山口県に「青海島(おうみじま)」というところがある。ここを最初に訪ねたのは実は高校1年の夏休みで、クラスの仲間たちとキャンプに行った。男子5人でたぶん4泊ぐらいしたと思う。
キャンプ場は海岸沿いで、海水浴場にもなっていて、夕立はあったものの基本的には夏の強い日差しに恵まれ、自宅に戻ったときには真っ黒に日焼けしていた。
夜になって砂浜に寝転がると、真っ暗な夜空には満天に星が輝き、時折り流星も見ることができた。それだけでも来た甲斐があった、と思った。
ただ不思議なことに、この時の仲間、つまり私以外の残りの4人の誰一人とも友人にはなれなかった。寝食をともにして、各人の本性を知ってしまったからかも知れない。
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この青海島周辺は、昨年来何度か車で走っている。走行中に「金子みすゞ記念館」という標識を見かけたが、「誰?何やった人?」という程度の認識しか持っておらず、立ち寄りもしなかった。
震災の後のCMで初めて「金子みすゞ」さんの存在を知った。あの「こだまでしょうか、いいえ、誰でも」という詩を詠んだ人である。地元の人でなければ、たぶん知らなかった人がほとんどだろう。でもなんとなく心に沁みるフレーズである。
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「こだまでしょうか」
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「遊ばない」っていう。
そうして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。