その14(№4447.)から続く

 

長らくお付き合いいただいた本連載も、今回が最終回。

今回は、今後の「快特」について、未来はどうなるのかを占ってみたいと思います。具体的には、運転系統と使用車両がどうなるか。

順次見ていきましょう。

 

1 運転系統

現在の京急の快特は、本線系統が2種類(品川発着久里浜・三崎口方面への所謂A快特と、都営浅草線との直通の所謂SH快特)、空港連絡の快特に分けられます。

(1) 本線系統快特について

本線系統快特については、今後も京急本線系のダイヤの基幹をなすことは変わらないと思われます。そして停車駅も、流石に現行以上に増加することはないだろうと思われます。50年前の「快速特急」運転当初に比べれば、快特と特急の停車駅の差はかなり小さくなっていますから、今更これを統一するということはやらないでしょう。

それよりも趣味的見地から夢を見てみたいのは、かつての「ハイ特」のような列車が復活しないかということです。京急では「みさきまぐろきっぷ」や「葉山女子旅きっぷ」などを売り出し、横須賀・葉山・三浦半島への観光客の入れ込みに余念がありませんが、東京・横浜から近いとはいえ、一応は観光地ですから、そこへ向かう列車がロングシート・自由席でいいのか、という問題があります。

そこで、土休日版「ウイング号」のような座席指定列車を、上下1~2本くらいは走らせてもいいのではと思います。停車駅は、品川・京急川崎・横浜・金沢文庫・金沢八景・横須賀中央・京急久里浜・三浦海岸・三崎口で。あるいはもっと手っ取り早くやるなら、現行の「A快特」の一部車両を指定席車にするか。ただこれをやると、自由に乗れる車両が減るので、そこは問題になりますが。

(2) 空港連絡の快特

空港連絡の快特については、将来的に①都営浅草線の別線建設、②JR東日本の空港アクセス参入の問題があり、これらによって空港連絡の快特がどのような影響を被るかという問題があります。

これらに関しては、建設費がそれなりの額に上ること、JR東日本が東京モノレールを傘下に置いたことに意味がなくなること、以上の要因により、近い将来どうこうということはないと思われます。

あとは、現行の「エアポート快特」~「アクセス特急」という、羽田-成田相互連絡の列車がどうなるかですが、鉄道には時間的正確さはあるものの、所要時間に関してはリムジンバスに大きく水を開けられており(時刻表では1時間40分くらいだが、実際にはよほどの渋滞が無ければ1時間前後で走破している)、このルートでの進展は、都営浅草線の別線計画の現実化というような、劇的な変化でもない限り、多くを望めないように思われます。

 

2 車両

車両面では、現行の「SH快特」がほぼ京急車で占められている現状がどう変わるかということと、現行でほぼ快特専用車と化している2100形、その後継車はどうなるのかということが問題となります。

(1) 「SH快特」について~京急車の(ほぼ)独占が崩れる?

現在では、乗り入れ相手の都交通局の車両(5300形)が、一部の編成を除き120km/h運転対応になっていないので、「SH快特」はどうしても京急車を優先的に充当せざるを得なくなっています。一部の列車には都交通局車を充当していますが、この場合は120km/h運転ができないため、所要時間が通常の「SH快特」よりは伸びてしまいます。そのため、都交通局車を充当する列車は、今のところ、列車密度の高くない夜間などに限られています。

それが、5300形の後継車・5500形の登場によって変わる可能性があります。5500形は当初から120km/h対応なので、京急車充当が前提の「SH快特」のダイヤにも乗せることが可能になるからです。したがって、5500形が一定の本数に達した暁には、京浜間を120km/hで疾走し、久里浜・三崎口方面へ向かう、5500形による「SH快特」が、かなり高い確率で実現するのではないかと思われます。

(2) 2100形の後継車は?

2100形も既に第1編成の就役から満20年が経過し、リニューアルこそなされていますが、今後代替車両の投入が必要になってきます。その代替車両に関し、管理人の関心事は「果たして『2扉クロスシート』というスペックが守られるのか」ということです。

確かに2扉クロスシートというスペックは、乗客の快適性は高く、長距離輸送・観光輸送には大いに適していますが、床面積が狭く立席スペースが小さいため、通勤輸送には適しません。さらに乗降性という点では、明らかに3扉車に劣ります。そのためか、2扉クロスシート車は、他の大手私鉄でも減少傾向にあります。例えば東武では、6050系を南栗橋以北に封じ込めて都心側ターミナル駅(浅草・北千住)には顔を出さなくなっていますし、阪急(京都線)及び西鉄では、従来特急用として運用していた2扉クロスシート車に代えて、3扉クロスシート車を導入しています(阪急は9300系、西鉄は3000形)。阪急と西鉄の例は、言うまでもなく快適性と乗降性の両立を図った結果ですが、その代償として座席数の減少、転換できる座席の減少(阪急9300系の場合、転換可能な座席は全体の半分しかない)というマイナスもありました。京阪でも、3扉クロスシート車(3000系)を導入する一方、2扉クロスシート車(8000系)の運用自体は継続されていますが、車端部をロングシートに改造し床面積を拡大することで、乗降性に配慮しています。

ということは、2100形の後継車は、2100形をオールクロスシートのままで3扉にしたような車両か、2100形の車端部をロングシートにしたような車両のいずれかになるのではないかと予想されます。しかし前者の場合、600形(Ⅲ)の登場当初とどこが違うのかという話にもなりかねませんが、転換可能な点で区別されるのではないかと。まさか、車端部のみボックス席にした3扉ロングシート車で統一されてしまうとは思いたくありませんが。

 

3 最後に

今後も、本線系統・空港連絡とも、「快特」が京急の列車ダイヤの根幹をなすであろうことは間違いないと思われます。それよりも、今後の注目は車両でしょう。果たして2扉クロスシート車の後継車は現れるのか、それどころか、京急におけるクロスシート車の系譜は潰えることなく続いていくのか、そちらの方が趣味的見地からの注目は高いと思われます。

京急は、とかく「他の関東大手私鉄とは異質」と言われます。それは恐らく、創業時から常に競争相手の存在があったからでしょう。「快速特急」の誕生の経緯も、まさにそこにありました。ということは、「快特」の歴史は、そのまま京急の優等列車の歴史、さらに国鉄~JR、自家用車というライバルとの競争の歴史でもあったといえます。それがどこまで描き出せていたかは、管理人の拙い筆力では覚束ないものがあります。

ただし大急ぎで付け加えるなら、管理人自身、今回の連載を通じて、京急に対する理解と愛着が深まったように思います。

今後も進化を続ける京急と「快特」に注目していきたいと思います。長らくのお付き合い、誠にありがとうございました。

 

-完-