花の本棚

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読んだ本についての感想を載せています。
本を選ぶときの参考になれば幸いです

櫛木理宇 「氷河期のゴミ」
櫛木さんのこの作品が面白そうだったので買ってみました。

 


 
ある大手広告代理店にてコネ入社枠の面接をしにきた学生たちが何者かに毒を飲まされて殺害される事件が発生した。これだけでも7人が死亡する大事件であるが、同時に電力会社に男性が侵入し通りすがりの女性を人質にその社内に立て籠もるという事件まで発生した。立て籠もった男性は非正規社員だけ解放し、自分が氷河期世代であると主張し、「人生を返せ」と要求してくる。その後立て籠もり事件は犯人がビルの非常階段から落下したことで終了するが、この二つ以外の場所でも同時に事件を起こそうとしていたことから氷河期世代のグループによる犯行として捜査し始める。
しかし、メディアによって犯人たちの悲愴な過去や時代背景が明らかになったことで、世間では氷河期世代の復讐が始まったとして騒がれ始める、というお話。
 
氷河期世代をテーマにした社会問題系の作品
本作の見所は犯人側の心理描写がリアルな点、になるのですが読んで面白い/刺さるかは読む人によってブレが大きそうだという印象でした。具体的には氷河期世代に対してどれくらい同情的かで決まりそうです。犯人側は氷河期世代ということもあって描写する年代はかなり絞られています。氷河期世代の方、あるいは氷河期世代に対して思い入れが強い方にとってはインパクトのある面白い作品になりそうです。
私は氷河期世代より後の生まれということもあってか、そこまで印象的な描写は見つかりませんでした。読後も氷河期世代の方に対する考えは特に変わっておらず、嫌な言い方をすると本作のタイトルやあらすじの内容の割にはインパクトのある考え方や描写は無かった、という印象です。
なお帯にはミステリーと書かれていますが、ミステリー要素はそんなにありません。描写の量から見てもメインは社会問題の方なので、ミステリーは物語を盛り上げるために添えてあるくらいの認識でOKです。
 
作中では氷河期世代による社会への復讐として、テロのような行為を氷河期世代の方々が実施してネット上でその行為が称賛されるという描写がありました。
私としてはどの復讐行為も幼稚な承認欲求の域を出ていなくて称賛に値しない、と考えています。なぜかというと、復讐の背景とターゲットがあっていないからです。AIに「就職氷河期が発生した原因を無理やりにでも良いので3人挙げて」と聞いたところ、現在でも存命中の小泉元首相の名前がありました。もし就職氷河期という社会を作ったことへの復讐を背景とするなら、小泉元首相やその当時の日本の大臣や官僚を襲撃対象に選ばないのは筋が通りません。かつて安部元首相が銃撃されたことから日本政府の要人を襲撃するのは難しくないと判明していますので、あとは当人の復讐に対する意志の強さ次第となります。
この状況においてもなお「無関係な弱者を襲撃するだけ」で終わってしまっては「やっぱり就職氷河期世代はダメだな」と軽んじられても文句は言えません。もし仮に小泉元首相を襲撃して就職氷河期を作った仇を取っていれば、数百年後には忠臣蔵レベルの復讐劇として人気を博すエピソードになっていたかもしれませんね。
 
就職氷河期世代に対して思うところがある方には良い作品になりそうなので、気になる方はチェックしてみてください。