旅の記憶2 | 佐野光来

佐野光来

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  旅の前に詰め詰めで、仕事やら用事を入れまくってしまったので、前日の準備では間に合わないだろうなと目論んで、出発までの毎日を、少しずつ準備するような日々を送った。なにせとても緊張していたから、こんなに時間をかけて準備するのは初めてだったのだけれど、あれがあるといいな、これもあるといいな、は、一日一日よくもまあ思いつくものだった。仕事の帰りに、無印や百均に何度寄ったことか。そして旅二日前のパッキング事前練習にて、また新たに必要なものが見つかる(圧縮袋×4)。機内持ち込みできる小さなキャリーバッグで行くことにしたから、パッキングは困難を極めた。大きいので行けばいいだけのことなのだが、着いてすぐあの荷物レーンで寂しくなりたくなかったし、荷物少ないの、憧れてたし、空港を早く飛び出して少しでも長く滞在したかった。どれだけ時間をかけても充分すぎることなどないのだけれど、いい加減もう準備のこととか忘れたいと思い始めた。思うたび全く忘れられないことに、焦りさえ覚え始めていた。心配のあまり強いストレスが、身体を蝕みつつあるのだった。出発一日前に、喉が異常にいがいがしだした。「これ、少しでも気を緩めたら終わりだな」な、雰囲気を携え、どうにか気合いで出発の日を迎えた。