先月、売り上げ見込みの数字として「イールド値」について紹介しました。(参照:2015-10-06 イールド値)
私はこの数字を使って経理・管理部門と話をします。
しかし、この際に注意が必要です。
それはえてして数字は独り歩きをしてしまいます。そして、営業部門の考えや戦略や思惑が無視されて数字だけでの議論が、経理・管理部門で行われます。
イールド値はそのつもりで作っているものですから、それはそれでいいのですが。
ここでよく生じる問題は、そのイールド値が目標よりも低い場合に「改善プランを出せ」とかを営業部門に行ってくることがあることです。
なるほど目標の半分もいかないようでは、確かに必要でしょう。
あるいは期末も近いのに目標に到達しない見込みであるならば、それもやむをえないでしょう。
しかし、期初の段階で目標の90%あるのならば、第三者(経理・管理部門など)が口を挟むような問題ではありません。
1年半前に書きましたが、序盤の段階と終盤の段階では心構えは違います。(参照:2014-03-30 段階ごとの心構え)
同じように数字の精度や誤差についても違ってきます。
以前にも書いた譬えですが、ゴルフで言えば序盤はドライバーショット、終盤はパットだと言えます。
2メートルのパットが10センチ左右にぶれればカップインせず1打損します。それに対してドライバーは200ヤード先で10ヤード曲がっても1打の損にはなりません。お気づきのようにどちらも比率は同じです。
でも終盤の方が誤差の影響は大きいわけです。
ですから物事の初めの段階から小さな誤差をことさら大きく取り上げてしまうことは萎縮のもとです。
ティーショットをアイアンで打とうとするようなものです。それでは初心者ならともかく、プロにはなれませんね。
ですから営業の管理者はこのあたりのことを普段からよく経理・管理部門に理解してもらう努力が必要です。
ところでこのような話を経理・管理部門にもっていくと次のような答えが返ってきます。
「銀行では1円でも違えば全員が残業して一から調べなおす。お金についてはそれだけ厳密に行わなければいけない。」と。
ここで彼らのよく犯す大きな勘違いがあります。
「実績」と「予測(見込み)」です。
銀行が1円合わないのは実績の問題です。
実績については誤差などがあってはいけません。厳密に1円単位で把握管理されなくてはいけません。
しかし、今論じているのは「見込み」です。見みとは未来のことです。結果は神のみぞ知ることです。当然誤差というものが生じます。
この二つを混同して話し合いをすると、すれ違いが生じます。そしてお金の話ですからえてして経理・管理部門の言い分が通ります。
そして序盤の段階から細かいことをくちゃくちゃと言われ、ティーショットにアイアンを使わされる羽目になります。
営業の管理職がしっかりしていないと、それは直接部下の営業に影響が及びます。
ティーショットにアイアンを使わされてはいくらプロでもバーディーを取るのは難しくなります。
ですから営業の管理職は普段から経理・管理部門と密にコミュニケーションをとり、上記のような考えを啓蒙しておく必要があります。
まちがっても経理・管理部門の言い分をそのまま受け入れて部下の営業に落とすことがないようにしてください。
それが、営業はもとよりひいては会社のためにもなるのです。