斉藤徹 だから僕たちは、組織を変えていける | 花の本棚

花の本棚

読んだ本についての感想を載せています。
本を選ぶときの参考になれば幸いです

斉藤徹 「だから僕たちは、組織を変えていける」

職場改善へのモチベーションの上げ方、保ち方についての情報はないだろうかと探して気になったがこちらでした。

 

 

職場において「らしさ」と「人間性」を取り戻し、職場を改善する取り組みを進めよう、という内容になります。かなりふんわりとしていますが、現代社会では職場では本心を出さない方が得だという風潮が強いため「本心に従って活動できる職場」を目指しましょうと言っているようでした。

大項目と一言でのまとめは以下になります。

①時代と共に組織はどう変わったか

 かつてはお客様満足のために社員やモラルを犠牲にして良かったけど、現代では社員の幸せを考えているかが重要視になっているというお話

②これからの時代で組織に必要な人間関係と思考

 対話が最重要だと書かれている。メンバー同士で対話をするために必要なのが心理的安全性であり、それを形成するためには現代人の思考に着目するのが重要と主張している。

③思考と行動

 外から刺激を与える方法は色々あるが、そうすると人はどういったことを考え行動するのかというセクション。理想は関係性、自律性、有能感の欲求を満たすように刺激を与えることとのこと。

④変革を続けるには

 まず行動すること。賛同者がいなくても、成果が出なくても焦らずに継続しているとそのうち変革の動きがチーム全体に広まる。

 

このように本書ではマインド的な部分が多く書かれています。具体的に何をしたらいいかといったワークの紹介などはありませんので自己啓発本に近い印象です。ですが紹介されているマインドが現代で重要だと主張する根拠はちゃんとしているので胡散臭さや眉唾な感じはしませんでした。

個人的に面白いと思ったのは現代では「働く目的はお金です」はトレンドではないためモチベーションにならないというお話。サービス残業や仕事持ち帰りなどが淘汰されて「労働してお金を貰えるのは当たり前」になっているので、他の欲求でモチベーションを上げる必要があると言いたいのだろうと私は解釈しました。

 

作中に堂々と嘘が一つ書かれていたので紹介しましょう。本書によると組織内で嫌な人間として行動する人であっても、家に帰れば良心ある人間として生きている、という記載がありました。これは職場で本心を出さずに猫を被っている人について言及している章に書いてありました。お金のために職場で良い人を演じている、という逆なら説明はつきますがこちらは説明がまったくつかないので絶対に嘘です。

これでは感情論のみになってしまうのでもう少し書きましょう。良心があるなら隠しきれずどこかに出てしまうとか、他の同僚がいるのにわざわざ嫌な人の方に期待する必要はないとか色々とありますが、これらは些細なことです。

私が一番嫌なのはこんなくだらない天文学的な低確率を引き当てることに自身の運を使うことです。天文学的な低確率に膨大な運を使うのに、手に入るのは「嫌だと思っていた同僚が実は良心的だった」という不要な情報です。こんな割に合わない運試しするくらいなら最初から何もしない方か、その人が隕石に当たって死ぬことに運を使った方がマシです。

 

仕事に対してモチベーションが湧かず、何とかしたいとぼんやり思っている人におススメです。