RMP公開第1号は、「スチバーガ®(レゴラフェニブ)錠」です。予想より早く、2013年4月に登場しました。ただ、20数ページにわたる文字だけの文書を見て、「このままでは、とても業務には使えない !!」と感じました。
 

 そこで、考案したのが、「RMP概要シート」です。今回は、その取り組みについて紹介します。


 

 「スチバーガ錠」の医薬品添付文書(2013年)では、「重大な副作用」として、手足症候群,中毒性表皮壊死融解症(TEN)など10事象、「その他の副作用」として、頭痛、回転性めまいなど56事象が記載されていました.

 一方、RMPでは、「重要な特定されたリスク」として6事象、「重要な潜在的リスク」として1事象が記載されています。「副作用(有害作用)」には重要性に差があるので、 “重要なリスク”に焦点を当てて観察することは,患者のリスクを最小化するために効果的 ・・・ だと思いました。

 

 また、薬剤部内で行う「新薬説明会」は、「RMPを基本にして行ってほしい」と製薬会社に要請しました。「臨床試験の成績、有効性に関する検討事項、治療上の位置づけ、重要な特定されたリスク、重要な潜在的リスク、重要な不足情報、安全性監視計画、リスク最小化活動などを中心に説明してもらうことで、薬剤師として「しなければならないこと」が明確になるからです。

 

 そして、2012年4月の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されたことに伴い、薬剤師の病棟業務の標準化ツールのひとつとして、RMPを活用しようと考えました。ただ、20数ページの文字だけのRMP文書を前にして、「このままでは、業務では使えないなぁ」と、頭を抱えました。

 

 そこで、思いついたのがRMPの内容をA用紙1枚にまとめた「RMP概要シート」フォーマットの作成です。

 さらに、当時、医薬品情報(DI)担当だった幸田恭治先生に、シート上の個々の項目・用語とRMP本文とリンク(紐づけ)できないものか・・・と相談しました。これは、「情報の階層化」の応用です。

 

 すぐに、幸田先生から「手持ちソフトウェアのPDF編集機能を使えばできます」と返事があり、試作品を見せてくれました。

 

 本人の話では、市販のソフトウェア(adobe-acrobat)を使えば、それ以上の経費はかからないし、編集作業もそれほど負担ではない・・・ということでした。

 それならと、新薬の院内採用時に、この「RMP概要シート」付きのRMPをPDF形式で提出していただくよう製薬会社にお願いすることにしました。

 

 2014年10月から、「薬のリスクから患者を守る !!」を合言葉に、PDF形式の「RMP概要シート付RMP文書」を活用し、重要な有害作用のモニタリングを週に1回行うことを始めました。その「RMP概要シート付RMP文書」ファイルは、DI担当者から薬剤師全員にメールで送信し、各薬剤師は iPad に保存する手順にしました。


 当時、山口大学病院では、「病棟薬剤業務実施加算」に対応するため、人員要求しながら、薬剤師の病棟業務を計画的に進めていました。そして、2014年9月から病棟薬剤業務実施加算の算定をスタートしました。病棟担当薬剤師には、業務用として iPad を1台ずつ持ってもらいました。

※人員要求の苦労は、こちらをご覧ください。

 

 また、臨床試験では確認できなかった「重要な未知のリスク」の早期発見も患者観察の重要なターゲットに設定しました。 

 

 そして、患者観察の記録は、医師や看護師と共有するため、電子カルテに記載することにしました。これも、DI担当の幸田先生が対応してくれました。


患者の安全性確保のために医薬品リスク管理計画(Risk Management Plan:RMP)を 薬剤師がどのように活用するか? −副作用シグナル検出システムの構築
幸田 恭治, 古川 裕之
医療の質・安全学会誌. 13 (2) : 123-129,2018

 

 これらの取り組みは、「薬事日報」の一面で紹介されました。そして、このアィディアを全国の薬剤師に利用してもらうことを目標にして、次の行動に移りました。

 それは、次回のコラムでご紹介します。

 

 

余談ですが・・・
 かごしま県民交流センター(鹿児島県)で、2014年7月12日~13日に開催された「第17回 日本医薬品情報学会 学術大会」のRMP に関するシンポジウムでのこと。

 会場での当事者意識の乏しい議論に腹が立って、「心構えではなく、問題解決のための具体的行動が必要 !!」と発言しました。
 その後、何人かの方から、「鹿児島で、桜島のように “噴火” したらしいですね」と言われました。会場のどなたかが、SNSで「古川の“噴火”」を発信してくださったようです 
(恐るべし、SNS !!)