英語の散歩道(その4)-七色の歌声と「クレセント・ヌーン」 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

19744月。小倉西高の普通科に進んだ。西高での様々な出来事については「自叙伝(その3)-強く、正しく、美はしく」~に書いたので、ここではそれ以外の英語に関するエピソードを綴ることとする。

 

千鶴さんから授かった英語力のお陰で、高校1年時の英語の授業には、ほぼ問題なくついて行けた。中間・期末以外は大した勉強はしなかったが、3名の教師や周りの生徒から「〇〇は英語ができる!!」程度の評判は得ることができた。

 

 

この時期、英語に関連してもう一つの出会いがあった。カーペンターズのカレン・カーペンターの歌声である。カーペンターズの曲は中学3年頃から少し聴いていたが、高校1年の夏、アルバム「ゴールデン・プライズ第2集(Golden Prize Vol.2)」を購入して以来、カレンの低くて透き通った歌声に心酔した。

 

歌声だけでなく、英語の発音が素晴らしく綺麗で擦り切れるほどレコードを聴いて歌詞を覚えるようになった。洋楽の場合往々にしてそうだが、意味も解らず覚えたところも多かった。以後、高校2年時には「緑の地平線~ホライズン(Horizon)」など何枚かのアルバムを購入し、カーペンターズに只管(ひたすら)のめり込んでいった。

 

歌詞の中に出てくる単語は高校3年までに全て知ったが、歌詞の本当の意味がそこそこ理解できたのは翻訳者になった50代だった。それでもまだ解らない曲もある。例えば ”Crescent Noon” という曲の歌詞、どう訳すべきか……?

 

“Crescent Noon”

Green September burned to October brown,

Bare November led to December's frozen ground,

The seasons stumbled round,

Our drifting lives are bound to a falling crescent noon.

 

(拙訳)

「クレセント・ヌーン(昼下がりの三日月)」

緑の9月は燃え尽きて褐色の10月が訪れ、

不毛の11月は12月の凍てつく大地へと繋がった。

季節はよろよろと躓きながら移ろい、

私たちの漂泊の旅路は、消えてゆく昼下がりの三日月のような運命(さだめ)か。

 

そもそも、タイトルの「クレセント・ヌーン」自体が謎だが、日中薄っすらと見える三日月ではなかろうか。有明の月でも夕月でもない。日没までには消えてゆく淡い三日月である。

 

 

カレンの歌声は「絶対音感」とか「七色の歌声」などと称されているようだが、試験などが終わってホッとした夜など、カレンの声を聴きながら疲れを癒していた頃が懐かしい。酒があればもっと良かったのかも知れないが……。