顧客との様々な契約形態についての問合せが営業部門から毎日のように入るようになった。結局自分自身が契約・法務部門となった。忙しくはあったが、パートナーである総務部門長とは何度飲みに行ったか知れない。同い年だったが男気がある人だった。

 

 

そして、もう一つが社員が保有する資格・免許の洗い出しだった。従来、社内には情報処理関連資格の取得に対して報奨金を支給する制度があったが、近年きちんと運用されておらず有名無実となっていた。この制度を整備するには、まず社員がどんな資格・免許を保有しているのかを調査する必要があった。

 

こちらも2004年に入ってから、全社員に「情報処理に限らず業務関連の資格や免許を持っている人は申告してください」という旨のアンケートを実施した。

 

基本的に情報処理試験、各種ベンダー資格の他、日商簿記検定などの業務系資格や英検・TOEICなどの語学系など全ての資格・免許を対象とした。また、申告には証明書(CERTIFICATE)の提出を義務付け、紛失などの場合の再発行費用はすべて会社で負担することとした。

 

 

暫くすると ……、200名余りの社員から様々な保有資格・免許が申告されてきた。当然にして情報処理関連資格が大半を占めたが日商簿記2級・3級や販売士資格、英検2級取得者も結構いた。また、中学・高校の教員免許や危険物取扱者を保有する社員もいた。変わり種では自動車整備士や小型船舶免許また「潜水士」もいた。

 

茶道、華道や書道師範の免状を申告してきた女子社員もいた。また「柔道二段」と堂々と申告してきた若手男子社員もおり「どこが業務関連の資格なんや!?」などと考えていると思わず吹き出してしまった。

 

 

結局、情報処理試験・各種ベンダー資格に日商簿記検定など一部の業務系資格を加え、さらに英検・TOEICを含めて資格(TOEICは所定のスコア)取得時に報奨金を支給する運用とし、また各資格にポイント(得点)を付与してポイント数の合計を社員に競わせる「自己啓発支援制度」を構築した。

 

2004年も終わりに近づいた頃、会社玄関フロアに資格ごとの取得人数、上位資格所得者の氏名、さらに合計ポイント数上位10名の氏名を記載する掲示板を設置した。以後、この掲示板の前には社員のほか、会社を訪れる顧客も立ち止まって眺める姿が見られるようになった。

 

 

今にして思えば、この制度はN銀行のポイントゲッター制度の焼き直しであり、また「北予備」1階ロビーの成績優秀者掲示板の再現でもあった。