8月30日の14:30開演の、谷桃子バレエ団の「レ・ミゼラブル」を、大井町のきゅりあんで見ました。4回公演のうちの最終回、井澤駿さんのゲスト回です。

 

1,000席のきゅりあん大ホールの、4回の公演が完売だったそうです。日本の創作バレエの公演でこんなことが起こるとはというとナンですが、バレエ団が打って出た、YouTubeでの大反響がバレエ業界の常識をひっくり返しました。ロビーいっぱいのポートレート、贈られた豪華なお花がまぶしい~

 

谷桃子バレエ団の公演を見るのは初めてでした。大昔💦から、大塚礼子さんや尾本安代さんは見る機会があって、高部尚子さんは、佐多達枝作品に出ていたりと、個々のダンサーの活躍には親しんでいたのですが、なんとバレエ団の公演には行ったことがなかったのでした。

 

演出・振付・選曲は望月則彦さん、2013年に亡くなっていて、作品の保存継承への強い意思を感じる舞台でした。というか、作品が素晴らしくてびっくり、物語をつむぐうまさ、群舞の扱い、ソロも説得力があります。踊りそのもののリズムやポーズが魅力的です。舞台美術は橋本潔、衣装美術は合田瀧秀、深みがあって美しかったです。

 

音楽はコラージュというかつぎはぎというか、ペルト、シュニトケ、タブラトゥーラのルネサンス音楽などの組み合わせです。なかでスメタナのモルダウの、サラ・ブライトマン歌唱バージョンが印象に残ってしまうのですが、そこ以外は現代曲が振付に似合っていて、物語バレエとしてスムーズに見られました。大地を踏みしめる民衆の踊りが力強くて、再演を手掛けた高部尚子芸術監督の指導力を感じます。

 

新国立劇場バレエ団の井澤駿さんが、ジャン・ヴァルジャンでゲスト出演していて、原作通りの、とにかく大男で、ありえない力持ちという設定に説得力がありました。今回のジャン・ヴァルジャン、踊りが少なくて、ほとんど出てきてマイムばかりなのが勿体なかったです、モダン系の動きがとてもよかったのですよね~。あとメイクなんですが、つけヒゲのヒゲ量が多すぎだったのでは💦 見た目熊さんみたいになって、表情がわかりにくいし、浮浪者から市長にかわったらもっとダンディに見えたほうが嬉しいですのにと思いました。

 

谷桃子バレエ団は比較的小柄な人が多くて、井澤さんは完全にアタマひとつ抜けて大きかったです。新国だともっと長身の男子が何人かいますよね、やっぱり大きい人を集めている初台なんですね。

 

ジャヴェール警部は田村幸弘さん、つま先の美しい踊りで演技も的確でした。というかこちらの役はテクニックの見せ場もたくさんで、ステッキを使って黒づくめで大変かっこよかったです、男性舞踊手なら踊ってみたい役なのでは。

 

コゼット森岡恋さん、ファンティーヌ馳麻弥さん、マリウス池澤嘉政さん、エポニーヌ北浦児依さん、お話が急展開で慌ただしいのですが、それぞれキャラクターをきちんと伝えていました。そういう振付がついているし、演出も行き届いていました。

 

レ・ミゼラブルは大長編なので、あのミュージカルが成功するまで、舞台作品として登場することは少なかったのでは。このバレエはやっぱりミュージカルの影響をうけていそうなのですが、ダンスの魅力が圧倒的でバレエ団の人気作品として定着できそう。

 

YouTubeに進出して、団員の顔が見えるバレエ団としてブレイクしましたが、高部尚子さんはそっちの作戦だけでなく、谷桃子バレエ団としての踊りのスタイル、演劇的な表現力もこのバレエ団の特色ですよね、大事に受け継いで、的確に伝えていく優れた芸術監督さんです。ファンの熱気にびっくりしましたが、丁寧な舞台づくりがとてもよかったでした。

 

台風にあたって遠征計画がぽしゃった夏でしたが、8月25日は愛媛県で内子座文楽を見ることができました。無事に行けてよかったです。

 

