6月20日の昼、彩の国さいたま芸術劇場でローザス、アトラファイブによる「和声と創意の試み」を見ました。振付はアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルと、ラドワン・ムリジガ。

 

音楽はアントニオ・ヴィヴァルディの「四季」ですが録音の上演で、アマンディーヌ・ベイエのヴァイオリンとリ・インコーニティの既成の音源だったようです。

 

ローザスの「ブランデンブルク協奏曲」は映像がありますが、アマンディーヌ・ベイエの立奏がかっこいいんですよね~ こちらはビー・ロック・オーケストラとの共演でした。リ・インコーニティとアマンディーヌ・ベイエはこの秋に来日公演があるようです。

 

事前にパンフレットを真面目に読んでから、見ました。アスマー・ジャマの詩「We,the salvage」翻訳が載っていたので、幕が開く前に読みました。舞台の終盤でこの詩は読み上げられましたが、ヴィヴァルディの音楽にのって、花が咲いたりスケートを楽しんだりしているのは、焼け野原で見る夢なのでしょうか。

 

ダンサーは4人、ボシュチャン・アントニッチ、ナシーム・バダク、ラヴ・クルンチェヴィッチ、ホセ・パウロ・ドス・サントス。ブレイクダンス、ストリートダンスの要素も入りつつ、やっぱりキモの総踊りとかかっこよかったです。バロックヴァイオリンでがしがしと弾きまくる「四季」を堪能しました。四季以外にカデンツなプレリュードふうの曲もありましたが、とくに記載はなかったですが、踊りにとても映えますね、即興的な動きによく合っていました。

 

ナマ演奏ではなかったですが、チェンバロの音は普通こんなに聞こえないですよね💦 計算された音響で、ディストピアな「四季」に相応しかったです。

 

パンフレットのインタビューで、ケースマイケルさんが「楽譜や音楽分析を重視する」と言っていて、やはりそっちなんですね~ 楽譜派と抒情派と、振付家はわかれている気がするんですよね、自分は楽譜派の方が好きみたいです。





水曜日の午後、新宿文化センターで「ルジマトフ JAPAN FINAL」を見ました。東京公演は3回あったのですけど、2日め、6月17日14:00の部です。

 

出演者はファルフ・ルジマトフ、デニス・ロヂキン、ニキータ・チェトヴェリコフ、千野円句、ダレル・ルジマトフの男性陣と、イリーナ・ペレン、アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ、クセニア・シェフツォーワ、エレノワ・セヴェナルドの女性陣。ボリショイやミハイロフスキー、円熟から超フレッシュまで、不思議とバランスのいいガラでした。

 

ルジマトフさまの「王は踊る」は、ニコライ・アンドロソフの振付作品。映画「王は踊る」をヒントに作ったそうで、太陽王の衣装にリュリの曲で踊ります。

 

映画の「王は踊る」は、病気なリュリがモリエールとぐちぐち言ってる場面が長すぎで、バレエのシーンもイマイチで、あまり好きじゃなかったのですよね。せっかくルイ14世なのにもったいなかったんですが、ルジさまのこの新作にコレダーと思いました。

 

ラモーやリュリなどのフランス・バロックの曲は、拍子やフレーズが独特で、バレエ音楽として作られたのに、バレエに乗せにくかったりするんですよね。そのへんがすごく上手にできてたし、クラシックバレエの基礎の動きと、モダンな心象をあらわす動きの組合せがうまくて、激しく大きな王様ぶりでした。

 

そんなに動くわけじゃない💦んですが、手先の動きや腕の角度の違いだけでも見ごたえがありました。腕の動きが、外に出るだけじゃなくて、内側に引きこんでいくんですよね~、これはルジさまじゃないとできないし、振付のアンドロソフさんがすごく上手に活かしていました。

 

凄く面白かったし、ルジさまはいい振付家と出会っていたのだなと安心しました。アンドロソフ作品は、フィナーレの「ボレロ」も、ルジさまが普通に天人に見えるし、ただ突っ走るのではなくて、ちょっとヌキのある振付がとてもよかったです。アンドロソフさん、凄い多作な振付家さんみたいなんですが、ルジマトフとは双方向的な創作ができていそうでした。

 

お母様の舞台を見たことがある、千野円句さんはシェヘラザードと海賊で。ルジさまの息子さんのダレルさんは海賊と、ソロの「追憶」で。超若い世代の踊りはまだ大らかなスキマもありましたけど、まっすぐだし、基本の強さが爽やか。

