毎日が忙しく順調に物事が進んでいる頃を後で思い出そうとしてもなかなか思い出せない。一方で悩んだり困ったりしながら進んだ時期のことは鮮明に思い出すことができる。記憶とは不思議なものである。
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「静夜思」 李白
牀前看月光 牀前(しょうぜん) 月光を看(み)る
疑是地上霜 疑ふらくは 是れ地上の霜かと
挙頭望山月 頭(こうべ)を挙げて 山月を望み
低頭思故郷 頭を低(た)れて 故郷を思ふ
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(現代語訳)
寝床の前に差し込む月の光をふと見ると、その白い輝きがまるで地上に降りた霜のように思われる。
頭を上げれば山上の月が見え、それがあらためて月光であることを知り、そのうちに故郷のことが思い出されてうなだれてしまう。
(英訳)
1)
“In the Quiet Night”
The floor before my bed is bright:
Moonlight - like hoarfrost - in my room.
I lift my head and watch the moon.
I drop my head and think of home.
2)
“Quiet Night Thoughts”
The moonlight glistens in front of my bed.
I thought it was the frost on the ground.
I lift my gaze to view the shimmering moon,
Then lower my head, and miss my homeland.
2)の方が私は好きである。でも第2文は“doubted (suspected)”としたかも知れない。「思」だから、やはり“thought”の方が適切なのだろう。