お正月あけに、大阪の国立文楽劇場の初春公演の第2部「新薄雪物語」を見ました。

 

珍しい演目で、歌舞伎でニザさまで見たことがありますが、文楽では28年ぶりの上演だそうです。役者がそろわないとできない大物演目と言われていて、気合を入れて劇場に。ですが、わりとお話がご都合主義で、ウエルメイド系な印象でした。

 

初日あけ間もなくて、幕開けの清水寺の段はドタバタしていました。ツメ人形と奴妻平の大立ち回りがあったのですが、全然そろってなかったです。一輔さんのアクション系立ち役が珍しい見ものでした。

 

あまりやらない作品だとまとまるまで時間がかかるのかなとユルく見ていたのですが、眼目の園部兵衛屋敷の段は、すばらしい完成度でした。三味線富助に、千歳太夫がきらめくような名演。緊張感のある展開に、クライマックスの笑いまで、あれよあれよと観客をもっていきました。

 

この3人がいるから企画したのであろう、園部兵衛の玉男さん、お梅の方の和生さん、幸﨑伊賀守の勘十郎さん。紀尾井ホールの3人の会で、なかなかちょうどいい演目がない、というような話がでていましたが、これがあったか~という。千歳太夫と、人形3人のバランスが絶妙でした。

 

お梅の方が大役で、和生さんの片はずしものにまた名品がラインアップというか。薄雪姫と仲良しなのも素敵、訪ねてくる伊賀守を迎える緊張感も美しいし、しどころ見どころいっぱいでした。あとやっぱり、千歳太夫だと語りと人形のお芝居がぴったり合っていました。

 

いまの文楽、人形で揃うと嬉しいトリオ、がいてよかったです。いつもはそれぞれの演目の責任者S、になっていますが、また、3人の役どころの違いも絶妙というか。ここに玉志さんなど豪華配役で、新春大盤振る舞いな第2部でした。腰元籬の勘次郎さんもよかった~。

 

あと、太夫陣が急にまとまってきたというか、新人さんがいきなり充実していて、中堅も目がさめたような感じです。三味線がちょっとばたばたしているかな、こういうイキオイの違いみたいなのは、舞台を見ていて面白いですね。

 

文楽は東京の本拠地が閉まって試練の時期なのですが、大阪で見るとやはりこちらが本場、なんですよね。客席も肩の力を抜いて楽しんでいる雰囲気で、憧れます。新年からよい舞台を見られてなによりでした🥰





 

新国立劇場バレエ団のタケット版「くるみ割り人形」、年をまたいで1月4日に千秋楽で、18公演全部チケット完売だったそうです。チケット状況は出だしはまったりで、ヤング割引も発表されたりしていたのですが、開幕が近づいたら動き出して、初日があいたら加速度ついてました。年末年始の新国立劇場はそういうわけで、華やかに装った方も多くてにぎわっていました。

 

バレエを観る人が増えたというか、カルチャーイベントの一角にバレエが入ってきたんですよねきっと。新年までまたがる公演に、今回の新くるみは明るくてよく合っていて、舞台も客席もトータルでめでたい感じでした。

 

米沢唯さんと渡邊峻郁さんを4回見て、27日夜は木村優里さんと速水渉悟さん、3日夜は小野絢子さんと李明賢さんの組も見ました。どちらも華やかで素敵でした~、木村速水組はパワーカップル、小野さんと李さんは、ベテランがリードするデビューの王子という以上に、おふたりの踊りの質感とか、表現の志向とか、いろいろな要素が良く合っていて魅力爆発でした。

 

「くるみ割り人形」の改訂演出、新解釈はもう無法地帯というか、比べるのも諦めましたが、日本のバレエの初期のころはソ連のバージョンが主流でした。はじめてピーター・ライト版を見たときは新鮮でした。新国はスタートがワイノーネン版で、珍作(すいません)牧阿佐美版を経て、イーグリングにタケットと、ロシア系から英国化したのは、自分のくるみ歴とわりとかぶっているというか。

 

ウェイン・イーグリングさんもウィル・タケットさんも、ピーター・ライト版で育って外せないものがあるのですよねきっと。新国バージョンの場合、どちらもパ・ド・ドゥを踊る王子のダンサーが1幕冒頭から出ているのは、劇場がわの要望だったのでしょうか?