 

ボリショイのカップル、エレオノーワ・セヴェナルドとデニス・ロヂキンは「カルメン」と「ドン・キホーテ」ロヂキンさんのうまい踊りこなしがさすが。セヴェナルドさんは今回一番惹かれたバレリーナさんでした。

 

セヴェナルドさん、あの伝説のプリマクシェシンスカヤの血をひくということで、期待だったのにマリインスキーには行かずボリショイに入ったのですよね。で、なんかすぐにロヂキンさんのパートナーになって、当時目にした映像だとわりともったり💦 どうなるのかと思っていたら、テクニック満開の美形プリマとして登場して、変化ぶりにびっくりでした。

 

カルメンもかっこよかったし、ドン・キホーテで、大きめの扇子を拡げたり閉じたり、そのタイミングのいいこと。どの回転も最後までくるくるときれいに回って万全でした。ロシアのダンサーさん、見ていないうちに充実していたんですねー。

 

ルジさまは63歳。驚異の肉体で話題でしたが、仁左衛門さまで慣れているので、そこまで驚かなかったです。ニザさまは80歳、60代のころとか若かったよねという💦 細身の方は年をとっても可動範囲が広いままなのかも。

 

当日のプログラム↓

順番はシェヘラザード→ラ・バヤデール→カルメン組曲→王は踊る→海賊

休憩をはさんで、牧神の午後→ジゼル→追憶→ドン・キホーテ→ボレロ、でした。

ロシア系ダンサーの強靭な手足も楽しみました♪

 

「王は踊る」N.アンドロソフ振付 F.ルジマトフほか
「牧神の午後」F.ルジマトフ改訂振付 F.ルジマトフ&ペレン
「ボレロ」N.アンドロソフ振付 ★追加 F.ルジマトフ
「カルメン組曲」より セヴェナルド&ロヂキン
「ドン・キホーテ」よりグラン・パ・ド・ドゥ セヴェナルド&ロヂキン
「ジゼル」よりパ・ド・ドゥ ヴォロンツォーワ&チェトヴェリコフ
「ラ・バヤデール」第3幕よりアダージョ ヴォロンツォーワ&チェトヴェリコフ
「海賊」よりグラン・パ・ド・トロワ シェフツォーワ&千野&D.ルジマトフ
「シェヘラザード」より ペレン&千野
「追憶」N.アンドロソフ振付 ★追加 D.ルジマトフ





新国の「白鳥の湖」、13日の土曜日は直塚美穂さんと渡邊峻郁さんの主演でした。美穂さんはオデット&オディールデビュー。峻郁さんは3年前に続いて、デビューの白鳥姫を無事に羽ばたかせるお役目に。

 

美穂さん峻郁さんはフォーサイスやドウソンの作品で共演していて、超絶伸び縮みして踊りまくる演目には欠かせません。「アラジン」のルビーのデュエットも色っぽくてよかった。

 

そんなおふたりの「白鳥の湖」は、踊る空間が少しずつはみ出していくようでダイナミック。2幕のアダージオは、動けるところは最大限に活かしてかたちの見せ場を作って、オデット姫が王子さまに心を開くまでを、決まった振付のなかで巧みに表現していて、寝る人も多いこの場面(すいません)で客席の集中力も高くて、大喝采になりました。

 

ロシア派の白鳥が好きなので期待していた直塚美穂さんの白鳥でしたが、伸びやかなラインに峻郁さんの万全なサポートと、きめ細かいストーリーづけがあって、たいへん魅力なデビューでした。劇場中が沸き立っていました。

 

ライト版のもうけ役、ベンノは中島瑞生さん。ジークフリード峻郁王子と並ぶと絵になりすぎ、パ・ド・トロワのコーダは一緒に踊りますが、長身のふたりがキレイに揃って跳ぶと、日本のバレエもここまで来たかというゴージャスなラインです。美貌な男同士が細かいお芝居をしているの、たいへんな特典です、ライト卿こんな設定作ってくださってありがとう~

 

峻郁さんの王子は、とくに前半、思い悩んでいる姿が美しかったです。表現が充実していると、表情がよくなって、美形が映えるんですよね。踊りも抜群で、高いジャンプが頂点でとまる瞬間のかっこいいこと、例の32回転に続く王子のピルエットは足のラインもスピードも見事、オマケにくるくる回るところは10年ファンやっていて一番、と思うくらい回転してました。

