その4(№5358.)から続く

今回は「東日本の新幹線」の「その後」です。
以前に「東日本の新幹線」を取り上げた連載記事「東日本に針路を取れ」のご案内はこちら↓

 

この連載から8年経過していますが、8年経過後の「東日本の新幹線」はどのように変わったか、それを見ていきたいと思います。
上記連載の最終回では、新幹線の車種構成、北陸新幹線・北海道新幹線開業後の列車ダイヤ及び列車名について考察していますが、それが8年後にどうなったのか、順次取り上げます。

【車種構成】
上記最終回で言及したのは、当時未だ現役で稼働していた200系の命運ですが、連載記事アップの翌年、平成25(2013)年のダイヤ改正までに定期運用を終了、同年6~7月ころに「さよなら運転」を行って退役しています。200系の退役をもって、新幹線の路線上から①国鉄時代に車籍を持っていた営業用車両、②直流電動機で駆動する車両、これらが全て消えたことになります。200系は新幹線車両としては驚異的な長命を保ったことになりますが、その要因は、耐寒・耐雪構造を徹底した結果として、車体が非常に頑丈にできていたことが大きいと指摘されています。実際には、200系の耐寒・耐雪装備は過剰であるとされ、後年のE1系・E2系の増備の際にはかなり簡略化されています。
そのE2系も、現在では勢力を縮小しており、平成29(2017)年3月末までに長野新幹線用のN編成(8連)が全て退役、J編成(10連)も、盛岡以北には定期運用では全く入らなくなりました。J編成も小窓の0番代の編成から退役が始まり、昨年限りで0番代は全車淘汰され、現存するJ編成は1000番代のみで組成された編成となっています。なお、N編成は平成27(2015)年3月の北陸新幹線金沢開業後も、長野以遠に乗り入れることはありませんでした。
勢力を縮小したE2系と入れ代わりに、E5系が勢力を拡大し、北海道新幹線直通列車の全運用と一部の「やまびこ」「なすの」運用を掌握しています。北海道新幹線開業時には、JR北海道が用意した同型車H5系が戦列に加わっていますが、こちらは限定運用となっているようです。
他方、上越新幹線では、「Max」ことE4系の代替として、北陸新幹線金沢開業用に増備されたE7系を投入することとなりました。こちらはオリジナルのE7系のカラーリングに、さらに鳥の朱鷺をイメージしたピンク色の帯が入れられました。注目された編成構成は北陸用と全く同じ12連で、11号車がグリーン車、12号車がグランクラスとされています。
当初計画では、上越新幹線にE7系を追加投入してE4系を淘汰し、上越新幹線をE7系に統一することになっていましたが、昨年の台風19号により長野の車両基地が水没し、これによって北陸新幹線用のE7系編成が、所要編成の実に3分の1にあたる10編成が水没してしまい、全く使えなくなってしまったため、急遽計画が変更されました。具体的には、上越新幹線用として投入したE7系を北陸新幹線の運用に回し、退役予定だったE4系は延命しながら使用を継続するということです。現在はE4系の活躍が続いていますが、今年のコロナ禍による経営状況の急激な悪化で、投入計画がどうなるのか、そのあたりは未知数です。2階建て新幹線は収容力があるためラッシュ輸送に強く、愛好家目線で見ても夢のある車両ではあるものの、最高速度が240km/hにとどまる鈍足さ加減では、他の高性能な車両の足を引っ張ってしまうため(ダイヤ構成上の足枷になる)、いつまでも残すわけにもいかないはずで、その去就は注目されます。
車両計画といえばもうひとつ、山形新幹線用として令和6(2024)年度から新型車両「E8系」を導入するとの計画がアナウンスされていますが、今のところ続報はありません。

【北陸新幹線・北海道新幹線の開業及び列車名】
連載終了後、北陸新幹線は平成27(2015)年3月、北海道新幹線はその翌年の平成28(2016)年3月にそれぞれ開業しています。
連載の最終回で懸念していたのは、東京-大宮間の線路容量の問題ですが、今のところ問題はないように思えます。それでも臨時列車の設定を見ると、大宮始発の「はやぶさ」が設定されるなど、JR東日本の中の人も、線路容量の問題は分かっているようです。ただ、管理人が見たところ、大宮始発の列車は前述の「はやぶさ」以外には現時点では存在せず、やはり大宮発着列車というのは、できればあまり走らせたくないのかもしれないと思ってしまいます。現在は国鉄時代の大宮暫定開業時とは異なり、大宮からは埼京線、湘南新宿ライン、上野東京ラインが利用可能となっており、東京都心部へのアクセスが飛躍的に改善されていますので、もう少し活用の余地があるのではないかと思いますが。
北陸新幹線の列車名は「かがやき」「はくたか」「あさま」「つるぎ」となっており、速達型の「かがやき」を除いては、運行区間で列車名を分けるという「東日本方式」が導入されています。これが福井・敦賀開業でどうなるのかという興味がありますが、流石に「ダイナスター」が昇格することはあり得ないだろうと思います。
これに対して北海道新幹線は、期待された「はつかり」の再登板は叶わず、新青森まで達していた「はやぶさ」をそのまま延長するということになりました。ただしどういうわけか、盛岡・新青森-新函館北斗間の列車だけは、「はやぶさ」ではなく「はやて」とされています。「はやて」といえば、東北新幹線八戸開業時に華々しく登場した列車名で、戦前から何度も列車愛称公募で上位に食い込みながら、一度も列車名になったことがなかった名前ですが、21世紀になって晴れて東北新幹線の最速列車の愛称に採用されました。しかし、「はやぶさ」登場後はめっきり影を薄くしてしまい、現在では限られた列車のみが「はやて」を名乗るようになっています。いっそのこと「はやぶさ」と統合してしまっては、と思いますが、そうなると「はやて」は、「あおば」「あさひ」に続く、新幹線の「消えた列車名」になります。
そしてやはり、北海道新幹線が札幌に達した暁には、今度こその「はつかり」の再登板を期待したいところですが、やはり望み薄でしょうか。

【グランクラス】
E5/H5系、E7/W7系の増加により、グランクラス連結列車も当然のことながら増加しました。
しかし、連結列車の増加によってマンパワーが追い付かなくなったであろうこと、運転時間の短い列車では飲食物の提供などフルスペックのサービスが困難であること、これらの理由により、現在ではフルスペックのサービスが行われる列車は限定されています。具体的には、東北・北海道新幹線では「はやぶさ」(一部の列車を除く)と「やまびこ」(東京-盛岡間の列車)のみ、北陸新幹線では「かがやき」全列車と「はくたか」(東京-金沢間の列車)のみと、限られた列車のみとなりました。その他の列車、特に上越新幹線の「とき」などは、グランクラスといってもシートだけのサービスとされ、料金もその分割安に設定されています。
管理人の個人的意見としては、グランクラスもフルスペックのサービスができないのであれば、そのステータスを守るためにも、グランクラスも一般グリーン車の扱いにした方がいいのではないかと思います。

以上、駆け足で東日本の新幹線の「その後」を見て参りました。
次回は最終回。2020年、令和の御世の「YとFの肖像」と参ります。

その6(№5375.)に続く