"Disaster" と "Accident" | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

震災後、特に英訳の翻訳者で”disaster”という単語が使いにくくなった、と思っている人も多いのではないだろうか?確かに”disaster”を今までは少し安易に使っていたように感じる。


例えば「防災対策」という場合”disaster-prevention measures”という訳語を使うことが多い。ここで”prevent”の定義は以下である。


1) To prevent something means to ensure that it does not happen.

「ある事象が起こらないことを保証すること。」


2) To prevent someone from doing something means to make it possible for them to do it.

「人がある事をすることを不可能にすること。」


果たして”disaster”が起こらないことを保証できるのだろうか?では”disaster”の定義を見てみよう。英英辞典の定義は以下の通りである。


1) A disaster is a very bad accident such as an earthquake or a plane crash, especially one in which a lot of people are killed.

「特に多くの人が死亡する地震、飛行機の墜落など、非常に悪い(酷い)事故」


2) If you refer to something as a disaster, you are emphasizing that you think it is extremely bad or unacceptable.

「ある物が極端に悪い、または許容できないことを強調したもの。酷い(状態の)物。」


3) Disaster is something which has very bad consequences for you.

「非常に悪い結果をもたらした物。大失敗。」


天災地変だけでなく、人為的な事故(人災)も含んではいるが、程度が相当に甚大な事故のことで、また人為的な大失敗なども含む、と理解する。


従って、人為的な事故であれば”prevent”できるだろうが、天災地変などは”prevent”できないと判断する。


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では次に”accident”の定義を見てみよう。


1) An accident happens when a vehicle hits a person, an object, or another vehicle, causing injury or damage.

「車が人、物、または他の車にぶつかり、傷害や損害を生じさせること。」


2) If someone has an accident, something unpleasant happens to them that was not intended, sometimes causing injury or death.

「人に発生する意図していない事象で、傷害また死に至ることもある不快な事象。」


1)は明らかに「交通事故」のことを意味し、2)「意図していない事象で、傷害また死に至ることもある不快な事象」だが被害者の人数については特に言及していない。


”Disaster”の定義内に”accident”の記載があるので”disaster””accident”の一形態だと言える。また”accident”それ自体には「自然災害」を含まないよう見え、「自然災害」はやはり”natural disaster”と言うべきだろう。


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要は、原文の「災害」が何を意味するのかをよく確認して訳語を選択することが大切である。因みに法律英語においては天災地変などの「不可抗力」のことを”act of God”とか”force majeure”とか呼ぶ。