(引用元:ミョンウの記事より)W杯アジア最終予選進出の可能性を残している北朝鮮(写真:つのだよしお/アフロ)
サッカー北朝鮮の協会関係者に聞く…平壌でW杯アジア予選ができない2つの大きな理由とは?
6月6日に行われるサッカー北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選の朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)代表対シリア代表の試合会場が、ラオスのニュー・ラオス・ナショナルスタジアムで開催されることが決まった。
これはシリアサッカー協会が18日に発表したもので、本来は北朝鮮のホーム・平壌での開催だったが、中立地で行われることになった。
個人的な心境では、とりあえず試合が開催されることにホッとしている。というのも3月に平壌で予定されていた同予選の日本戦は、ホーム開催ができなくなり、中立地の開催を模索していたところで急きょ中止となった。国際サッカー連盟は日本の勝利(3-0)扱いとして勝ち点3を与え、1万スイスフラン(約167万円)の罰金支払いを命じている。
中止の理由については、北朝鮮側から公式発表されていないが、日本での溶連菌やはしかなどの感染症を警戒してのことと聞いていた。
【参考】:【独占】北朝鮮代表コーチが語った森保ジャパンの弱点と中止の経緯「平壌決戦なら日本に勝つ自信もあった」
ただ、そうなると6月の2連戦、シリアとミャンマーをホームに迎えることができるのだろうかと懸念していた。海外から選手やスタッフ、メディアを平壌に入れることができないのであれば、あえて試合を放棄してする可能性もあるかもしれない――。そう思ったものだが、北朝鮮サッカー協会もここは早い段階で“中立地”の開催を決めていたのかもしれない。
平壌への定期便は飛んでいるが…
しかし、なぜいまだに平壌で試合ができないのか。北朝鮮のサッカー協会関係者に話を聞くとこう教えてくれた。
「一つは朝鮮国内で感染症対策がまだ続いていることが挙げられます。日本でも様々な感染症の流行が時期によってありますが、朝鮮でも同じのようです。感染症が流行している地域やその地域の人と接触した人たちは、まだ数日の隔離などの措置を取ってると聞いています」
さらにもう一つ、大きな理由があるという。
「定期航路の運行が正常化されていないので、これを理由に国際サッカー連盟(FIFA)、アジアサッカー連盟(AFC)が中立地での試合会場を指定したそうです」
平壌を発着する飛行機は航空会社「高麗航空」で、現在の定期便は主に中国の北京、ロシアのウラジオストクとなっているが、乗客人数によっては飛ばない日もあるとのことだ。
国際試合が行われる場合、選手やスタッフの移動はチャーター便の利用が主で、メディアやサポーターなど一般人は定期便を使って移動する。北朝鮮とシリアの両サッカー協会、さらにはFIFA、AFCの協議の下、国際試合の運営が総合的に難しいという判断に至ったのだろう。
もしかすると、シリア戦から5日後の6月11日に開催される北朝鮮対ミャンマーの試合も、移動や準備を考えると会場がラオスになる可能性が高いかもしれない。
シリア戦は中立地開催。選手たちは平壌で試合をしたかったはずだが…(写真:つのだよしお/アフロ)
日本に続いて北朝鮮の最終予選進出の条件は?
もっとも、ここで大事なのは北朝鮮が有利に試合を進められるのかどうか。平壌の金日成スタジアムでの開催であれば、コンディションの調整、そしてホームの大歓声の前で有利に試合を進められたのは言うまでもない。
中立地であれば、地の利を生かした試合はできないと思ったほうがいいだろう。逆にシリアにとっては大きなチャンスだ。各グループの上位2チームが最終予選に進むが、1位の日本は突破を決めた。残りは勝ち点「7」で2位のシリア、勝ち点「3」で3位の北朝鮮が最終予選進出をかけて争う。
北朝鮮は昨年11月に“ホーム”側のシリアと対戦しているが、この時もシリア情勢の悪化から中立地のサウジアラビア・ジッダで試合が行われている。結果は0-1で北朝鮮が敗れている。
FIFAランキングではシリアが89位、北朝鮮は118位。あまり参考にならない順位だが、実力的には五分五分といったところ。ここで分かりやすいのは、北朝鮮が最終予選進出する絶対条件は、シリアとミャンマーに勝利すること。その上で、シリアが同予選の最終戦(6月11日)で戦う日本を相手に引き分けか、敗北するのが条件となる。
次のシリア戦で北朝鮮は背水の陣の覚悟で、勝ち点3を取りに行くことだろう。