サボテンを見ると、何故か父親を思い出す。
頑固で無口で尖がっていて
砂漠の中でもしぶとく生き抜くたくましさがある。
そんな父親だ。
偏屈で近所付き合いも悪く、
大酒飲みで酔っ払うと大ボラを吹き
喧嘩をしては仕事を辞め
おかげで我が家はいつも貧乏だった。
しかしそんな父親のことが私は大好きだった。
サッカーを教えてくれたのも、
映画を好きになったのも、
数学が得意だったのも、
全部父親の影響だ。
そして家族への愛情を教えてくれたのも父だ。
こんなことがあった。
私は16歳のとき、愚れていて悪い友達と付き合っていた。
バイト先のレストランが終わった後
夜な夜な友達とレストランに侵入し、
ドンチャン騒ぎを繰り返していた。
後日それは発覚し大問題になり、それぞれの親が呼び出された。
父親の車に乗せられレストランに向かう途中
「退学は覚悟しておけ」と一言だけ言った。
レストランに着いて、謝るのかと思いきや
「店長出て来い!」といきなり怒鳴り始めた。
周りのお客さんはビックリしている。
「うちの息子が何したか知らんが、通報して退学でも何でも勝手にしろ!
その代わり未成年者を夜10時以降働かせた罪で訴えて
この店潰してやる!」
猛烈な勢いで喧嘩を吹っかけたのだ!
店長は困惑し、ニガ虫を潰したような顔をして、ついには
「もういいから帰ってくれ!二度と来ないでくれ!」と言った。
めちゃくちゃな話だ。
道理も何もあったもんじゃない。
しかし私は感じていた。
この人は、命がけで家族を守ろうとしている。
めちゃくちゃかもしれないけど全力で守ろうとしている。
帰りの車のなかで「もう母ちゃん泣かすなよ」
の一言が強烈に響いた。
そんな棘だらけの父も今では
去年大病をしてすっかり元気を無くした母に寄り添う
穏やかな優しいおじいちゃんになっていた。
久しぶりに帰った実家のベランダに
二人が育てているサボテンが
秋の陽だまりのなかで微笑んでいた。