ともぐい | つましくても、ささやかな幸せ

つましくても、ささやかな幸せ

地位もお金も能力も無くても得られる、日々のささやかな幸せを記します。
内容は、映画・演劇・美術鑑賞&読書感想文&旅行記&趣味の手品&日々の出来事などです。

 

 明治時代に、北海道の山中で厳しい自然と獣に対峙した男の、壮絶な物語だった。
 人里離れた山中でただ一人、犬と暮らす猟師の熊爪は、自然の道理も獣の性質も知り尽くしていた。獣と格闘する狩猟シーンの描写が凄まじく、目の前で実際に体験しているような錯覚を覚えた。猟師が天職だった熊爪は、町で多くの人と関わる生活を苦手としていた。そんな熊爪が熊との格闘で腰の骨を折り、狩猟が思い通りにできなくなった時に、人生が暗転した。
 彼にとって猟師の仕事を捨て、町で生活することはそぐわないのかもしれない。でも、彼が愛した目の悪い妻陽子に殺される末路は、納得がいかなかった。あまりいい読後感ではなかった。
  せめてもの救いは、彼の愛犬が山の中で生き延び、次の主人と共に熊爪と暮らした懐かしい小屋を訪れたことだ。