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しばらくお休みします。
流石奇屋ヒットです。
タイトルにあるとおり、しばらくお休みをさせてもらいます。
6月の月刊「後感」もアップできないままです。
申し訳ございません。
また戻ってこれるとは思います。
「B/W完全犯罪研究会」 清涼院流水 2009-052
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出版元 |
太田出版 |
初版刊行年月 |
2009/06 |
著者/編者 |
清涼院流水 |
総評 |
19点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:2点 読了感:2点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:4点 意外性:3点 装丁:4点 |
あらすじ |
3年連続でそれぞれ異なる殺人鬼に生命を狙われ「日本の犯罪史上もっとも有名な被害者」となった天見仄香は、現在、警視庁の犯罪被害者支援室に勤務している。未解決事件の再捜査の必要性を市民代表が審議する試験制度に参加し、自らの運命を揺さぶる「疑惑の少年」真壁巧と出会う仄香。真壁の周囲では、これまで両親や同級生など221件もの人間消失事件が起きていた。真壁巧は、はたしてクロかシロか?そして、仄香に迫る4度めの危機―。神の死を叫んだ哲学者が、現代社会に巨大な幻影を落とす。<<Amazonより抜粋>> |
主人公仄香の設定は良いです。
3年連続で殺人鬼に命を狙われた史上最も有名な被害者であり、警視庁の被害者支援室に勤務している。
この設定だけで、いくつかの物語ができそうですし彼女の精神をゆがみのようなものにスポットをあてた内的な物語もできます。
もう1人の主人公格である真壁巧。
彼の過去も非常に興味深い設定でした。
彼のまわりの人間が221名消えている。
被害者であるべき彼だけが何故か毎回消えないでいる。
この大いなる謎自体も非常に興味深い素材です。
で、本書。
これだけの設定の良いキャラクターを配置しておきながら、残念ながらそこそこの面白さ。
なんでだろうなと思ったのですけど、要するにタイトルにある「完全犯罪研究会(本書上は検討会)」の設置そのものがぴんとこなかったのでしょうね。
実はこの「完全犯罪研究会」自体も、連載できるくらいの設定なのですが、どうやらそれぞれを良いところを打ち消してしまったような気がしてなりません。
特に仄香は、その設定がとても良かっただけにちょっと残念でした。
「幕末裏返史」 清水義範 2009-051
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出版元 |
集英社 |
初版刊行年月 |
2008/09 |
著者/編者 |
清水義範 |
総評 |
21点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:4点 読了感:3点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:3点 意外性:4点 装丁:3点 |
あらすじ |
大の日本贔屓のフランス人、アナトール・シオン。国禁を犯して海を越え、憧れの日本にやってきた。時は幕末、開国前夜。彼は「愛する日本」のため、幕府の知恵袋となる。昼は盛装して天皇に拝謁、夜は頭巾を被って尊王の志士を助けたり、と大活躍。その働きが運命の歯車に不思議に作用し、ついに日本の歴史が「ひっくり返る」瞬間が。 <<Amazonより抜粋>> |
タイトルの通り、幕末の史実を裏返してしまった作品。
本書の主人公はアナトール・シオンは架空の人物。
この日本ひいきのフランス人が、日本の幕末にあったいくつかの事件に関与し、そこを裏返していくことで、裏の幕末史をつむぎだします。
なんというか、パスティーシュ作品を得意とする氏が、その対象を「作品」ではなく「史実」としてしまったのが面白いのですね。
多少なりと「歴史」を知っている読み手なら、「なるほどね、そうくるか」と思います。
ラストの「大統領選挙」ってのが圧巻。
候補者が、気持ちよいくらいの空想です。
是非幕末好きでいたずら好きなら、一読ください。
「ワールズ・エンド・ガーデン」 いとうせいこう 2009-050
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出版元 |
