国内全8億口座に資金洗浄リスク(日経電子版より) | Mr.Gの気まぐれ投資コラム

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香港を拠点に活動する個人投資家であり、自称「投資戦略予報士」Mr.Gがお伝えする海外投資の生情報。
ねだるな勝ち取れ、さすれば与えられん!

日経電子版に面白い記事が出ていたので備忘録として残しておきたい。

 

マネー・ローンダリング(マネロン)およびテロ資金供与対策(以下、AML/CFT)に取り組む国際機関であるFATF(ファトフ)(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)による対日審査は、2年前の2019年に行われたが、その審査結果の公表が新型コロナウイルスの感染拡大およびそれに伴う渡航規制など、コロナの影響で対日審査の審議は1年延期されてやっと今年公表されるというのは知らなかった。

審査結果の内容によっては、今後ますます国内の金融機関を利用した海外取引がやりにくくなることが予想される。

 

この2年の間にも、電子通貨や電子決済の急激な普及拡大など金融機関をとりまく状況は随分変わってきているが、マネーロンダリングと、フィッシング詐欺などの犯罪を同次元で見ることにはできない。

技術的手法は似ていても、問題の本質は異なる。

銀行による闇雲な「疑わしい取引」狩りは、特に海外との送受金の効率を相当阻害しているし、ただでさえ遅れている日本のモバイルバンキング普及をさらに遅らせる結果となっている。

 

 

【国内全8億口座に資金洗浄リスク 電子決済で新たな隙も】

日経電子版  

 

日本のマネーロンダリング(資金洗浄)対策を調べている国際組織「金融活動作業部会(FATF)」の審査結果が月内にもまとまる。国際社会が北朝鮮やイランなど制裁対象国への資金の流れに厳しい目を向けるなか、金融機関は口座開設や送金時のハードルを上げて包囲網を狭めるが、電子決済との連携などで新たな隙間も生まれている。疑わしい取引は高止まりしており、日本におよそ8億ある預金口座は常にリスクと隣り合わせの状態だ。

「マネーロンダリング、テロ資金供与などと闘うためのFATF基準のグローバルな実施には、引き続きばらつきがある」。5日閉幕した主要7カ国(G7)財務相会合で採択された声明には、マネロン対策をさらに強化する必要性が盛り込まれた。北朝鮮などの制裁国やテロ組織の資金源を断つ意味で、国際社会がマネロン対策を極めて重視しているあらわれだ。日本の対応はどうか。

 

 

「口座買い取り即日入金 正規店」――。インターネット上には銀行の預金口座を買い取る複数のサイトが存在する。メガバンクは2万~5万円、ネット銀行は1万円といった具合に、銀行ごとに細かく買い取り価格が設定されている。

もちろん口座売買は犯罪だが、米国などと比べて銀行口座の開設が容易なことが背景にある。日銀によると国内銀行の預金口座数は合計で約8億あり、単純計算でひとり6口座を持っていることになる。「金銭的に弱みのある高齢者などが悪徳業者に要求されて複数の銀行で口座を開設し、売り渡すケースが後を絶たない」(警察関係者)

ある銀行では昨年6月に30代の女性がつくった預金口座を、同7月に外国人男性が使っていた。女性が転売したのかは不明だが、サイバーセキュリティー対策を手がけるカウリスの島津敦好社長は「口座を開設してから、転売やフィッシングによるIDの詐取で『本人』以外が使うケースもある。金融庁が求める厳密な継続的顧客管理が求められる」と話す。

マネロンをめぐっては2018年に愛媛銀行から総額5億円を超える資金が香港経由で北朝鮮に流れる事件が起きたとされる。外形的な本人確認や送金目的の照会の網をくぐり抜けていたことで衝撃が走ったが、国際的には邦銀のマネロン対策には厳しい視線が注がれている。

金融機関も手を打っている。金融庁のマネロン対策の指針に沿って19年前後から、口座開設時の本人確認を厳しくした。口座の用途などを聞き取り項目に加えたほか、職場や住所から離れた支店での口座開設は原則、拒んでいる。開設済みの口座でも、例えば数年間、不稼働だった口座から急に海外に送金しようとすれば疑わしい取引として自動検知。取引を確認し、改めて本人確認や目的を尋ねるようにしている。

ただ海外では本人確認がとれない顧客の口座を使えなくするのが比較的容易な一方、ハイリスクだという理由でも日本では、一方的に口座を解約するのは難しい。メガバンク幹部は「日本の金融機関にもっとも足りていないのは継続的な本人確認で、国際審査で指摘されるリスクは十分にある」と警戒する。

金融庁関係者によると「むしろ不正利用されるのは新しい口座が多い」という。銀行が取引履歴を積み上げる前に闇市場で売買された口座をトンネルに資金洗浄する手口だ。不正取得した口座に金を振り込ませ、そこから暗号資産(仮想通貨)や証券口座、「○○ペイ」といった電子決済アプリに送金し、高額な商品を購入して換金すれば「きれいなお金」になってしまう。

新型コロナウイルス禍でネットでの決済や送金が増えたのを背景に、犯罪は急増している。フィッシング対策協議会の調べでは、偽のサイトに誘導してIDやパスワードを盗み取る「フィッシング」の報告件数は2020年に前の年の4倍の22万4000件超に急増した。各行は認証に複数の要素を取り入れるなど対策をとるが、外形的には正規のIDやパスワードを入力して正面玄関から入ってくるため、阻止は容易ではない。

金融機関同士の連携にも穴がある。疑わしい送金があった場合、送金先に本人確認がとれるまで口座を凍結するよう要請しても「警察の捜索令状がないと止められない」といった対応の銀行もあるという。

デジタル技術の進歩にマネロン対策が追いつかないケースもある。20年にはNTTドコモの「ドコモ口座」を使った預貯金の不正引き出しが問題化した。スマホ決済サービスと銀行口座のつなぎ目に穴があり、多くの金融機関が対策の見直しを迫られた。金融機関とスマホアプリの連携が増えている一方、事業者や金融機関の不正対策が遅れていたことが原因だ。