その13(№4436.)から続く

今回は前回に引き続き、番外編その2として、京急以外での「快速特急」「快特」、また「快特」の英語表記について見ていこうと思います。

まず、これは管理人自身一番意外に思ったのですが、「快速特急」なる名称が、京急が初出ではないということです。それでは初出がどこかといえば、何と名鉄。名鉄では昭和39(1964)年のダイヤ改正で登場した三河線直通の特急列車に「快速特急」の名を冠して運転していたことがあります。この列車は、支線区に限って「特急」の行先標上に「快速特急」の表示を掲示していたそうですが、「快速特急」は当時の名鉄では正式な列車種別ではなかったので、正式な列車種別としての「快速特急」の運行を最初に始めたのは、昭和43(1968)年の京急で間違いないということになります。
名鉄は、京急が「快速特急」運転を開始した翌年の昭和44(1969)年から45(1970)年までの間、今度は正式な列車種別として「快速特急」を採用、名古屋本線で運転される特急のうち、知立駅を通過する列車を「快速特急」と称していたことがあります(名鉄における初代快速特急)。しかし、このときには車両側の案内表示には「快速特急」がなく、単に「特急」と表示していただけだったとか。
名鉄における初代快速特急が消えた後、「快速特急」は京急のみで運行される種別となっていました。それが崩れるのは、31年後の平成13(2001)年ですが、京急以外で運行が開始された「快速特急」は、名鉄ではなく阪急でした。
名鉄で「快速特急」が復活するのは、阪急で登場してから4年後、名鉄から消えた年から数えれば35年後のこと。平成17(2005)年に中部国際空港へ向かう路線が開業し、これを機会に、名鉄は中部国際空港から名鉄名古屋方面への速達・全席指定の列車を「快速特急」と称するようになりました。この列車は「ミュースカイ」こと2000系が限定使用される列車でしたが、この3年後、「ミュースカイ」は「快速特急」とは別の独立した列車種別になり、「快速特急」は名古屋本線の特別車併結の特急列車の中で停車駅の少ない列車に冠されるように変わっています。

他に「快速特急」を運転している(いた)のは、関西大手の阪急と京阪。
阪急は、平成13(2001)年から19(2007)年まで、平日朝夕ラッシュ時に運転されていましたが、その後「通勤特急」に統合され姿を消しています。
阪急で「快速特急」が復活したのは、廃止から4年後の平成23(2011)年。廃止前の朝夕ラッシュ時のみの運転という、通勤通学客対象の列車ではなく、土曜休日のみ運転の、京都へ向かう観光・行楽客を対象とした列車に変わりました。しかも使用車両は、6300系を改造した「京とれいん」6連の限定運用(1編成しかないので検査時は一般車が代走を務める)。この列車は、大阪側の淡路から京都側の桂まで無停車となっていて、往年の十三-大宮間の無停車を彷彿とさせるものとなっていますが、停車駅が少なくても所要時間はただの特急と大差はありません。これは、115km/h運転対応になっていない、6300系の性能を前提にダイヤが引かれていることによります。

京阪は、以前運行されていた、通常の特急より停車駅が2駅少ない「K特急」について、中之島線開業の平成20(2008)年に「快速特急」と改称しています(初代快速特急)。ただし、初代快速特急はラッシュ対策列車であり、平日夕方ラッシュ時の京都方面行きだけが運転されていました。
その後、初代快速特急は停車駅の見直しにより、京橋-七条間がノンストップとなり、大阪市内-京都市内無停車運転が復活しますが、初代快速特急は平成23(2011)年5月のダイヤ改正により廃止されます。
しかし「快速特急」の復活は意外に早く、同じ年の10月22日-12月4日までの期間の土曜休日、京橋-七条間ノンストップの臨時列車が復活、この列車が「快速特急」の種別表示を掲出しています。その後、この列車には「洛楽」との列車愛称が付与されました。
平成28(2016)年3月19日から土曜休日ダイヤのみ、京橋-七条間ノンストップで定期運行する快速特急が5往復登場、定期列車としては5年ぶりの復活となっています(2代目快速特急)。こちらも阪急と同様、観光・行楽客向けの列車として運行されているといってよいでしょう。もっとも、京阪は阪急とは異なり、昨年2月から平日にも2往復運転されるようになっています。

あとは京急との乗り入れ相手である京成でも、「快速特急」の運転を平成18(2006)年から開始しています。これは、京成がこの年のダイヤ改正に際し、特急の京成佐倉-京成成田間を各駅停車としたため、同区間を通過運転する列車について、区別する意味で「快速特急」と名付けたものです。
ちなみに京成の場合、「快速特急」は「快特」と略さず「快速特急」と案内します。当初は京急に合わせて「快特」と案内していたのですが、1年後に改められました。これは、京成線内では「快特」(かいとく)と発音が似ている「快速」(かいそく)が存在するから。誤案内防止のため、あえて略すのを止めたということです。

「快特」「快速特急」の英語表記については各社で差がありますが、以下の3種類が挙げられます。

① Limited Express(京急、京成)
② Rapid Limited Express(名鉄など)
③ Rapid Express(都営、以前の京成)

京急や京成の使っている①だと、「快特」と「特急」との区別は付けられません。一応、京急では本線系快特を緑色、エアポート快特をオレンジ、特急を赤、というそれぞれの色の幕で区別しているようですが、これでは日本人は分かっても外国人には分かりにくいと思われます。京急もそのことは認識しているのか、最近では駅の路線図の列車種別案内でも、「快特」「特急」をそれぞれ「Limited Express(KAITOKU)」「Limited Express(TOKKYU)」と、日本語のローマ字表記を併記するなどしています。
名鉄の②は最も素直な訳ですが、長いです。
都営などの③は「快速急行」とどこが違うの?と思ってしまいます。確か小田急や近鉄では「快速急行」の英訳を「Rapid Express」としていたような。
もうここまでくると、日本独自の発展を経た列車種別について、それをどのように外国人利用者に理解させるかという、困難な問題になっているように思われます。妙案は…思い浮かびません(^_^;)

次回は最終回。
今後の京急における快特はどうなるのか、2100形の後を継ぐ専用車両はどのようなスペックになるのかについて、快特の「未来予想図」を論じて終了とします。

その15(№4455.)に続く