行政書士試験
「合格者の得点分布」
180点(11.1%)偏差値62.17
190点(6.86%)偏差値64.87
200点(3.96%)偏差値67.55
210点(2.14%)偏差値70.24
220点(1.09%)偏差値72.93
230点(0.52%)偏差値75.62
行政書士試験の総合点が、
「210点」以上の方は、
全体の約「2%」
「220点」以上の方は、
全体の約「1%」
しか存在しないことが分かります。
そのため、受験生全体の
「99%~98%」は、
この得点に達することはなく、可処分時間が少ない方が、(ここ数年の行政書士試験で)210点以上を得点することは困難を極めます。
なぜなら、偏差値にすると「70」以上となるため、
「点数を取り過ぎ」ている、
つまり、試験勉強に費やす
「時間が膨大」
「課題が大量」
であるケースが考えられるからです。
(この場合、試験勉強に費やす「時間が膨大」「課題が大量」であるケースの他に、数千人規模の受験生を必要とする例として、220点以上の合格者を「11名~20名」輩出するためには、計算上は分母数として、「1000人以上~2000人」の受験生数が必要となります。)
年度にもよりますが、得点分布から考えると、可処分時間が少ない社会人の方にとって、効率的な目標点は「196〜198点」ラインです。
(法学講座は、「合格者平均点」を目標としたカリキュラムを構成しています。)
なぜ、このように得点分布が分かるかというと、それは数学Bレベルで算出できるからです。
(切断正規分布の期待値の式自体は高校数学では扱いませんが、公式として与えられたら計算可能です。)
ここでは、受検者全体が平均値μ、標準偏差σの連続正規分布に従うと仮定してμとσを求めることにします。
(テストの点数は離散値なので、連続正規分布で扱うと不正確な部分が出てくるかもしれませんが、全体像をつかむのには十分だと考えます。)
未知数が2つなので、以下の試験結果から2つの独立した式を立てて解くことにします。
[1]
合格点180点(=Aとします)以上の割合は11.18%
[2]
合格点180点以上の受験者の平均値は198点
まず一つ目です。
μ + aσ = 180
という式において、180点以上が11.18%となるaを求めれば、一つ目の式ができます。
ここでa = (A - μ)/σ(今回はA=180)であり、Aが平均値μからσ何個分離れているかを表しています。
上位11.18%に入るための偏差値(μ=50, σ=10 → 50 + a×10)を求める、という問題になります。
正規分布の場合は、μやσに関係なく上位11.18%となるaは一意に定まるので、標準正規分布(μ=0, σ=1)の計算ツールでわかります。
上側累積確率0.1118(つまり180点から上側が11.18%)とすれば、パーセント点が1.217と求まります。
これがaになります。
つまり
μ + 1.217σ = 180 (式1)
偏差値でいうと
50 + 1.217×10 ≒ 62
次に、二つ目「180点以上の受験者の平均点が198点」を考えます。
これは切断正規分布の期待値を求める問題として扱えます。
切断正規分布とは、ある一定区間を切り出した正規分布のことです。
今回の場合は、受検者全体の正規分布から、180点以上の合格者の部分だけを切り出して考える、ということです。
A=180点以上で切り出した部分の期待値が198点のケースを考えることになります。
X≧Aにおける切断正規分布の期待値は、以下の式で与えられます。
E(X|X≧A) = μ + σ/R(a)
R(a) = [1 - Φ(a)]/φ(a)
ここでaは既出のa = (A - μ)/σ = 1.217、Φ(a)は標準正規分布N(0, 1)の累積分布関数、φ(a)は標準正規分布N(0, 1)の確率密度分布です。
E(X|X≧180) = 198なので、あとはR(a)を求めれば、μとσに関する二つ目の式ができます。
まずφ(a)ですが、これはa=1.217における標準正規分布の確率密度なので、
φ(1.217) = 0.1902
と求まります。
次に[1 - Φ(a)]ですが、Φ(1.217)は180点までの累積確率なので、[1 - Φ(a)]は180点以上の累積確率ということになります。
これは合格率と同じと考えられ、0.1118になります。
以上から,
E(X|X≧A) = μ + σ/R(a) = μ + 1.701σ = 198 (式2)
上記の(式1)と(式2)から、
μ = 134.7
σ = 37.2
が求まり、冒頭に示した「合格者の得点分布」が得られます。