オペラ「KAMIKAZE-神風-」を終えて | 小林沙羅オフィシャルブログ「小林沙羅のきまぐれ日記」Powered by Ameba

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ソプラノ歌手、小林沙羅のブログです。
出演する演奏会についての日記を中心に、忘れてしまいたくない大切な日々を綴っていきたいと思います。

昨日無事に、オペラ「KAMIKAZE-神風-」の

千秋楽の幕を閉じる事ができました!


今回のオペラは声楽的にも内容的にも、

とてもハードだったのと、

本番前に少し体調を崩してしまっていたので

不安もあったのですが、

本番3回、無事に歌いきる事ができ、ホッとしております。


この年末年始は大切な本番が続き、

体力と精神力、ぎりぎりの所で頑張って来ました。

ここで一度ウィーンに戻り、体調も生活も整えて、

3月7日のフルートとのジョイントコンサートや、

3月23日の東響交響楽団とのマーラー「嘆きの歌」などの

準備を落ち着いて整えたいと思います。


今回のオペラ、KAMIKAZEのお話を頂いてから、

約1年半、特攻隊の事、戦争の事を勉強して来ました。

私たちの祖父母の世代にあった事、つい最近のことなのに、

戦後に生まれた私たちは、実はあまり良く知らない。

学校でもちゃんと習っていない

今回のオペラ出演がきっかけで、

知らなかった事をたくさん知りました。


今回のオペラを見た事がきっかけで、

私のように、知らなかった事を知った、という若い人や、

戦争について、もう一度考え直そう、という人がいらしたら、

このオペラは成功なのだろうと思いました。


そして、今生きている私たちは、

たくさんの若かった特攻隊員の死を、

無駄死ににしてしまわないためにも、

平和を守り、この国の人々、そして世界中の人々が、

幸せに生きて行くために、

何を忘れず、

何を大切にして行くべきなのか、

今、こんな時だからこそ、もう一度、

見つめ直し、考え直す時なのだと思います。

それが特攻隊として死んでいった若者たちの魂を

本当の意味で弔う事になるのだと思います。


これは終演後に出演者みんなで撮った写真です。



小林沙羅のきまぐれ日記-kamikaze


上の写真になぜか神埼役のジョンさんがいないので、

ジョンさんと二人で撮った写真。

私は衣装も髪も取ってしまったあとですが(>_<)



小林沙羅のきまぐれ日記-kamikaze


今回のオペラは、

歌い手にとってはとてもハードでした。

とにかく音が高い。

そして、特に1幕冒頭、私の登場シーンは、

オケの音がものすごく大きい。


三枝さんは、歌い手にとって音が高くてきつい事も、

オケの音が大きくて歌が聞こえにくくなる事も、

わかった上で、それでもそう作曲されたそうです。


そして、言葉は客席に聞こえないだろうけどそれでいい。

字幕を出すからそれでわかったもらえればいい。

それより、テンポ感や、迫力を大事にしてほしい、と、

最初の稽古の時におっしゃいました。


なので、私は今回は高音部分(たくさん)

の言葉をはっきり発音する事は捨て、

声の響きの事と、表現とを優先させる事にしました。


VOICE SPACEでの活動や、隅田川、万葉集など、

日本語で歌をうたい、その言葉の美しさを客席に伝え、

その言葉の深さを表現する、

という事を大切にして来た私にとって、

日本語を客席に聴きとれるように歌い、伝える事を捨て去る、

という事は、かなり抵抗のある事でした。


でも、今回は、三枝さんのおっしゃる、

テンポ感、迫力を失わないようにし、そしてなおかつ、

ちゃんとしたいい発声で歌い、喉を守るためには、

これしか方法はないのだ、という所に、

試行錯誤の末、たどり着きました。


今回、初めて私が日本語で歌っているのを聴き、

小林沙羅の歌は何を言っているのか聴きとれない、

と思った方がたくさんいらしただろうな、

と思うと少し悔しいです。

でも、それも含めて、

今回の経験は、私にいろいろな事を教えてくれました。


心の底から愛子と同化していったこの数日間、

愛子を私の中で抱きしめたり、

少し突き放したり、手をつないだり、溶けあったり、

一回一回の本番で、その距離感を確かめながら、

歌い、演じました。

愛子の叫びが、悲しみが、強さが、その気持ちが、

どれだけお客様に伝わったか、

私には実際のところはわかりませんが、

精一杯このオペラに取り組む事ができて良かったです。


カーテンコールで、このお話のモデルになった、

穴澤少尉の婚約者、智恵子さんが、

舞台の上にあがって来て下さいました。

キャストにとっては完全にサプライズでした。


オペラでは知子は最後自殺して死んでしましますが、

実際には智恵子さんは戦後を生き抜き、

今も生きていらっしゃるのです。

その智恵子さんを見て、舞台上で涙が止まらなくなってしまいました。


穴澤少尉の思い、記憶を大切に胸にしまって、

智恵子さんは生きていらした。

その方が目の前にいる。

その感動。

それに様々な思いを抱えながらの本番が3日間、

無事に終わった事へのホッとする気持ち。

それが重なってあふれだして来ました。

舞台上を見ると、他にも泣いている人がたくさんいました。


オペラ「KAMIKAZE-神風-」、

賛否両論、様々な意見を寄せて頂いています。


私もいろいろ悩んだり、不安だったり、

納得いかない事があったりもしましたが、

それでも、

今回このオペラに出演できて、

そしてたくさんの方に見て頂く事ができて、

本当に良かったと思っております。


会場に足を運んで下さった皆様、

支えて下さった音楽スタッフ、舞台スタッフの皆さま、

制作に関わった皆さま、

そして三枝成彰さん、

どうもありがとうございました。


最後に打ち上げの様子です。

知子役の小川里美さん、

私のアリアと神埼、知子の二重唱、

知子のアリアの歌詞を書いて下さった大貫妙子さん、

作曲の三枝成彰さんと!^^



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