「夕されば門田の稲葉おとづれて」 大納言経信 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

昨日は車で少し走ったが、彼岸に墓参りをする人、ハイキングを楽しむ人たちに結構出遭った。日なたは暑いくらいだが、湿度は低く涼しい秋風が吹いていた。本当に秋らしい彼岸だった。


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昨日に続いて「秋風」をテーマとした今回は和歌の紹介である。


「百人一首」(No.71

「夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろやに 秋風ぞ吹く」 大納言経信(源経信)


(現代語訳)

夕方になると、門の前の田圃の稲の葉ずれの音がして、蘆葺きのこの仮住まいの小屋にも秋風が吹いてきた。 


(英訳)

1)

When the evening comes,

From the rice leaves at my gate,

Gentle knocks are heard,

And, into my round rush-hut,

Enters autumn's roaming breeze.


2)

When evening comes,

An autumn cool breeze,

Rustling the rice plant leaves in the paddy fields

In front of my residence,

Blows to my humble reed hut.


この歌には何らかの感情のようなものは感じられないが、初秋の爽やかな情景が浮かぶ一首である。なお「おとずれ」「訪れ」「音擦れ」が掛けられた掛詞である。英訳はどちらもやや長すぎる気がする。

流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも-autumn wind