 

ライト版では、ドロッセルマイヤーが人形に変えられた「甥」を助けようとしてクララに接触するお話が原作どおりに展開するんですが、イーグリング版は人形に変えられたはずの「甥」が一緒にクリスマスパーティーに出ているんですよね。今回タケット版は、それじゃおかしいということで「助手」になったんでしょうか、結果ますますわからないことになっているのでは。

 

振付はだいたいつまらないですが、花のワルツはソリストナンバーとしては動きも難しいし、よかったです。あと、王子のヴァリエーションは音楽の速度が倍になったかわりにくりかえしがついて、踊りの分量が増えました。古典のなかでもくるみ王子のソロが一番短いので、この変更はよかったです、テクニックいっぱい見られます。

 

というわけで新年、今年もよろしくお願いします。見にきていただきまして、とても感謝しております🥰

新国立劇場バレエの「くるみ割り人形」は年末から年始の公演に向かいますが、米沢唯・渡邊峻郁ペアは28日の公演で出番コンプリートでした。9日間で4回登場というつめこみ日程で、無事見られてよかったんですがちょっと寂しい年末。

 

今年の峻郁さんのおっかけといえば、なんといってもロンドン公演でした。吉田都さんの、ロイヤル・バレエのさよなら公演以来、10年以上ぶりのコヴェント・ガーデンへ。

 

今だから言えるというか、ホテルが偶然、バレエ団の方たちと同じでした。気付かずにチェックインして、翌朝ロビーに出たらバレエ団のみなさまがいてびっくり。朝食会場で舞台の話をしているのが聞こえました。まじめそうでとても感じがよくて、その上男女とも美しい方ばかりでした。

 

カーテンコールの峻郁さんに、お友達と一緒にお花を差し入れたのも、いい思い出でした。花屋さんで大きな花束を買って、ロイヤルオペラの楽屋口の方にお願いしたら、ちゃんと舞台で渡してもらえるのですよね。舞台も素晴らしかったし、お花を持った峻郁さんがなんだかあわてていましたが、そんな様子を見るのもめったにできない経験でした。

 

年明けは、これが見納めになるとは知らなかったイーグリング版「くるみ割り人形」、そのあとの「バレエ・コフレ」は物凄いフォーサイスでした。「精密さのための目眩めくスリル」の超絶技巧が爆発してました。もともと演技力のある峻郁さんですが、この作品のあとは、表現をテクニックにのせるのがいっそう巧みになったのでは。

 

「ジゼル」はアルブレヒトの色悪なのが素敵で、「不思議の国のアリス」は、どうでもいい役になりがちなジャックで、きっちりキャラクターを描いてみせたのがさすがでした。踊りもよくて、クリストファー・ウィールドンの振付と相性がいいんですよね、たぶん。アリスのあとで作られた「冬物語」も見てみたいような気持が。あまり日本ではウケないでしょうけど、なにげに今の新国だと配役できそうじゃないでしょうか。

 

ロンドンの前の「YOUNG NBJ GALA2025」では福田圭吾さんの新作でマッドサイエンティストを。こういう役がとことんできるダンサーで容姿もぴったり、ってなかなかいないです。夏は「シェヘラザード」の再演もありました。木村優里さんと渡邊峻郁さんのコンビ的には、ジゼルから王妃と奴隷に、表現のスケールもひとまわり大きくなって、美しさもど迫力なレベルでした。

 

米沢唯さんとは、「シンデレラ」でシーズンの初日をかざって、「くるみ割り人形」も新制作のファーストキャストでした。端正なテクニックからいきなり冒険スタイルになったり、今面白いおふたりなのですよね。なにを踊ってもいいんですが、超コンテンポラリーで組むのが見たいかも。

「シンデレラ」は柴山紗帆さんとの舞台もきらめきの逸品でした。

 

ずっと安定の顔ぶれだった新国立劇場バレエ団が、ちょっとずつ動きはじめてきた一年でした。峻郁さんの踊る場面も、以前とは違うところになってくるのかも。

 

というわけで今年でかけた峻郁さんの舞台は34回でした。よい一年でした🥰

 

新国立劇場バレエ団の新制作「くるみ割り人形」の幕があいて、米沢唯・渡邊峻郁・福岡雄大組で3回続けて観ました。

 

何度も見ると慣れるし、なんといっても峻郁さんが出ていれば時間の経過も違うしで、ゆらめく新バージョンの評価。とりあえず、楽しんで見ている方が多いのではないかと思う、客席の雰囲気ではあります。

