現行の大学入試センター試験に代わり、2020年度から始まる新共通テスト。
大学受験だけでなく、高校受験、中学受験にも大きな影響を与える入試の方向転換となり、学習塾でも変化する傾向内容を注目しています。
大学入試センターは4日、現行のセンター試験に代えて2020年度に始める「大学入学共通テスト」に向け、11月に実施した試行調査(プレテスト)の問題と結果の速報を公表しました。
知識だけでなく、思考力、判断力、表現力を中心に評価するとしています。国語と数学は記述式問題を導入。英語は「読む、聞く、書く、話す」の4技能を評価するため、民間の資格・検定試験を活用する。ただ、23年度までは大学入試センターが作成するマークシート式で「読む、聞く」の能力を試す試験も継続し、併存させていきます。
国語と数学で記述式問題が導入されたほか、複数の資料を読み解いたり、探究活動を重視したりする問題が各教科で出され、現在の大学入試センター試験と比べて出題傾向が変わりました。
マークシート式問題の採点が6~7割程度終了した段階での設問ごとの正答率などを示した。新たに導入する記述式は、国語、数学で各3問を出題。採点は近く開始し、年内に終わらせる。最終的な結果は、今年度中に公表する。英語は別日程で、来年2~3月に試行。
プレテストは、問題作成や採点などを試行、検証し、新共通テストの円滑な導入に生かすのが目的です。
11月13~24日の期間中、全高校の約38%に当たる全国の国公私立1889校、延べ約17万8000人の高校生が参加。実施した全11科目のうち、原則的に国語と数学・Aは高校2年、他は高3が解答しました。
全問題の正答率は0・9~87・1%。過去3年のセンター試験では1%弱~9割超だったため、センターは「各問題の正答率の分布を見ると、難易度の幅は現行試験より高い方に寄った傾向があるのではないか」と分析しています。
小中高で教える内容を決めた学習指導要領は見直しが進み、20年度の小学校から順次実施される新指導要領では、十分な知識をもとにした思考力・判断力・表現力を重視。
試行調査もこうした点を意識し、暗記した知識を問うのではなく、生徒会規約や会話文などを読み込んで答える国語の記述式問題のように、複数の資料を読解させる問題が多かった印象です。
11科目中8科目で問題冊子のページ数が現行の大学入試センター試験より増加。これまでより解答に時間を要する問題もあり、時間内に最後まで解けない生徒が多かったとみられる科目もありました。
例えば、国語は記述式問題の導入に伴い、試験時間を現行より20分長い100分としたが、最後に掲載された漢文の問題の無解答率は高かった。
今回、国語は全ての大問が複数の文章や表などを比べて解く内容だった。センターは「本番の試験では試験時間も考え、単一の文章で解答させる大問も出すことなどを検討する」とのこと。
今回の試行調査では、国語と数学I・Aで本番を意識した記述式問題が出題された。入学段階で求められる思考力、表現力が問われました。
国語では、学校の部活動の規則をテーマに、形式の異なる複数の文章や資料を読み比べて情報を整理し、記述させる内容。
生活に即した実用的な文章に対する読解力を重視していますが、こうした形式の出題に慣れていない生徒は戸惑ったかもしれません。
問題では、生徒会部活動委員会で取り上げる議題を打ち合わせる執行部メンバーの会話文、生徒会部活動規約をまとめた表、部活をテーマにした学校新聞など計5種類の文書が提示されました。
部の新設を申請する条件と手続きについて規約から要約させたほか、部活の終了時間を延長することの賛成点と問題点を、「しかし」など特定の言葉を用いて120字以内で書かせる問題でした。
ただ、問題の難易度はそれほど高くありません。文章や資料中のどこに何が書いてあるのかを理解した上で、設定された条件に沿ってまとめればよく、高度な表現力や構成力は求められていない。読解力と、要約して記述する力があれば解答を導き出せる内容です。
マークシート式問題では、該当する選択肢を「すべて選べ」とする新形式の問題を計14問出題。従来のセンター試験では「三つ選べ」などの出題はありましたが、選ぶべき選択肢がいくつあるか分からない問題を出したことはありませんでした。
完全な正答率は、物理で5割を超えた問題も2問あったが、残りは全て3割未満。1割を割った問題も3問あり、数学・Aの同方式問題は0・9%と全体を通じて最低となり、課題を残した形です。
センターは「難度が高い内容に全て選ばせる形式を組み合わせると、正答率は低くなる。受験生が答えやすい内容に組み合わせれば、きちんと理解しているか問える問題になる」と説明。今後、一部が正答だった場合に部分点を与えるかなども検討するとしています。
大学入学共通テストをめぐっては、大量の記述式問題の答案を公平に採点できるかどうかが課題。試行調査では約1千人が採点者となり、データ化された生徒一人一人の答案を複数人がチェック。結果は来年3月までに公表される予定。
大学入試センターによると、生徒の答案は都内のセンターに集められ、特殊な機械によってデータ化されて委託先の通信教育大手「ベネッセコーポレーション」に送られる仕組みになっています。ベネッセといえば、いろんなトラブルが過去ありました。今なお、そのしこりは残っていて、本当に大丈夫なのか、信頼性に懐疑的な国民もかなり多いはずですが、実際は、ここまで大学入試に食い込んでいて驚きです。同社は、民間の模擬試験などで経験がある人のうち、内部選考にパスした採点者約1千人を確保。モデル問題を使い研修も実施するとのことですが、モラルと規律の点で徹底した改革があるかどうか、チェックが必要でしょう。
今後始まる実際の採点業務では、2人の採点者が、あらかじめ設定された正答条件を基に別々に採点。2人の評価が一致すれば採点結果として登録され、点検を経て確定する。評価が異なった場合は、さらに別の人が確認し、最初の2人のどちらかと一致すれば評価が決まる仕組みです。
評価が極めて難しい場合は、同社の社員らが数人で協議し、場合によってはセンターに意見を求める。一部の採点結果を抽出して正確な採点がなされているかを調べる「検収」もあり、センターの職員や高校の校長経験者らが実施。
記述式はマークシート式に比べ採点に時間がかかるため、センターは平成32年度に始まる共通テストでは、採点期間をセンター試験より1週間程度長く確保する考え。記述式で部分点をどの程度認めるかも今後検討しています。