新潮社 |
初版刊行年月 |
1991/01 |
著者/編者 |
いとうせいこう |
総評 |
20点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:3点 読了感:3点 ぐいぐい:3点 キャラ立ち:4点 意外性:3点 装丁:4点 |
あらすじ |
地上げした土地の廃ビルにペインティングを施し、アーティストやミュージシャン、編集者などオシャレな不良どもを住まわせる。なんの変哲もない町が二年後には流行の発信地となるだろう。期限付きの解放区、ムスリム・トーキョーはそんな思惑で生まれた―。ドラッグが蔓延し、フリーキーな若者たちが蠢く堕天使の楽園。幻覚のようなヴィジョンに豊かな寓意を重ねた長編小説。<<Amazonより抜粋>> |
1991年の作品。
18年も前の作品ですが、色褪せてはいないですね。
なんというか、まさに「箱庭」です。
井の中の蛙みたいなところです。
そこが退廃。
思い切りジャンキーなのです。
だから物語のメインにある「自分探し」も、ある意味において汗臭くなく、それでいて泥臭いのですね。
宗教モノといえば、そうなのですが、あまりそういった印象もなく終わりました。
注目すべきは退廃した世界観。
例えば、たびたびこの書評にも登場する(といって、だいぶ過去の記事ですが)、椎名誠氏の「武装島田倉庫」の雰囲気も匂わせます。
でも、あの世界観には敵わない。
「萩原重化学工業連続殺人事件」 浦賀和宏 2009-049
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出版元 |
講談社ノベルズ |
初版刊行年月 |
2009/06 |
著者/編者 |
浦賀和宏 |
総評 |
22点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:3点 読了感:3点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:4点 意外性:4点 装丁:4点 |
あらすじ |
「脳」を失った死体が語る、密室の不可能犯罪!双子の兄弟、零と一の前に現れた、不死身の少女・祥子と、何もかもを見通す謎の家政婦。彼らが信じていた世界は、事件に巻き込まれる内に音を立てて崩壊していき…。脳のない死体の意味とは!?世界を俯瞰する謎の男女と、すべての事件の鍵を握る“萩原重化学工業”の正体とは!?浦賀和宏の最高傑作ミステリが世界の常識を打ち破る。<<Amazonより抜粋>> |
知らずに読んでいましたが、安藤シリーズなのですね。
安藤シリーズ好きでした。
それにしても、時間が経ちすぎで、どんな感じが忘れてしまいました。
とにもかくにも安藤シリーズです。
厳密には安藤は出てませんが、安藤シリーズの世界観の中の物語ですね。
で、本作。
相変わらずです。
氏の作品としては、がっつり雰囲気のある物語です。
八木剛士シリーズが、どちらかと言えば「内面」の世界=独り言の世界であるに比して、こちらは、ちゃんと外世界とコミットメントしています。
ただ、発想が「セカイ系」なのですね。
だから、読み手の深層の部分をちょっと抉ってきます。
このあたりの微妙なところが良いですね。
萩原重化学工業というとてつもない背景の中で、それこそ「とんでもない世界」の中で、語られるのは「母子の愛」だったりするのですね。
今後があるとしたら、それはそれで面白そうです。
2009/6/20に借りた本
入梅してから雨があんまり降りません。
毎年のことですが、徐々に夏の気配もしてまいりました。
予約本が大量に借り出せました。
しかもほどよく新刊もあって、久しぶりの大漁でございます。
題名 |
萩原重化学工業連続殺人事件 |
読了可能性 |
★★★★☆ |
出版元 |
講談社ノベルズ |
初版刊行年月 |
2009/06 |
著者/編者 |
浦賀和宏 |
読前感想 |
予約本1冊目。ついこの間の刊行でまさに新刊。八木剛士シリーズが完結したばかりですが、精力的に作品を出しています。 |
読後感想リンク |
題名 |
B/W完全犯罪研究会 |
読了可能性 |
★★★★☆ |
出版元 |
太田出版 |
初版刊行年月 |
2009/06 |
著者/編者 |
清涼院流水 |
読前感想 |
予約本2冊目。こちらも新刊です。新刊で予約でしかも早く来るってのはなんというかうれしいことです。 |
読後感想リンク |
題名 |
ワールズ・エンド・ガーデン |
