ブラック・ショーマンと覚醒する女たち | つましくても、ささやかな幸せ

つましくても、ささやかな幸せ

地位もお金も能力も無くても得られる、日々のささやかな幸せを記します。
内容は、映画・演劇・美術鑑賞&読書感想文&旅行記&趣味の手品&日々の出来事などです。

 

 バー「トラップハンド」のマスター神尾武史氏は、この上なく魅力的な人物だった。しかも元マジシャンという経歴はたまらない。彼は、人の心理を読む洞察力に優れ、人への底知れぬ愛情も感じられた。瞬時の対応力も抜群だ。「人は生きていくうえで助けとなるのは、失ったものではなく、手に入れたものです」という彼の言葉も心に響いた。
 神尾氏の的確な助言により、変貌を遂げていく女性たちもまた魅力的だった。1番印象に残っている場面は、『続・リノベの女』で訳あって他人に成りすましている末永奈々恵が、確執のあった母と再会する場面だ。マジシャンに変装して母にプレゼントを渡す触れ合いは、涙が出るほど感動的だった。母子の関係がこじれてしまった不幸が残念でならない。『査定する女』の陣内美菜が、セレブ男性からのプロポーズを断ってブロードウェイの女優めざして旅立っていく結末は、私の予想に反して意外だった。セレブ男性との結婚を夢見て婚活一筋だった彼女が、元は女優志望の努力家だったのだ。確かに自分の夢を追い努力を続けることは素晴らしい。また、その筋書きが予め仕組まれていたという、どんでん返しにも言葉を失った。