『地獄に墜ちた勇者ども』のパンフには「映画芸術」に掲載された三島由紀夫の言葉が | トラウマ日曜洋画劇場

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レンタルDVDもインターネットもなかったあの頃。インドア派の少年たちがオタクとかヒキコモリといった言葉で安易に総括されてしまうこともなかったあの時代。昭和キッズは夜な夜なテレビで放送される洋画番組をめちゃくちゃ楽しみにしていた……

先日、東京の編集さんから『トラウマ日曜洋画劇場』 の増刷が決まったと連絡もらいましたが、その際、参考資料として使った映画のパンフレットが要らなくなったので郵送しますとのありがたい言葉もいただきました。

数日後に届いた大量の渋いパンフは、懐かしいものばかりでした。写真はその一部ですが、『扉の影に誰かいる』や『アメリカンバイオレンス』など、映画は何度も見ているのにパンフは初見というものが多く、思わず読みふけってしまいました。


トラウマ日曜洋画劇場-70-80年代映画パンフレット

昔、アメリカにいたとき、毎日のように近所のショッピングモールの数ドルで見られるシネコンに通い、当時の新作『レイジング・ケイン』や『エイリアン3』や『パトリオット・ゲーム』などを見まくりましたが、売店を必死に探してもパンフレットが見つからず、ひどく残念だったことを思い出しました。映画のパンフ販売なんて日本だけの特殊な商売だって、その頃はほんとに知らなかったんですね……。

トラウマ日曜洋画劇場-地獄に堕ちた勇者ども-ルキノ・ビスコンティ

いただきものパンフの中には『地獄に墜ちた勇者ども』もあって、異彩を放っていました。宣伝文句にも凄みがあります。

「ナチスの手によって狂乱の時代の幕は上がった。巨大な鉄鋼財閥にむらがる権力とカネにとりつかれた黒い勇者らは、地獄への一本道をいっきにつきすすんでいく!」


トラウマ日曜洋画劇場-地獄に堕ちた勇者どもパンフレット-三島由紀夫

パンフの冒頭には、いきなり、「映画芸術」に掲載された三島由紀夫の言葉が抜粋されています。

「久々に傑作と云える映画を見た。生涯忘れがたい映画作品の一つになろう。この壮大にして暗鬱、耽美的にして醜怪、形容を絶するような高度の映画作品を見たあとでは、大抵の映画は歯ごたえのないものになってしまうに違いない」

ニューヨーク・タイムズなど雑誌の映画評がその後に続きますが、「ナチズム、近親相姦、同性愛、幼女強姦、退廃、権力の堕落、殺人……これぞルキノ・ビスコンティの映像力の勝利!」みたいな感じの文章ばかり。

パンフの中ほどには、顔写真つきで登場人物とキャストを紹介したページもあって、ストーリーをてっとり早く理解するのに便利そうでした。ウンベルト・オルシーニを「日本の平幹二郎的存在」と説明したり、シャーロット・ランプリングを「イギリスのフェイ・ダナウェイ」と紹介するなど、色あせたパンフレットも熟読するとへんてこな発見があります……。