警察隊の催涙弾から逃げ回ったあの夏から3年が過ぎた。
香港は今や平和そのものだ。
それは、なかば強制的に市民がルールに従っている(管理されている)からに過ぎない。
皮肉なことに、治安が安定した香港の金融センターとしての信頼はより固まった。
それが元々中国の意図だったかどうかはわからないが、それだけ中国にとって西側との窓口となる香港の金融センターとしての価値は高いということかもしれない。
習近平の動きは周到だ。
それは彼ひとりの能力で到底まかなえるものとは思えず、共産党のブレーンには優秀な人間が居るに違いないが、もしかするとAIを駆使した綿密なシミュレーションを行っているのではないかとも想像する。
ロシアのプーチン大統領はウクライナ軍事侵攻によって、世界一の軍事大国であるアメリカが主導(支配)するいまや腐りきった資本主義に一石を投じた。
結果として彼は、今や世界を敵に回している。
戦後アメリカ支配下に置かれた日本に住む我々日本人は、ウクライナ側に圧倒的な正義があると思っているが、果たしてそう言い切れるのだろうか?
国の正義と、国民の正義は必ずしも同一線上にあるわけではない。
ウクライナで起こっていることは、リアルに戦争であり毎日誰かが死んでいる。
ウクライナ国民の全てが自分の意思で戦っているとは思えない。
多くの市民は戦争自体を一刻も早く止めて欲しいと願っている筈だ。
「ロシアが諦めて撤退すれば戦争は終わるじゃないか!」と思うかもしれないが、「めんどくせえことになったからそろそろやめるか?」と考えるくらいなら最初からプーチンはウクライナに侵攻などしていない。
プーチンと習近平の頭の中には、「終焉を迎えつつある資本主義にとどめを刺すのはまさにこの時しかない」という覚悟と、それを遂行する為の完璧なシナリオがあるように思える。
およそ100年前にロシア革命を指導したレーニンは「資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだ」と語った。
そしてこの言葉を世に知らしめたのは英国の経済学者ケインズであり、「資本主義社会の基盤をくつがえすには、通貨を堕落させることほど巧妙で確かな方法はない」と1919年の「インフレーション」と題した小文で論じた。
「通貨の堕落」とはすなわち、お金の価値が下がり、モノの値段が上がるインフレを意味する。
レーニンは資本主義という敵がインフレの泥沼にはまれば、勝利は自らの手に転がり込んでくると信じていた。
レーニンの思想を引き継いだプーチンの思惑通りなのか、今現実にエネルギーや食料供給の制限から世界はインフレに喘いでいる。
方や、資源国であるロシアは貿易封鎖され通貨がデフォルトしても国民が飢えているという話は聞かない。ゼロコロナ政策で封鎖的に経済を回している中国もそうだ。
新型コロナウイルス(COVID19)が何だったのかは未だに不明だが、この2年半の間に新型コロナウイルスの世界的蔓延が結果として破壊したものは、(海の国の)資本主義経済が成長し続けるための原動力である「グローバリズム」だった。
新型コロナとロシアのウクライナ侵攻は、どちらも資源に恵まれた「陸の国」の強さを証明する結果となった。
ロシアのウクライナ侵攻は、21世紀版「海と陸の戦い」であると言われる。
長年、世界を支配してきた「海の帝国」=米国は、「陸の帝国」=ロシアや中国の挑戦を退けられるのだろうか?