 

くるみ割り王子の男性ダンサーは、最初はドロッセルマイヤーの助手として出てきて、プレゼントを運んだりマジックのお手伝いをしています。えんじ色のフロックコート姿なのですが、夜のパーティーには合わないですよね、よく見ると、助手以外の男性はみんな、燕尾スタイルの、前が短くてテールが長い上着なんですよねー、使用人も黒燕尾。助手はひとりだけ格の違う服装をしているのは、役どころをはっきりわからせるための設定のうちなのでしょうか。

 

そういうわけで、シュタルバウム家のたかふみ助手は、立ち方もかしこまっていたり、とても控えめに動いています。ドロッセルマイヤーがコスプレ魔術師になっているので、それに合わせて営業用?ななにかを着ていてもよかったのでは。ただ、今回の服装を見たらこの青年がどういう階級の人かがひとめでわかりますよね。

 

そういう前提から、くるみ割り王子の赤い軍服姿、紫の軍服で踊るグラン・パ・ド・ドゥと、キャラクターとして一貫性があるのか、なかなか微妙なところかも。夢の中なので思い切り変身してしまってもよいのか、今回の峻郁版は、最初の庶民のお兄さんの雰囲気はちょっと残しているように見えました。

 

25日のグラン・パ・ド・ドゥはアダージオの大胆な妙技から、峻郁さんが好調で、跳んで回るのもただテクニックだけではない、気持ちの入った表現になっていて圧倒的でした。そして唯さんがチェレスタにのって、矯めて引き延ばしてからスピーディーに締める、自在な踊りが女王の貫録、コーダもふたりの「やりとり」になっていて、古典パ・ド・ドゥの究極にして、それを超えたなにか、さえ感じさせました。スゴカッタワー

 

雄大さんのドロッセルマイヤーはどこまでやっていいのか、見極めがついたのか?舞台に君臨して、トリオですごいくるみ割り、でした。あと、助手に過保護でした、スキンシップ多め。

 

ドイツの幻想文学を、ロシアの帝室劇場がチャイコフスキーでバレエ化した作品という国籍横断な「くるみ割り人形」ですが、タケット版はどうも、とことん英国阪といえるというか。冒頭に歌う子供達の赤に白いガウンの服装も、英国聖公会の聖歌隊ですよね。フリッツもハリー・ポッターみたいでした。

 

そんな新制作くるみを実力でねじふせたクリスマス公演、いやーよかったです🥰





 

12月20日に彩の国さいたま芸術劇場で、Noism0+Noism1による「マレビトの歌」を見ました。

 

2023年に野外劇場で初演した、金森穣さんの1時間の新作でした。

 

音楽が全編アルヴォ・ペルトなのですが、ペルトの曲は近年モダン、コンテンポラリー作品の大ヒットもので、「鏡の中の鏡」など色々なダンスで使われていて、またこれか、と思うくらいにはなじんでいます。そのつもりだったのですが、ペルト作品、曲によってはすごく苦手なことがわかりました。

 

音を保って、エモーショナルにつなげていくのを待つあいだに、気持ちがそれてしまうのですよね。自然が脈うつスケールとかそういうのに乗り切れないのでしょうか。舞台が始まってすぐ、音楽が入ってこなくて、困って焦りました。

 

金森穣さんと井関佐和子さんの生き物として、ふたつの区別がつかないようなデュエットからはじまる贅沢さで、10人のNoism1のダンサーたちの動きの精度もすさまじかったです。ノイズムの人だ、とひと目でわかるメソッドがつきつめられてここまで来ているのかと。頭までフードで隠されたダンサーたちは、踊りに奉仕していて、男女の区別もわからないほどでした。

 

折口信夫の「マレビト」の概念を写し取ったら、まさにこの舞台になるのでしょう。暗闇のなかの神事に参加しているようでした。日本の、深い山の信仰を舞踊化したらこうなるのでしょう。スゴさを味わいつつ、流れるアルヴォ・ペルトがどうーしてもダメでした。シベリウスが苦手なんですが、ペルトも苦手グループになってしまったかも。

 

というわけでちょっと複雑な気持ちで見た舞台でした。最終兵器が井関佐和子さんなのも当然すぎるのですが、ほかのかたちも見てみたいな、とも思いました。