 

ずっと待った上に、この1回だけの出番な主演コンビでただの観客なのに緊張してしまいましたが、王子さまの完成度と、新しい白鳥姫の新鮮さで、たいへん万全な舞台でした。新国のみなさんも、よかった人の名前をあげていくと煩雑すぎるくらい、皆さん充実してました。ポピュラー演目「白鳥の湖」はやはり人気で、全席売り切れになる日が続出してました。また、あいだを開けない近いうちに上演してほしいです~








 

 

今シーズンの「白鳥の湖」、渡邊峻郁さんの王子さまはシングル登板で、えーなぜーとちょっと意欲をそがれているのですが、開幕最初の日曜日の公演を見ました。

 

オデット・オディールが吉田朱里さん。2023年に白鳥姫としてはデビュー済ですが、このときは木村優里さんの代役でした。今回は最初から配役されていますので、実質初主演かも。

 

朱里さんは今年2月のバレエ・コフレを休演してから、「ライモンダ」では舞台には出ていたものの、ドレスの貴婦人役で、エデューケーショナル・プログラムの「白鳥の湖」も降板しました。6月のオデットとオディールはどうなるのか、心配していたのですが、よかったでした~。

 

朱里さんの踊りのセンスが大好きで、舞台にいるといつのまにか注目してしまうバレリーナさんです。白鳥も、出てきた瞬間からそのラインの美しいこと、すすっと動いていって、音楽的な間のよさが抜群でした。お芝居もできるのですよね、白鳥姫が登場したときの、もうおしまいです、というタヨリない感じ、オディールでは身体の表情も違って見えました。

 

ロシアのバレエ団ではオデット姫は長身ダンサーが踊ることが多いですよね。その長いラインの基準でもOKな吉田朱里さんでした🥰

 

王子は井澤駿さん。3年前は渡邊峻郁さんが、急な代役デビューになった朱里さんを全身全霊なイキオイで支えましたが、井澤さんはおおらかな相手役ぶりでした。背が高くて絵になる主役コンビでした。

 

ベンノは中島瑞生さん。舞台が大きくなりましたーびっくりするくらい。お芝居が、劇場中に自然に浸透するんですよね、踊りもとても強くなって、ベンノの存在感が凄かったです。クルティザンヌが花形悠月さんと山本涼杏さんで、3人並んだらまー華やかでした。

 

4羽の白鳥や2羽の白鳥、3幕の花嫁候補の王女さまなど、目立つところに入団1、2年目の若手が抜擢されていて、堂々と踊っていました。新国立劇場のバレエ研修所の卒業生が目立っているんですよね~ ちょっと前まで、研修所出身者というと、上品で美しいけどテクニックはそこそこ、な方が多かったんですが(すいません)、そこも様変わりしました。本島美和所長がスゴ腕なんでしょうか。

 

ポール・マーフィー指揮の東京フィルハーモニー交響楽団。うーん、マーフィーさんのチャイコフスキーが魅力がなかったです。シネマなど見ていると、コヴェント・ガーデンではチャイコフスキーぽさとかもうこだわらない演奏になったのかな、と思うことが多かったのですが、やっぱり?でした。あのロシア風のタメとかひっぱりとか、もうダサいってことになってやらないのでしょうか。5月のエデュケーショナル・プログラムのときの白鳥の湖のほうがゴージャスなサウンドでしたよ💦

 

吉田朱里さん、新国で「ジュエルズ」をやることになったら「ダイヤモンド」の筆頭候補じゃないでしょうか。絶対似合います、見せてほしい!






