文春新書1位に&日本一老けない牛乳は鳥取にあり! | 笹井恵里子のブログ

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執筆は苦手、でも企画立案と取材が大好きなジャーナリストです。

 週刊文春の中で「伊集院静の『悩むが花』」を真っ先に読んでいました。少し前に突然連載が終了し、数日前に「やっぱり『悩むが花』がないと寂しいね」と娘と話していたら突然の訃報……。悲しいです。(しかも連載を終了する理由が、普通なら「体調不良のため〜」となるのでしょうが、「読者の相談のつまらなさ」と「担当編集者」のせいにしていたので、色々な意味でなんてすごい人なんだと思っていました)

 

 そんな話の後に気が引けますが

『老けない最強食』が文春新書の中で1位になりました!(たぶん一瞬で終わると思うので、貼り付けておきます)

 

 昨日プレジデントオンラインで公開した「鳥取県民がうらやましい…鳥取名物「白バラ牛乳」が全国1位の高品質ミルクといえる客観的根拠」は、この本の抜粋記事です。

 まったく読まれていませんが(笑)、これまで「自分が一番がんばった記事」をあげるとするなら、私はこのオンライン記事、そして新書(「老けない最強食」)の大元である「日本一老けない牛乳は鳥取にあり!」をあげます(『週刊文春』2018年5月17日号掲載)。

 一つ前のブログに、「主食」や「老けないヨーグルト」の記事が「科学的でない」という指摘があったと書きました。

 

 最近、誰かが「Aは〜である」と言ったり、「A+B=ABである」という解説ばかりの記事だと感じています。

 たとえば「ポテトチップスは体に悪い」と言ったら、そんなの当たり前だ!と思いますよね(体にいい材料を使ったポテトチップスがあるとかそういう話は置いておき)。

 老けない最強食シリーズを担当してくれたデスクが、かつて「笹井さんは読者の好奇心の引っ張り方がうまい」と褒めてくれました。私は記事を読んだ人が、今から自分一人でやれること、それも明日への希望をもって取り組めることを書きたいといつも思っています。みんな生きていればつらいこと悲しいことは経験する、生きているのが嫌になる時もある、そういう時、明日に向かって背中を押せる存在でありたいんです。だからこの仕事をしています。

 

 本の「はじめに」に書きましたが、「老けない」って言葉は人を笑顔にさせるんですよね。週刊文春で老けないシリーズの特集連載をしていた時、本当に驚くほど多くの数のハガキをいただき、それを実感しました。みなさんの「明日からやってみる」という言葉がうれしかった。

「老けないヨーグルト」というくくりが科学的でないという先生に、そのハガキの束を見てほしいくらいです。高齢になっても生きる希望をもって、自分の体のために主体的に何かに取り組むーーそれ以上の素晴らしいことってあるんでしょうか。

 

 もちろん、だからといって記事が科学的でないわけではありません。

 老けないヨーグルトは、同志社大学八木先生の論文を指標にしてランキングを作っています。元の論文ではA社、B社となっていますが、週刊文春で本邦初公開という形で1位は明治、2位は小岩井、3位はビヒダスと公開しました。

 

 話は戻りますが「日本一老けない牛乳は鳥取にあり」の記事。これはつまり「老けない乳製品」というくくりで、老けないヨーグルト、老けないチーズ、老けない牛乳をランキングにしています。先に書いたヨーグルトの取材で同志社大にいた時、牛乳をどうしていいか悩んでいて、もうランキングができないと泣きそうになっていました。締め切りはその5日後。週刊文春のGW明け号という大舞台でページをあけてもらっているにもかかわらず、原稿を書ける素材がない状態だったんです。

 牛乳は製品ごとに成分が変わるわけではありませんし、殺菌温度や製法で差はあっても、何かひとつの科学的数値でランキングを作るには無理があると思っていました。

 そんな時、「あるシェフが鳥取にある牛乳が日本で一番うまいと言っている」という情報を仕入れました。といっても情報はそれだけです(笑)。空振りになる恐れはありましたが、もう行くしかありませんでした。その日の最終電車で同志社大がある京都から、急遽鳥取に向かいました。

 鳥取で、鳥取にいる牛の乳はすべて「白バラ牛乳」(商品名)になっていることを知りました。たとえば北海道の牛の乳なら、さまざまな製品の牛乳に利用されていますが、鳥取は全ての乳を白バラ牛乳にしていたのです。それも全頭の牛の健康診断を実施し、牛の健康を重視して作っている。

 そこで「牛の健康診断の受診率」を「老けない牛乳」のランキング指標にしました。鳥取は毎年全国1位、100%近くの実施率だったのです。

 

 ちなみに、なぜ「鳥取牛乳」でも「砂丘牛乳」でもなく「白バラ牛乳」なのか。

 白バラは「正直、純粋」「私はあなたにふさわしい」という花言葉を持っています。飲む人(消費者)にとって誠実な牛乳を作っていくという思いが込められているのだそう。

 

 私が週刊文春で記事にし、白バラ牛乳は前年比同月売上から10%以上上昇したと、あとから聞きました。新聞にも…「文春砲 思わぬ援護射撃」と取り上げてもらいました笑

平井知事にも直接お礼を言われ…(↓2018年6月都内で撮影し、私のブログに掲載することの了承を得た写真です)

 

 1年後、鳥取の酪農家の人ともお会いしました。その方は涙を流していました。

「ほかの牛乳なら製品にできるレベル。でも白バラ牛乳の基準では製品にできないことばかりだった。だからたくさんの牛乳を捨てて、億の借金を抱え、白バラ牛乳を続ける意味があるのかと迷う時もあった。でもやってきてよかった」

 その言葉を聞いて私の目にも涙が浮かびました。自分の仕事にも当てはまるからです。

 

 合格点を出せる取材と原稿ができた時。

 そこからどこまで自分はこだわるのか。

 

 当時、週刊文春のデスクに「(GW前に出した)主食の記事も、この牛乳の記事も120点だ」と言われました。あの頃、なんて自分はダメなんだろうって思っていたから、とても嬉しかった。

 だから「日本一老けない牛乳は鳥取にあり」の記事は私の最大の誇りです。でも、今もこの記事を超えるものは出せていないと感じています。