読了可能性 |
★★★★☆ |
出版元 |
新潮社 |
初版刊行年月 |
1991/01 |
著者/編者 |
いとうせいこう |
読前感想 |
こちらも予約本3冊目。宗教モノが読みたいなと思って、予約してみました。 |
読後感想リンク |
題名 |
ある島の可能性 |
読了可能性 |
★★★☆☆ |
出版元 |
角川書店 |
初版刊行年月 |
2007/02 |
著者/編者 |
ミシェル・ウエルベック 訳 中村佳子 |
読前感想 |
こちらも予約本で4冊目。で、こちらも宗教モノの流れから見つけて、借りてみました。 |
読後感想リンク |
題名 |
幕末裏返史 |
読了可能性 |
★★★☆☆ |
出版元 |
集英社 |
初版刊行年月 |
2008/09 |
著者/編者 |
清水義範 |
読前感想 |
新刊本コーナーにありました。本帯曰く「本格パスティーシュ長編」。長編ってのがポイントですね。 |
読後感想リンク |
題名 |
ポジ・スパイラル |
読了可能性 |
★★☆☆☆ |
出版元 |
光文社 |
初版刊行年月 |
2008/05 |
著者/編者 |
服部真澄 |
読前感想 |
こちらも新刊本コーナー。エクサバイトな感じならよいのですが。 |
読後感想リンク |
題名 |
地球の歩き方リゾート ホノルル&ハワイ |
読了可能性 |
★★☆☆☆ |
出版元 |
ダイヤモンド社 |
初版刊行年月 |
2009/04 |
著者/編者 |
ダイヤモンド社 |
読前感想 |
予約本5冊目。いろいろありましてホノルルです。 |
読後感想リンク |
「ヒトリシズカ」 誉田哲也 2009-048
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出版元 |
双葉社 |
初版刊行年月 |
2008/10 |
著者/編者 |
誉田哲也 |
総評 |
20点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:3点 読了感:2点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:4点 意外性:3点 装丁:4点 |
あらすじ |
5つの殺人事件。果たして刑事は真実を見たのか?果たして女は幸せだったのか?今、注目を浴びる著者の連作警察小説。木を見て森を見ず――。細部に注意しすぎ、肝心の全体を見失うことのたとえで、事件捜査において、最も避けなければならないことである。この小説に登場する刑事は皆、これを徹底し犯人を逮捕していく。だが、彼らは気づかなかった。その森が想像以上に大きく深いということに……。5つの殺人事件。果たして刑事は真実をみたのか?今、注目を浴びる著者の連作警察小説。<<Amazonより抜粋>> |
6つの連作短編が所収されています。
連作短編の軸となるのは、タイトルの一部にもあるとおり「シズカ」という女性。
この「シズカ」という女性のキャラクターが良いです。
すべての事件において、犯人ではないのだが、間接的に関わる事となる女性。
残忍であるがゆえに儚い女性のキャラクターです。
またその年齢などを頭に入れておくと非常に興味深いです。
まったく筋書きも違うし、どのような解釈を持ってしても違うとは思いますが、なんとなく、本当になんとなくですが、森博嗣氏作品に登場する「四季」を思い出しました。
このシズカだけが、物語を俯瞰視できる立場として君臨している。
そういう感触を受けたのです。
それだけにラストの作品「ヒトリシズカ」のオチはちょっと物足りなかったと思ったりします。
賛否両論あるとは思いますが、個人的には、最後の最後まで貫き通して欲しかったなとか思うのですね。
「ハブテトル ハブテトラン」 中島京子 2009-047
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出版元 |
ポプラ社 |
初版刊行年月 |
2008/12 |
著者/編者 |
中島京子 |
総評 |
18点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:3点 読了感:4点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:2点 意外性:2点 装丁:3点 |
あらすじ |
広島県・松永を舞台に、はずむような備後弁でつづられた物語。<<Amazonより抜粋>> |
まず興味をひくタイトル。