渋谷のオーチャード・ホールで、K-BALLET TOKYO の新演出「パリの炎」を見てきました。

 

パリの炎というと、回転最強系パドドゥは何度も見ましたが、全幕上演は来日公演のボリショイ・バレエ版と、ミハイロフスキー・バレエ版で1回ずつ。ボリショイ版はラトマンスキーの大改変バージョンで、ミハイロフスキー版はメッセレルのワイノーネン版原典回帰バージョンでした。

 

もともとは民衆の革命ものとして、ソ連の革命ものとフランス革命を重ね合わせて、ソ連ハラショー!のために作られたバレエなはずですが、ラトマンスキーはそこをひっくり返して、革命の狂気の怖さをテーマにしたんですよね。

 

ラトマンスキーは「明るい小川」でも、きっともともと共産主義農村ハラショーな作品を、徹底的にコケにしたバージョンを作っていて、見たときは驚きました。当時とはロシアも変貌していて、今大丈夫なのかな、でもボリショイでは普通に2作品ともやっているようですが。ラトマンスキーに無断で。

 

というわけで、熊川哲也さん率いるK-BALLETが「パリの炎」を新バージョンで作ると聞いたときは、ラトマンスキー版の改訂ぽいのかなと予想していたんですが、すみません、大胆な書き換えでもっと面白かったでした。

 

演出・再振付は宮尾俊太郎さん。宮尾さんの振付は前に見たときに、意外にいい(すいません)なと思ったのですが、今回もひっかかるところなく。というか、熊川さんと似て、人々の出し入れが上手いです。場面の運びや転換がスムーズだし、踊りのナンバーをしつこく長くしないし。

 

今回一番の変更点の、宮廷でマリー・アントワネットとルイ16世が踊る場面、いくつかのソロのバリエーションが魅力的に作ってあって、たいへん感心しました。アントワネットが大きな白い扇をもって踊るのなんて、とっても素敵🥰 アントワネット役の木下乃泉さんのタメの利く踊りに映えていました。

 

もともとは革命の民衆の活動と対比して、貴族たちの優美な場面が作ってあって、その場面で中心になるのは女優役でした。国王夫妻はでてくるけど見物するだけ。ミハイロフスキーのでは、女優さんはいつのまにか革命側で扇動しているというちゃっかりキャラでした。

 

ラトマンスキー版では貴族パートは、バロックオペラを上演している設定なんですよね。アルミーダとリナルドという、タッソーもののやつ。いかにもダラダラしたバロックオペラぽい場面になっていて感心しました。ただ、ボリス・アサフィエフの音楽が全然フランスバロックらしくなくて、そこは残念でした。

 

ジャンヌとフィリップ、アデリーヌとジェロームというふた組の恋人たちがいて、アデリーヌのお父さんのボルガル公爵と、ロベスピエールもなぜか出てきます。集団革命劇になっていて、見た日のジャンヌとフィリップは日髙世菜さんとゲストのドミトリー・スミレフスキーさんだったんですが、なんか見せ場が少なめです。例のパ・ド・ドゥは最後にでてきてコレデモカの盛り上がりですが、そのあとハッピー・エンドにはなりません。

 

「バスクの踊り」も、2幕の冒頭にもってきてロベスピエールが踊るという。この日は遅沢佑介さんでしたが、熊川哲也さんの役でもあるんですよね。なるほど~ 結果、フィリップはなんかワキで踊ってることになるんですが、スミレフスキーさんのボリショイ仕込みのバスク、ミリ単位にさすがでした~

 

そして、2幕は断頭台が重苦しく舞台にのしかかります。ここにいるのがサンソン。安達正勝さんの著書から坂本眞一さんの漫画「イノサン」に続いて、稲垣吾郎さん主演の舞台「サンソン ルイ16世の首を刎ねた男」につながっていまして、稲垣さんの舞台はもちろん何度も見ましたです。長髪にレースの袖口、紅い手袋の優美な処刑人でした。

 

Kバレエのサンソンも、黒髪ストレートの長髪に、ケープコートのすらっとした姿で期待通り。中井皓己さんは踊りませんが動きもスキがなくて美しかったです。

 

稲垣さんの「サンソン」は中島かずきさんの書下ろし脚本だったのですが、若き日のキレ者な姿から、最後は皇帝になったナポレオンをうまく出して、作品のアクセントにしていたんですよね。こんどの「パリの炎」でもナポレオンが活躍して、切り口に共通点を感じました。

 

最近退団者が多かったKバレエなんですが、今回おもな役で活躍したのは若い方が多かったのでしょうか。ナポレオンの山田博貴さんとアントワネットの木下乃泉さんが気になりました。

 

美術・衣装もやりすぎず美しくて、時間も50分プラス50分の2幕ものでちょうどよくて、ホント大成功でした。見た日の舞台は撮影していて、映像配信になるそうです。配信といえば、今夜から新国立劇場バレエ団の「くるみ割り人形」も半年間の配信がはじまります、楽しみ。