creed

◎「クリード チャンプを継ぐ男」  ( 原題:CREED  )
監督  :ライアン・クーグラー    2015年 アメリカ
キャスト:マイケル・B・ジョーダン、シルベスター・スタローン、テッサ・トンプソン


シルヴェスター・スタローンの代表作『ロッキー』シリーズの新章となる人間ドラ

マが、「クリード チャンプを継ぐ男」。
スタローン演じるロッキーが、幾度も死闘を繰り広げたライバルであるアポロの

息子のトレーナーとなり、新たな夢に向かって歩み出す姿を描く。


今回はロッキーのライバルであったアポロの息子を演じるマイケル・B・ジョーダン
が主人公、しかし主役オーラは断然、シルベスター・スタローン。ぼくはマイケル

ではなく、画面でアポロの息子をトレーニングし、病気と闘うシルベスター・スタ

ローンを眼で追っていた。

69歳といえど、スターローンはまだまだカッコ良くて、年齢には負けないという事
を体で証明しているスターだ。


ところで、スターローンは意外な事に監督のライアン・クーグラーにこの役のオ

ファーを受けたときは、「やりたくなかった」と、インタビューに答えている。

スタローンは2012年7月に36歳だった息子セイジを心臓発作で亡くしている。

監督からオファーを受けた後だったため、「しばらく時間がかかった。本当にやり

たくなかった。たまらなく悲痛で辛いことだ。区切りがつかない。何の施しようも

ない」 と当時を振り返った。


しかし演技に救われたという。「演技というのは、演技することで解放されるとい

う素晴らしさがある。演技することで慰みを得ることが出来る」と語っている。


● 自分が主演することにこだわり
スターローンがロッキーシリーズの1作目の脚本を考えたときは30歳だった。
その当時は、彼は無名の売れない俳優でしかなかった。

身長も170センチで大きくはなく、顔が分娩時の事故で顔の右半分が麻痺して

いて、セリフが不明瞭、出演作は少なくポルノやゲテもの映画ばかりだった。


食うために動物園でライオンの檻掃除までしたという。貧しさのなかで妻は妊娠

した。出口の見えないどん底で、スターローンは「イージー・ライダー」(1969年)を

観た。三十路を迎えた売れない俳優二人が制作・脚本・監督・主演した低予算

映画が、いきなりハリウッドの大作を超えるヒット作となった事にスターローンは

奮い立った。


「オレに会う映画がないなのなら、自分で書けばいいんだ」
彼は、シナリオを書き始めた。書き上った脚本の数は30を超えた。次から次へ

と映画会社に送ったが梨のつぶてだった。


そんなとき、スターローンは、モハメド・アリと15ラウンド戦った無名の男のウェ

プナーの試合を観た。その興奮を逃さないように、その夜から彼はシナリオを
書き始めた。スターローンは三日三晩、一睡もせずに一気に「ロッキー」を書き
上げた。


スターローンは自分が主演することにこだわった。
ユナイテッド・アーティストの社長は「スタなんとかいう馬の骨の映画に金は出せ
ない」と冷たかった。「せいぜい百万ドルが限界だ」


MGMのプロデューサーであるウィンクラーとチャートフはスターローンに賭けて

みることにした。彼らは、自宅を抵当に入れて『ロッキー』の制作を開始した。

監督には、ポルノ出身で厳しい予算の制作に慣れたジョン・G・アヴィルドセンが

選ばれた。俳優には名のあるスターを一人も使えなかった。


この時点では全員、「低予算だが静かな感動を与える小品」としてしか考えてい

なかったという。
予想に反して大ヒットとなり、スターローンは、この1作で大スターとなった。

アメリカだけで製作費の百倍以上の1億二千万ドルを稼ぎだした。スターローン

は主演男優賞と脚本賞にノミネート。結局、作品賞など三部門を受賞し、ウィン

クラーはオスカーをつかんだ。彼は「本当に奇跡のような絶妙なタイミングだった」

と回想する。


と、いうような事情が町山智浩の「<映画の見方>がわかる本」に書かれている。


● 私がこの役を演じるべき
今回の映画『クリード』の話にもどるけど、アポロの息子の恋人役を演じたテッサ・

トンプソンも、笑顔が良くて眼が活きていて、忘れられない。
ライブハウスで体を揺らし歌う場面にしびれた。あまりに歌がうまいので、『歌は、

吹き替え?』と、疑ったのだが、本人が歌っている。


彼女はインタビューでこのように答えている。

「私はコート・ア・ゴーストというこのバンドに2年半ほど在籍しています。この作品の
オーディションを受けた時、監督はミュージシャンをキャスティングすることに興味

があると言っていました。


ならば私がこの役を演じるべきだと彼を説得し、少し経った後に彼の方から電話が

あり、作曲家やプロデューサーと一緒にスタジオに入って欲しいと依頼されたの

です。締め切りと戦いながらも、映画向けに楽曲を手掛けることは本当にユニーク

な挑戦でした。いくつかの場面で恐ろしくも感じ、また、とても楽しくもありました。」


テッサ・トンプソンの歌をもう一度、聞きたいので、もう一度劇場で観たいと思うほど

だ。


こうしてみると、やはりもう少し主人公に魅力があれば、とぼくは思う。体の筋肉は

いいんだけど、その体以上にこちらに訴えてくるものが今ひとつ弱い。周りを固め

る人がよかっただけに、残念。ということで、映画の評価は75点。
なお、MGMは映画『クリード チャンプを継ぐ男』の続編の公開を2017年11月に設定

している。


参照:映画 『クリード チャンプを継ぐ男』に出演のテッサ・トンプソンが作中で歌を披露
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