その5(№5367.)から続く

当ブログの連載記事で取り上げたテーマの「その後」を見る「AFTER STORIES」。
その最終回は、有楽町線と副都心線の状況の変化を見ていきます。
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前記連載の最終回では、①副都心線の直通列車の形~さらなる変化はあるのか、②有楽町線が今後どうなるのかを考察しました。②に関してはJRとの相互直通運転を取り上げましたが、あまり現実性がないので、今回はそこを考察することはしません。
以上の理由により、以下では「有楽町線と副都心線の直通列車の変化」に絞って述べることにいたします。
「有楽町線と副都心線の直通列車の変化」としては、「Fライナー」の出現と、「S-Train」の乗り入れが挙げられますので、以下見ていくことにします。

【Fライナーの出現】
副都心線と東急東横線・みなとみらい線との相互直通運転「5直」が始まって3年後の平成28(2016)年、「5直」の全区間(元町・中華街-渋谷-小竹向原-飯能、又は小竹向原-和光市-森林公園)で速達運転を行う列車が登場、「Fライナー」と名付けられました。これは、東横線・みなとみらい線内特急、副都心線内急行、西武池袋線内快速急行、東武東上線内急行となる列車で、運転区間により列車種別が変わって一般利用者には分かりにくいため、統一する意味で「Fライナー」と銘打ったものです。
「5直」のうち、西武への直通列車には全区間速達運転をするものがそれ以前にも存在しましたが、東武東上線方面への列車で、東上内を速達運転する列車は存在しませんでした。それどころか、「5直」において東武東上線との直通列車は少なく、その大半はメトロ車か東急車。東武車は、東横線に入る運用は平日日中には全く存在しないという、影の薄い存在でした。しかも東武線内は各駅停車になるなど、速達性には意が払われていたとはいえません。その理由は、東武の場合和光市という都心から遠い場所で乗客を吸い出されることの他に、小竹向原の配線の問題がありました。和光市方面・新木場方面の列車と西武線方面・渋谷方面の列車は、千川駅寄りで転線する必要があるため、この両列車の同時発車ができないというダイヤ構成上の問題点となっていました。それ以外にも、この配線はダイヤ乱れの遠因にもなっています。
そこで、東京メトロは千川駅の有楽町線ホームと小竹向原駅の1・4番ホームをつなぐ連絡線の建設に着手、平成28(2016)年2月から供用を開始しています。この連絡線の供用開始により、ダイヤ乱れの大きな不安要素が取り除かれ、東武と副都心線方面を直通する列車を増発することができました。この連絡線が出来上がったからこそ、東武東上線方面への「Fライナー」の設定が可能になったといえます。
同時に、副都心線・東急東横線に入ってくる東武車の運用も増え、平日日中でも東横線で東武車を見ることができるようになりました。また、従来は存在しなかった、元住吉での東武車の夜間滞泊運用が出現しています。
なお、これら「Fライナー」の一部には、東武東上線内を急行よりもさらに停車駅の少ない快速急行として運転する列車があります。また「Fライナー」登場3年後の平成31(2019)年3月のダイヤ改正では、土休日に限り一部の列車が小川町発着とされ、元町・中華街-小川町間の走行距離が100kmを突破しています。

【S-TRAINの運転開始】
「Fライナー」登場の1年後、平成29(2017)年3月から運転を開始した、座席指定制の有料列車が「S-TRAIN」です。
この列車の面白いのは、平日と土休日で運行区間が異なること。平日は有楽町線豊洲と西武池袋線小手指を結び、土休日は副都心線・東急東横線を経由してみなとみらい線元町・中華街へ達し、元町・中華街と飯能又は西武秩父と結ぶ列車となります。平日は通勤・用務客を、土休日は観光客をターゲットにしていることが明白にわかるダイヤと運転区間となっています。ちなみにこの列車、東急と横浜高速鉄道にとっては、自社で恒常的に運行する初めての座席指定制列車となり、東急線内の停車駅である自由が丘駅などに「S-TRAIN」の指定席券の券売機が用意されましたが、これは西武の座席予約システムに丸ごと乗っかったものです。
使用車両は西武の40000系。この車は近鉄の「L/Cカー」と同じロング/クロスの転換車で、「S-TRAIN」では当然のことながらクロスシートモードで使用されます。この手の座席指定有料列車は、他社でも東武の「TJライナー」や京王の「京王ライナー」などがあり、「S-TRAIN」もこれらライナー列車としての位置づけですが(西武線内では特急『ちちぶ』・『むさし』より下位の列車と位置付けられている)、他車のものと異なるのは、40000系にトイレが設置されていること。これは元町・中華街-西武秩父間の100kmを超える運転区間に対応したものと思われ、この列車の運転に先立って、元住吉の車両基地に汚物処理設備が整備されました。
ちなみに西武では、昨年から新型特急001系「LaView」(ラビュー)がデビューしましたが、同車はアヴァンギャルドな車体形状をしていながら、先頭部には貫通扉を設けるなど、地下鉄直通が可能な仕様になっています。「S-TRAIN」の乗車率が振るわないという話もあり、そうなると有楽町線・副都心線に、あるいはその先の東急東横線・みなとみらい線に「LaView」の乗り入れが実現するのか、今後の両者の関係が気になるところです。

【車両の世代交代:17000系の登場】
現在、有楽町線・副都心線では、東京メトロの所属車両で最古参となった7000系が10連6本・8連15本あり、日夜走り回っています。8連は有楽町線に入ることはありませんが、10連は有楽町線に入って新木場まで達するほか、「Fライナー」運用に入って小手指・飯能や森林公園、土休日には小川町まで達するなど、古豪でありながら八面六臂の活躍を見せています。
しかし、VVVFインバーター制御への換装・内外装のリニューアルなどを経て車齢がリセットされているとはいえ、流石に老朽化・陳腐化は無視できないということか、東京メトロでは7000系を置き換えのターゲットとした17000系の投入がアナウンスされました。
17000系は既に現車が登場し、有楽町線・副都心線及びこれらの相互乗り入れ先での試運転を繰り返しており、営業運転への投入は来年2月を予定しているとのことです。半蔵門線でも8000系置き換えをターゲットにした18000系の投入が開始されていて、7000系・8000系が置き換えられると、東京メトロの車両が「ゼロシリーズ(0X系とされる系列の総称)」以降に統一されることになります。
乗り入れ相手の西武でも、40000系のロングシート・トイレ無しの編成(40050系)が投入されており、ことによると6000系が地上線運用に引っ張り出されるかもしれません。40000系列と17000系こそ、まさしく「令和の御世の『YとFの肖像』」を形作るものとなります。

全6回にわたり、駆け足で当ブログの連載記事の「その後」を見てきた「AFTER STORIES」、今回で終了でございます。「AFTER STORIES」の終了を持ちまして、本年2020年の連載記事のアップも全て終了となります。お付き合いいただきありがとうございました。
来年2021年も、何かネタを考えておりますので、どうぞお楽しみに。

-完-