「紫式部」の歌 -英訳紹介- | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

2つの台風の影響で3連休も冴えない天気が続いている。ただ仕事の方が溜まっていて今日も午前中には出社するつもりである。

 

日頃から工業・技術英語の世界に身を置いているからか、ブログでは文芸や音楽の記事が多くなっている。

 

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百人一首には「小野小町」「紫式部」「清少納言」の3女史(?)の和歌が一首ずつ収録されているが、それぞれの和歌はこの3女史の性格を表しているように思う。

 

No.9(小野小町)

「花の色は 移りにけりな いたづらに 我身世にふる ながめせしまに」

 

(現代語訳)

花の色も私の容姿もすっかり色褪せてしまいました。秋の長雨をぼんやりと眺めいるうちに。

 

No.57(紫式部)

「めぐり逢ひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かな」

 

(現代語訳)

久しぶりに逢って、それがあなたかどうかもわからないまま帰ってしまうなんて、まるで雲に隠れてしまった月のようなお方ですわ。

 

No.62(清少納言)

「夜をこめて 鳥の空音は はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」

 

(現代語訳)

夜が明けない内に、鶏の鳴き声を真似て夜が明けたと私とだまそうとしても、函谷関ならいざ知らずこの逢坂(おおさか)の関は決して開くことはありません。(私は門(体)を開いてあなたを受け入れることは決してありません。)

 

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後の2首は私にはともに「夜這い」を詠んだ歌に思える。2人の女性のスタンスは正反対で、紫式部の歌は相手が意中の人だったかどうかもわからなかったようである。

 

でも個人的には紫式部の歌が一番好きである。

 

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この歌の英訳が見つかったので以下に紹介する。

 

1)

I met you by chance but you hurried back,

Before I don't make sure

That you are my old friend.

As well as the midnight moon I came across,

Disappeared behind a cloud before I recognize it.


 

2)

Meeting on the path:

But I cannot clearly know

If it was he,

Because the midnight moon

In a cloud had disappeared.


 

3)

We had met by chance –

She looked like that one-time friend,

If I saw clearly –

Then disappeared like

The face of the midnight moon.

 

どの英訳も残念ながら(?)「夜這い」を前提に訳してはいない。なお「紫式部」は英語では”Lady Murasaki Shikibu”という。


流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも-Lady Murasaki Shikibu