思い返せば3年前、香港で起こった民主派香港市民によるデモ隊と警察の衝突による暴動騒ぎが、おそらく民主主義というもののある種の転換期を示唆する重要な局面であったことは間違いない。
陰謀論的な話ではなく、全てのことはそれを意図する誰かが生み出したきっかけによって起こるものだ。
日本など、見方によっては中国以上に共産主義的なシステムによって国民が管理されていて自由の少ないエセ民主主義国家と化しているが、安倍晋三暗殺事件によって国民の監視はより強化されることだろう。
マルクスが言ったように、資本主義は豊かな中流階級に満たされ成熟した後、大量の貧民を生み出し、大半の富は一部の富裕層に集中し、そして崩壊と共に社会主義化が進むのかもしれない。
香港がデモで荒れまくっていた3年前、日本では安倍晋三内閣による消費税の増税が目前に控えていた。
あの時消費税の増税がなかったら世の中がどうなっていたかは分からないが、少なくとも日本では増税に反対する大規模なデモ(暴動)は起こらなかった。
それどころか当時の国内の話題は、もっぱら「常磐道あおり運転事件」だった。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのは翌年の2020年であり、それから怒濤のように2年半が過ぎ去ったが、その間に1年遅れで東京オリンピックが開催され、今年には北京冬季オリンピックも無事開催された。
北京オリンピックの直後、ロシアによるウクライナ侵攻という衝撃的な事態が発生し、すぐに終結すると思われた戦争は今も出口の見えない長期化の様相に突入した。
そんな中、日本では安倍晋三元首相が暗殺されるという凶悪事件が勃発し、犯人の山上徹也が恨んでいたとされる旧統一教会と自民党保守派議員の繋がりが暴露され毎日のように叩かれているが、今回の事件のテロ的本質からかけ離れていて呆れかえる。
今回の事件は、意図的としか思えないテロや暗殺や共謀行為という方向性から意識が離れるような報道に苛つくが、2017年の6月15日に「テロ攻撃の共謀行為を計画段階から処罰できる法案」を可決成立させたのが安倍内閣だったのは、それが東京オリンピック・パラリンピック対策だったとはいえ、自分の安全は守れなかったというのは皮肉としか言いようがない。
また、私が以前から予想していた通り台湾をめぐる緊張が高まっており、アメリカはその火に油を注ぐかのようにナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、それに対して中国は威嚇報復措置としてこれみよがしな軍事演習を行いEEZ海域にミサイルを落としまくるなど"いったい誰が何をしたいのかわからない"混沌とした世界に我々はいま生きている。
そんな中、中国は国内では相変わらずゼロコロナ政策という名目で鎖国に近い経済体制を取りつつ、軍事的には、粛々と山を切り崩し湾岸部を埋め立てて領土を拡大していくという地道な海洋埋め立て計画を大真面目に進めている。
50年もすれば、香港島と九龍がビクトリアハーバーの埋め立てで陸続きになるかもしれないのと同様に、台湾海峡も中国と陸続きになるかもしれない。
これは南沙諸島で実証済みだが、かれらにとって国際ルールなどどうでも良く、長年かけても既成事実を作ってしまえば勝ちという考えなのだろう。
中国にとって最も大切なことは「一つの中国」というコンセプトだ。
陸の帝国にとって重要なことは、領土の拡大とその秩序の維持である。
中国にとって台湾など、その気になればいつでもどうにでもできる既に中国の一部であり、アメリカが(戦争を)望んで台湾に独立をけしかけ、台湾と日本を生け贄にでもしないかぎりは、中国が台湾に軍事侵攻する理由は見当たらないが、起こらないとは言い切れない。
アメリカは中国を叩けるうちに叩いておきたいと考えていることは間違いない。
台湾、日本、韓国は、その為の生け贄にされる可能性がある。
グローバリズムに支えられる資本主義の強みは、強い通貨(カネ)と武力(軍備)を持っている国が圧倒的な主導権を握れるところにある。
しかし今や、新型コロナ(COVID19)という謎のウイルスと、インフレの世界的な蔓延によって、海の国の資本主義経済はコーナーに追い込まれている。
資本主義社会に生きる我々個人も、今や持てる者と持たざるものの格差は開く一方であり、持たざるものにとってのこの先未来は辛いものになるだろう。
我々日本人は、日本政府が如何に踊らされようと、それに振り回されず、しっかりと情勢を見極めて日本人として取るべき行動を真剣に考えるべきだ。
その選択肢のひとつが、海外疎開(移住)であるということは疑いようがない。
逃げることが卑怯だとか、そんなことを言っている場合ではない。
あなたは国の為に死ぬ覚悟があるのか?
ロシア、北朝鮮、中国という超絶危険な国家に隣接する日本は、それらの国と敵対するアメリカ側に居るかぎり、たとえ核をもったとしてもその危機から逃れることはできないだろう。
移住先として最も安全と考えられるのは、究極的にはアメリカ本土か、中国本土という選択になる。
ミサイルが怖ければミサイルを撃つ国に逃げれば良い。
日本以外のアジア地域で中国の息のかかっていない場所を探すのは難しい。
中東やインドという選択肢も考えなければならないかもしれない。
オーストラリアやニュージーランドは、行ったことがないので分からないが、案外思った以上に中国の息がかかっているのかもしれない。
資産の置き場所については、相変わらず香港が穴場であり最も安全な選択であることに変わりはないが、アメリカに不動産を持つのは悪くない。
現金資産をアメリカに移転する人も増えているが、アメリカに居住するのでない場合は、アメリカの銀行は日本の銀行並みにインターネットバンキングでの遠隔による国際送金が不自由なのでお勧めできない。
アメリカで買うなら生命保険か不動産だろう。
アメリカ株取引がブームだが、そろそろ引き際かもしれない。
いずれにしても資産に関しては分散投資が基本中の基本だ。
先ずは資産を海外に逃がすべきであり、カネさえ有れば物理的な移住は可能だと思われる。
そして日本(政府)にとって、いちばん困ることは国民の資産疎開の加速であることは間違いなく、いずれはそれも中国と同じように規制されると考えた方が良いだろう。
日本の資本主義は既に社会主義化しているということをお忘れなく。