先週後半から秋が急速に深まっている。街にもコートを着た人が目立つようになった。
今年の半分は知的財産権の勉強に漬かっていた。その当面の目標であった試験を昨日終えた。
会場を出ると既に夕暮れが近づいていた。秋風が舗道に枯れ葉を転ばせる中、解放感を噛みしめていた。この感覚を味わうために日々努力すると言っても過言ではない。
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ニュースなどで「・・・を浮き彫りにした」とよく使われるが、英語ではどう表現するのだろう。
「浮彫(うきぼり)」は本来彫刻用語で「①形象や模様が浮き上がるように、平らな面を彫り込み、あるいはその上に盛り上げて製作する技法、またはその作品(広辞苑)」のことであるが、普通は比喩的に「②物事の様子・状態をはっきりと目立たせること(広辞苑)」の意味に用いる。
①の意味の場合は「レリーフ」(relief)ということが多い。これについてはCollins COBUILDに以下の定義があった。
5) A relief is a sculpture that is carved out of a flat vertical surface.
「平らで垂直な面を削って彫る彫刻技法(作品)」
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以前「・・・に取り組む」という日本語に対して、相撲やレスリングなどの取り組みに使われるmatchやgrappleという動詞を使った一次翻訳者がいたが、これはやはりいただけない。
句動詞work onや他動詞addressなどで処理するのが一般的だと考える。
従って「浮き彫りにする」についてもreliefを使った表現が無いわけではないが、上記②の意味をわかりやすく英語で表現すればよい。
例えば動詞のhighlightやemphasizeなどを使うとよりシンプルに処理できる。
The documentary highlighted (emphasized) the plight of the refugees.
= The documentary brought the plight of the refugees into sharp relief.
「そのドキュメンタリーは難民の窮状を浮き彫りにした」
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受験英作文では問題文の日本語をよく咀嚼し、使える構文や熟語(句動詞)があればそれを使って処理するというのが我々の世代では一般的であった。創作英作文が増えた現在も基本は大して変わらないだろう。
ただ産業翻訳(英訳)の世界では、原稿が著作物であり、あくまで著作者の許諾の下に翻訳を行っている(翻訳権を行使している)という事実を知ってか知らずか、原文にこだわりすぎる(原文を咀嚼し意訳することを躊躇う)翻訳者も多いようである。