「朝の歌」 中原中也 | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

物憂い4月は去り、風薫る5月とはなったが、「物憂い」気分それ自体はあまり変わらず、昨日の夕刻から降り出した雨は上がったものの、「黄砂」と思われる曇り空で今日は天気もパッとしなかった。


明日は出社する予定だが、たぶん人員は半分くらいだろう。それでも仕事をしてれば少しは気持ちは充実する。そんな私は典型的な日本人なのかもしれない。そんなことを思う。


・・・・


今日は、高校の頃の「現代国語」の先生がわざわざ黒板に書いて朗読して教えれくれた詩を紹介する。相当に暗い詩であるが、今でも記憶に残っている詩である。


・・・・


「朝の歌」    中原中也

天井に 朱きいろいで

戸の隙を 洩れ入る光、

鄙びたる 軍楽の憶い

手にてなす なにごともなし。

小鳥らの うたはきこえず

空は今日 はなだ色(*)らし、

うんじてし 人のこころを

諫めする なにものもなし、

樹脂の香に 朝は悩まし

うしないし さまざまのゆめ、

森並は 風に鳴るかな

ひろごりて たいらかの空

土手づたい きえてゆくかな

うつくしき さまざまの夢。


(*)はなだ色=薄い藍色


流離の翻訳者 果てしない旅路はどこまでも