『処刑軍団ザップ』も『溶解人間』も『ラビッド』も、見たのは大須東洋劇場だった | トラウマ日曜洋画劇場

トラウマ日曜洋画劇場

レンタルDVDもインターネットもなかったあの頃。インドア派の少年たちがオタクとかヒキコモリといった言葉で安易に総括されてしまうこともなかったあの時代。昭和キッズは夜な夜なテレビで放送される洋画番組をめちゃくちゃ楽しみにしていた……

30年以上前、名古屋に住んでいた僕が『ドラキュラ・ゾルタン』『処刑軍団ザップ』『溶解人間』という知的な3本立てを見た映画館は、大須東洋劇場だった。当時の色あせたビラもちゃんと手元に残っている。

トラウマ日曜洋画劇場-大須東洋劇場 名古屋

東洋劇場は、かつて名古屋の大須という場所にあった名画座。今でこそ大須は下北沢と秋葉原と浅草を足して3で割ったような活気のある街になっているが、昔はワンカップの似合うとっつぁんが昼間から道端でヨガの眠りに入っているような、しょぼくれたエリアだった。劇場自体も気の滅入るボロさで、伏見にある名宝シネマ、白川公園そばのシネマA、栄・松坂屋前のロマン座などと比べても、明らかに見劣りした。

トラウマ日曜洋画劇場-名古屋の名画座・大須東洋劇場

とはいえ、大須東洋劇場でもらってきたビラは、うなるほど力強く、ムダに迫力満点だ。支配人が趣味でつくったようなガリ版刷り(?)のチラシなのだが、ともかくグイグイきている。

トラウマ日曜洋画劇場-名古屋の名画座チラシ

たとえば、上映予定作品の紹介はこんな感じ(原文ママ)。



客席から恐怖の絶呼があがる!!

『処刑軍団ザップ』
腕が・足が・首が……すさまじい悲鳴と血しぶきを、あげて、ブッ飛ぶ!ニュージャージー州の北部で実際に起った、集団殺人事件をナマナマしく再現した。ドギモ抜く物凄い殺人行為のプロセス!<ザップ>とは「殺人」「殺人行為」の隠語!

『溶解人間』
あッ!人間が溶ける……身の毛もよだつドロドロの顔が暗闇の中から迫ってくる!心臓がとまるか!劇場から逃げ出すか!秒刻みのこの恐怖!

『ドラキュラ・ゾルタン』
世にも恐ろしい奇怪な事件が起った!静けさが闇をつつむ真夜中突然!獣が群れをなして、人々を襲う……今よみがえる、ドラキュラと忠犬ゾルタン!来るところまで来た極限の恐怖映画!

『コンボイ』
警察も軍隊も敵じゃない!相手はデッカイほどおもしろい!もう誰にも俺たちを止められない!

『スウォーム』
凶暴な異常体に変性した蜜蜂がアメリカ全土を地獄のるつぼと化す!メンバーは殺人蜂防衛撃滅作戦に立ち上がった!



叫び


開場時間―――朝九時五十分頃
とあるのも、アバウトでいい感じだが、さらに注目すべきは、このチラシの隅っこに並ぶ渋い広告たちだ。

安くておいしい大衆食堂 一ぜんめし大盛
赤門温泉西横入 朝7時より夜8時迄営業


楊貴妃の晩酌 (極秘)白乾児
大須モンテ街今池店 百老亭

喫茶軽食 パーラー・ムーミン
モーニングサービス11時迄
コーヒー・トースト・卵付き


連日オールナイト営業 サウナ・おーす
当劇場西え徒歩3分


喫茶&スナック デヅカ
カラーテレビ受像中


なんといっても、「一ぜんめし大盛」という直球ど真ん中の店名が圧巻!

名古屋の喫茶店文化、特にモーニングセットの過激なサービスは全国的に有名になったが、「モーニングサービス11時迄 コーヒー・トースト・卵付き」なんて書いてる広告もあるから、昭和50年代にはもうやっていたんだね。

「カラーテレビ受像中」と、なんだか得意げなスナックもすごい。いくらなんでもレトロすぎる。三丁目の夕日じゃないんだから……。これって、街頭テレビで力道山見てた我々の親の世代のノリだろ!

 

プレゼント

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