もう一つの”holiday” | 流離の翻訳者 青春のノスタルジア

流離の翻訳者 青春のノスタルジア

福岡県立小倉西高校(第29期)⇒北九州予備校⇒京都大学経済学部1982年卒
大手損保・地銀などの勤務を経て2008年法務・金融分野の翻訳者デビュー(和文英訳・翻訳歴17年)
翻訳会社勤務(約10年)を経て現在も英語の気儘な翻訳の独り旅を継続中

随分昔に聞いた話だが、アメリカでは自動車を買う場合に、金曜日製造・完成の車と指定する客が多かったらしい。たぶん1970年代頃の話である。


これは、金曜日に製造された車には、統計的に欠陥車が少なかったことによるものらしい。逆に月曜日に製造された車には統計的に欠陥車が多かった。


これは何故か・・・?


実は、自動車工場の労働者の熟練度が金曜日にピークとなったからである。つまり、労働者にとっては金曜日は勤続5日目ということになり、業務の経験度・精度が時間をかけて最大となったからであった。


一方で当時のアメリカの労働者は、土日に酒、ドラッグ、セックス等に耽るものも多く、逆に休日明けの月曜日には熟練度が標準以下に低下し最低となった。これが欠陥車の多い理由である。


・・・・


昨年来、英訳でも和訳でも一次翻訳者の訳文をチェックすることが多くなった。原稿が大規模で納期が厳しい場合、数名の翻訳者で分担して作業し、チェック、訳語の統一、編集へと繋ぐことが多い。


他の翻訳者の訳文のチェックは結構良い勉強になる。訳抜け、誤訳も見つけるし、各翻訳者の弱点も見えてくる(自分の弱点は勝手に棚に上げているのであるが・・・)。こんな中で以下のような英文を見つけた。


Check holidays in the painting.

「塗装の休日をチェックすること」


何のことやら解らない。実はこの”holiday”「休日」ではなく「塗り残し」「塗り落ち」を意味する。従って上文は「塗装の漏れや落ちをチェックすること」という意味である。


“holiday”は名詞として「し忘れた仕事」「中途半端な仕事」の意味を持っているようである。さてもう一仕事片付けて帰ろう。