医薬品リスク管理計画(RMP : Risk Management Plan)がスタート(2013年4月通知)して10年。
2024年度「診療報酬」改定では、新たに、薬剤師による服薬指導でRMPに基づく説明資料を活用して必要な指導・情報提供を行うと、服薬管理指導料の加算があることが盛り込まれています。となると、2024年は、薬局でのRMPへの関心が高まることになりますね。
そこで、このRMPをテーマに取り上げ、3回に分けて、RMPについての知識の整理から山口大学病院時代に考案した「RMP概要シート」が業界標準となるまでをまとめます。
医薬品リスク管理計画(Risk Management Plan)とは
独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」ホームページでは,医薬品リスク管理計画(Risk Management Plan,以下,RMP)について,「(1)重要な関連性が明らか,又は疑われる副作用や不足情報,(2)市販後に実施される情報収集活動,(3)医療関係者への情報提供や使用条件の設定など医薬品のリスクを低減するための取り組みをまとめた文書」と書かれています。
RMPの提出が必要な医薬品は、2013年4月1日以降に製造販売承認申請された新規医薬品とバイオ後続品ですが、適応追加が行われた場合も含まれます。
また、追加のリスク最小化活動が実施されている先発医薬品の後発医薬品、さらに、イエローレターやブルーレター発出など市販後に新たな安全性の心配が生じたときもRMPの作成が必要となります。
最新の「RMP提出品目一覧」は、PMDAホームページで参照できます。
また、一覧での掲載が終了(→【参考】)したRMPも、「承認条件としてのRMPの策定・実施が解除された品目一覧」から参照で聴きます。
【参考】
承認条件としてRMPの策定・実施が求められている医薬品は、再審査等において、一般的には以下の観点から評価され、問題ないことが確認された場合、承認条件としてのRMPの策定・実施が解除されます。
①RMP記載のリスクやリスク最小化の資材情報が医療現場に十分浸透しているか
②新たな安全性の懸念がないか
③既存のリスクの発現状況に大幅な変化がないか
④不足情報について情報収集がされたか など
RMPの全体像を整理しよう
まず、次の図で、RMPの全体像をまとめました。
RMPは,基本的に,(1)安全性検討事項、(2)医薬品安全性監視計画と(3)リスク最小化計画という3つの部分から構成されています.このうち、(1)安全性検討事項は、さらに①重要な特定されたリスク、②重要な潜在的リスクと③重要な不足情報(情報不足による重要なリスクの3に細分化されています.
ここで,「重要な」という用語と「特定された」、「潜在的な」や「情報不足」という用語は,非常に大切です.
次の図で、(1)安全性検討事項についてまとめました。
ここで重要な点は、「リスク」は、事象名だけでなく、その「理由」が書かれている 点です。
続いて、(2)医薬品安全性監視計画について説明します。こちらは、①通常の安全性監視活動と②追加の安全性監視活動の2つに分けられます。
① 通常の安全性監視活動 : 具体的に、自発報告(副作用・感染症)、研究報告や外国措置報告からの安全性情報の収集のこと。
② 追加の安全性監視活動 : 具体的に、「市販直後調査(自発報告の収集強化)」と「製造販売後調査(都用成績調査、特定使用成績調査、製造販売後臨床試験)による安全性情報の収集のこと。
そして、(3)リスク最小化計画について説明します。こちらは、特定されたリスクを最小化するための医療機関と医療スタッフへの制限事項や患者教育・指導用資材をまとめています.なお、RMPに基づく資材には、「RMPマーク」が付いています。
RMP資材は、PMDAホームページから入手できる
2018年10月29日、厚生労働省から、医薬品審査管理課長と医薬安全対策課長
の連名で、RMPに基づいて作成された医療従事者と患者向けの資材をPMDAのウェブサイトに掲載することを製薬会社に求める通知(薬生薬審発1029第1号, 薬生発 1029第1号)が出されました。
これは、医療現場で「RMP資材」の活用を促すことが目的で、2019年4月1日以降に公表されるRMPを対象としています(3月31日以前に公表されたRMP資材は、4月1日~9月30日までに公表)。
RMP資材は、「RMP提出品目一覧」の右端の「添付文書・RNP資材等」の部分をクリックすることでアクセスできます。
例として、「アレセンサカプセル150mg(アレクチニブ塩酸塩、中外製薬)」の画面を示します。ここでは、「患者向医薬品ガイド」と「くすりのしおり」ともリンクしています。必要な資材の部分をクリックすることで、本文にアクセスして参照・ダウンロードができます。
このままでは、業務に使えない !! ・・・ と感じた
RMP公開第1号は、「スチバーガ®(レゴラフェニブ)錠」です。予想より早く、2013年4月に登場しました。
ただ、20数ページにわたる文字だけの文書を見て、「このままでは、とても業務に使えない」と感じました。
そこで、考案したのが、「RMP概要シート」です。次回は、山口大学病院勤務時代に取り組んだ「RMP概要シート」について紹介します。
※RMPに関する教育用動画も、PMDAホームページから参照できます。
必要な方は、こちらからアクセスしてくださいね。
余談ですが・・
2005年9月16日に、厚生労働省医薬食品局審査管理課長と厚生労働省医薬食品局安全対策課長の連名で、「医薬品安全性監視の計画について」という通知が出ています(薬食審査発第0916001号、薬食安発第0916001号)。
この通知では、「RMP」という用語は出てきませんが、医薬品の重要な特定リスク,潜在的リスク,承認時には検討されていない潜在的なリスク集団・その医薬品が使用される可能性のある状況等の重要な不足情報を要約する方法が書かれています。
当時、金沢大学病院「臨床試験管理センター」で、専任教員として臨床試験のマネジメントの仕事をしていました。背景が薬剤師なので “安全性情報” に関心を持っており、この通知のことを知っていました。それで、2013年に「スチバーガ錠」のPMP文書を見た時、「あの通知は、これだったんだ !! 」・・・と納得しました。