このタイトルのハブテトルとは備後語で「すねている」の意味であり、ハブテトランとはその否定形です。
なので標準語だとこのタイトルは『「すねている」、「すねていない」』ということですね。
学校でうまくいかない男子・大輔が母の故郷である松永に行く。
そこで過ごす物語です。
この手の物語にありがちな展開だったりします。
いわゆる「成長物語」なわけです。
ついこの間、読了したこちら
にも雰囲気が似ています。
もう少し躍動感のある感じですね。
自転車による小旅行や、祖父の仕事の話など、それなりのクライマックスが適度に散りばめられていて飽きることはありません。
『夏休みの課題図書』って印象もあって懐かしい感じがしました。
「王様は裸だと言った子供はその後どうなったか」 森達也 2009-046
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出版元 |
集英社新書 |
初版刊行年月 |
2007/08 |
著者/編者 |
森達也 |
総評 |
18点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:3点 読了感:3点 ぐいぐい:4点 キャラ立ち:2点 意外性:4点 装丁:2点 |
あらすじ |
誰もが知っている15の物語に託した痛烈パロディ 話題の映画監督・ドキュメンタリー作家の森達也が、誰もが知っている古今東西の十五の物語を、痛快にパロディー化! 「桃太郎」を始めとする日本の民話、ギリシャ神話、イソップ、グリム、アンデルセン、さらにはセルバンテス、オスカー・ワイルド、芥川龍之介、浜田廣介といった作家たちの名作に触発された著者の筆は、急速にムラ化しつつある現代社会に、男と女の深遠に、ふてぶてしく、無遠慮に切り込み、その特質と異常性そして切なさを浮き彫りにしていく。毒気たっぷりの風刺精神とユーモアセンスにあふれる、独創的な現代日本論。 <<Amazonより抜粋>> |
厳密には小説ではないです。
とはいえ、古今東西の有名な物語に勝手で快活な解釈をしつつ、「その後の物語」を書いていたりします。
本作の特徴は、パロディーで楽しませつつ、ちゃんと現代への風刺(とくにマスコミへの反感)を織り込んでいるところ。
なんというか、著者の姿勢というものを強く感じます。
こんな感じの物語をパロディー化しています。興味のある方は是非、手にとって見てください。
王様は裸だと言った子供はその後どうなったか(仮)
桃太郎
仮面ライダー ピラザウルスの復讐
赤ずきんちゃん
ミダス王
瓜子姫
コウモリ
美女と野獣
蜘蛛の糸
みにくいあひるのこ
ふるやのもり
幸福の王子
ねこのすず
ドン・キホーテ
泣いた赤鬼
「出星前夜」 飯嶋和一 2009-045
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出版元 |
小学館 |
初版刊行年月 |
2008/08 |
著者/編者 |
飯嶋和一 |
総評 |
19点/30点満点中 |
採点の詳細 |
ストーリ性:4点 読了感:4点 ぐいぐい:2点 キャラ立ち:3点 意外性:3点 装丁:3点 |
あらすじ |
『黄金旅風』で有家の子どもを救うために呼ばれた外崎恵舟。しかし、この外崎が南目の代官所に追放されてしまう。この事件に怒りを覚えた矢矩鍬之介を筆頭とする若衆が終結。折しも代官所で火災が発生し、代官所はこの火災を集結した若衆の仕業と決め討伐に向かうが、返り討ちにあってしまう。それは、これまで一切の抵抗をしてこなかった旧キリシタンの土地で起こった初めての武装蜂起だった・・・。 <<Amazonより抜粋>> |
2009年の本屋大賞にノミネートされ、見事7位になりました「出星前夜」です。
物語は、歴史上の「島原の乱」を中心の物語なのですが、特徴的なのは主人公が天草四郎ではなく同地に生きる「寿安(ジュアン)」という青年であること。
この視点は新鮮でした。
この視点のみならず、本書前半は医師である外崎恵州や庄屋である鬼塚甚右衛門の目線で、その時代の理不尽さを浮き彫りにし、大きな世界を魅せてくれます。
この世界観には脱帽です。
「島原の乱」という社会科の教科書の1ページで語られる史実を1200枚の小説にすることで、ある意味で、ものすごく陰惨で儚い物語になるということを実感することができました。
ただ、意気込んで読んでみたのですが、ちょっと読みづらい印象がありました。
もっと落ち着いた時間、落ち着いた場所で読むべき物語であるとやや後悔しております。