兵隊・抑留記(1) 近衛工兵聯隊に入る
皇紀二千六百年兵
☆ 1940年(昭和15年)夏の徴兵検査で《第一乙種》に合格した“俺”はその年の12月1日現役兵として近衛工兵聯隊(れんたい)に入隊した。
近衛工兵聯隊は省線電車(JR)で赤羽駅下車、駅の改札口は大宮方向右手である。
駅を出てからすぐに跨線橋を渡り大宮方面に向かって左手の高台への道を辿る。
途中左手に工兵第一聯隊があり、そこを通りすぎた奥、真っ直ぐ突き当たりが近衛工兵聯隊の営門と記憶する。
この日は晴れて風もなく冬の始めにしては暖かな日であった。
点呼が終わり、早速、軍服に着替える。支給された戦闘帽の徽章(きしょう)には、近衛兵の印(星の左右を月桂樹の葉が囲んでいる)はない。
いわゆる外地要員である。
襟章は(一つ星)、出来立ての陸軍二等兵である。
この年、昭和15年(皇紀2600年)に因んで、“俺”は自ら、皇紀2600年兵と称した。
脱ぎ替えた娑婆の衣服は風呂敷に包み、営門外で待つ家族(父)に渡した。
軍隊生活最初の面会時間である。
新兵のねぐらは、営内の柔剣道場であった。
つづく