香港IFAの合い言葉は「LOW PROFILE(目立たないこと)」 | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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「Low Profile(ロー・プロファイル)」とは、目立たないことだ。

 

そのまま直訳すれば、「低く薄べったい状態」だが、結果として人間や企業の行動を表現する場合は、「頭を低く下げて伏せた状態」つまり、目立たず控えめな態度や方針ということになる。

 

香港IFAでよく聞く言葉だが、香港のIFAだけでなく、シンガポールやタイ、マレーシアのIFAも同じだし、マン島やケイマン諸島のオフショア金融プロバイダーも基本的に方針は同じ「Low Profile」だ。

 

要は目立たないことによって、自分たちにリスクが及ばないように心がけているということだ。

 

目立つとどのようなリスクがあるのか?

 

基本的には、自国における業法とライセンスが関係するが、国を跨ぐクロスボーダー取引におけるグレーゾーンというものが存在し、白か黒かはっきりしないため目立たない事が望まれる。

 

どの国であれ、その国には金融業界を規制する業法やライセンスがあり、タックスヘイブンの金融プロバイダーが提供する金融商品や保険というものは、多くの国でその仲介や契約が規制されていたり、規制対象になるのかどうかという部分がはっきりしない「グレーゾーン」に属するキワモノなので、その存在が目立って良いことはないのだろう。

 

そのようなオフショアの金融商品を扱う、オフショアの仲介業者(ブローカー)であるIFAや、その提供会社(プロバイダー)は、常に自国での業法やライセンスに違反しないように細心の注意を払う必要があり、同時にその商品が流通する外国においても、その国の業法に抵触するべきではないが、そこが難しい。

 

例えば、RL360(ロイヤルロンドン)のようなマン島の金融プロバイダーが提供する金融商品を、香港のIFAが仲介し、日本居住者が契約する場合について考えてみよう。

 

皆さんが、何の深い考えもなく誰かに勧められて日本で契約書にサインしたりしている、RL360(マン島)のRSPというセービングプラン(積立型ファンドラップ)などがそれにあたるが、これにはマン島、香港、日本という3ヶ国の業法やライセンスが絡んでくる。

 

図にすれば以下のようにシンプルな流通構造だが、この中で最も業法上の問題を含むのは日本国内の金融業法対策だろう。

 

RL360(マン島) → 香港IFAの関連オフショア法人(BVI) → 顧客(日本)

 

当然、マン島のプロバイダーは、マン島の金融業法と金融ライセンスに基づいてビジネスを展開しており、それに反することはできない。

 

しかし、マン島の金融商品を契約する顧客はほぼマン島には住んでいない外国人であり、それを仲介するIFAもマン島以外の外国のIFAであるため、マン島以外の国において自社の金融商品が契約されることに関してその流通途上でその国における違法性があったとしても、その責任を負うことは出来ない。

 

それ故、香港のIFAが香港では未登録のRL360やITAのようなオフショア商品を仲介する際には、香港の金融当局によって規制されるライセンスIFAが仲介することはできず、BVI法人など別会社を使わなければならないという結果になっている。

その便宜上使われているBVI法人など香港以外のオフショア法人は、実体のないペーパーカンパニーであり、その会社について調べたところでたいした情報は見つからない。

 

香港のIFAも、香港の金融業法とライセンスに基づいてビジネスを行わなければならないが、香港の業法やライセンスは香港に住む香港人が香港のIFAを通じて金融商品の契約を行う場合に適用されるものなので、香港ではない、中国や日本や韓国のような香港機居住の外国人が契約する場合には、その業法がそのような外国人顧客を保護できるものではないと考えられる。

 

いずれにしても、香港国内で認可されておらず流通もしていないRL360やITAといったプロバイダーの金融商品を香港で金融ライセンスを保有するIFA(香港法人)が、たとえ香港外の外国人に対しても仲介することはできない(プロバイダー側が好まない)ようだ。

 

こういった取引を、「クロスボーダー取引」といい、貿易においても中継貿易を得意とする香港やシンガポールならではの「金融商品の中継貿易ビジネス」という特殊なエリアといっても良いだろう。

 

この複雑な状況と、プロバイダー、IFAそれぞれが、各国様々な金融規制に関わることを回避しようとする動きから、暗黙の了解として「 LOW PROFILE」という言葉が業界の常識となっていると考えられる。

 

もともと、タックスヘイブンやオフショア金融センターを活用してきた富裕層や巨大企業、場合によっては国には公にできない、隠しておきたい事実があったことは間違いなく、たとえばタックスヘイブンを活用した巨額な脱税をしている個人が、そのスキームを公にすることは無かった訳だが、最近ではパナマ文書やパラダイスペーパーに見られるようなメディアによる暴露事件もあり、またFATCAやCRSといったマネーロンダリング防止や国家間脱税防止など国際協定に基づく情報開示も行われるようになり、「そういうものがある」という認識は民間にも広まった。

 

その結果、そういうことに疎い一般人にとってはタックスヘイブンやオフショアといったものは脱税を試みる悪い人が違法に活用する市場やスキームであるという印象が強まった気がする。

 

現実には、タックスヘイブンやオフショアが悪なのではなく、それを悪用する人が悪なのであるが、プロバイダーやIFAがLOW PROFILE(目立たないようにコソコソする態度)を決め込むことによってより怪しげでわかりにくいものとなってしまっているのは残念だ。

 

特にIFAは本来であれば、オフショアの商品を世界中の市場に対して流通させるハブとしての機能があり、商品のプロモーションを積極的に行ったりすべきだと思うが、これもプロバイダー側の規制によりできない。

 

少なくとも、こうすれば買える(契約できる)というわかりやすい窓口の提示や、IFAとしての役割や方針についてちゃんとした説明を自社のHPなどで開示するなど、もう少しプレゼンスを高めれば良いと思うが、よほどローカルの業法や監査が怖いのかそういったことは期待できそうもない。

 

商品の詳細なプレゼン資料などは、全て違法営業の証拠物となり得るので、そんなものすら存在しないなかで、顧客が契約にたどり着くとすれば、よほどLOW PROFILEなオフラインのお金の勉強会的秘密のセミナーでもなければ契約が成り立たないどころか、実は合法的に契約できるオフショアの金融商品について知るよしもない。

 

結局、ギリギリのLOW PROFILEなところで、実質的には違法性のある営業行為を行っているのは末端の紹介者だけとなり、それがより業界を怪しく見せ、信用性を貶める結果となっている。

 

仮にどこで情報を得たとしても、IFAに直接問い合わせて直接契約する限り違法行為と関わることはないが、その入り口がわかりにくい。

 

LOW PROFILE(目立たない)ゆえ、どのIFAが良くて、どのIFAにどのオフショア金融プロバイダーの商品を問い合わせたら良いのかは判断が難しいが、こちらから積極的にほじくって情報を得るしかないだろう。

 

IFAも会社によってLOW PROFILE方針の度合いは異なり、中にはHPで詳しい日本語の情報を開示しているところもあるが、情報開示度が高くプレゼンスが高いIFAが必ずしも良いIFAとは限らない。

 

プロバイダーにも営業姿勢が前のめりな会社も有り、そういった会社は信用できない場合もある。

 

オフショアの場合、殆どは名も知らぬ信用にたるかどうかも疑わしい情報ソースしかないが、その中で表面(おもてづら)の良い情報ソースがあったとしても、それはそれで疑わなければならない。

 

先ずは、業界全体としてLOW PROFILEであるべきだという風潮があり、一般的に我々が考えるようなコマーシャル(商業的)な常識では計れないということを理解しておくべきだろう。