大正5年に建てられた桝席の芝居小屋です。吉田和生さんの出身地に近くて、その縁ではじまって、第二十五回公演という内子座文楽、このあと劇場が改修に入るので、4年ほど休館なのだそうです。

 

内子は3度目で、素敵な建物と迎えてくださるみなさんがおだやかで、遠いけど伺う甲斐のある町です。もうちょっと暑くない時期に来てみたい、と思いつつ、なんですが。

 

「寿柱立漫才」は三味線が凄くて、見れば寛太郎に燕二郎の若手エースが並んでいました。玉翔、玉勢の太夫と才三も安定して、というか仲良くイキがあって道中楽しそうなコンビぶりでっした。

 

「摂州合邦辻」は、和生さんの玉手御前🥰 午後の部は藤太夫清志郎に、錣太夫宗助でした。藤太夫の朴訥な父親ぶりに、錣宗助はゾーンに入ったというか、古風な小屋が一緒にイキをのむ快演でした。

 

合邦夫婦は玉男・簑二郎、入平は玉助、俊徳丸と浅香姫のカップルは玉佳・一輔と、2日間の公演に豪華な布陣でさすがの完成度でした。本公演とは違う地方の公演で、4回だけの公演なのにさすがでした。

 

和生さんは、この内子座文楽の責任者というか、地元のスターというか、なのですが、最近の充実度も加わって、花がこぼれおちるような玉手御前でした。一輔さんの浅香姫とのケンカアクションは期待していたのですが、運動量もタイミングも素晴らしかったです、痛快でした。玉男さん合邦との緊張感あふれるやりとりもスキがなかったです。

 

義理の母が息子に恋をしかけて毒を呑ませるは出奔するは、恋の妄言にまわりもアゼン、の傍若無人ぶりがいいんですよねー、お芝居で描きたいのはそこですよね。人妻なので、黒い頭巾からのぞくマナザシが色っぽくて、驕慢な悪女ぶりがたまらないです~。和生さんは堅実な芸風から、お年とともに華やかさをましていて、内子の玉手御前はもう、眩しかったです。

 

昔ながらの劇場で、義太夫と三味線の音量も、人よりは小さい人形も、ちょうどよい寸法にはまるのですよね。やはり得難い体験でした。








9月1日に大阪で予定されていた「深川秀夫バレエの世界」、台風の影響を心配していたのですが、公演延期で、2025年4月27日に振替になりました。中止ではなくて延期、にほっとしましたが、出演者は変わらないのでしょうか。深川作品を踊る峻郁さんを楽しみにしていましたので、春を待ちたいです😢

 

傷心←でむかったNHKホールで、東京バレエ団の60周年祝祭ガラ「ダイヤモンド・セレブレーション」を見てきました。結婚記念で、銀婚式とか金婚式とかありますけれど、たしか60周年がダイヤモンド婚式だったはず。それ?なのかな?

 

「エチュード」と「ボレロ」に、3つの小品をはさんだプログラムで、大仰にならず、バレエ団のレパートリーをすっきりと並べて見せる舞台でした。こういう公演は大好きです🥰

 

「エチュード」は東バの十八番、国内独占だったのですが、来年の3月に新国立劇場バレエ団が初挑戦なんですよね、というわけで初台だったらここは誰が踊るのかな、とついつい思ってしまいました、メインの男子2人の組み合わせとかですね~

 

最初のシルエットからバレリーナたちの手足が長くて繊細で美しくて、ポーズが全部正しい!という感覚。というか、新国だったら同じ正しさを追求しても、見えてくる形が違いそうな気がするのですよね。なんとかメソッド、の違いなのか、バレエ団の個性なのか。この作品、洒落っ気と見せつけすぎない品のよさがあって、アイデア一本勝負だよねという印象がくつがえった舞台でした。

 

休憩をはさんで、イリ・キリアンと武満徹の「ドリーム・タイム」、金森穣の「かぐや姫」、クランコの「ロミオとジュリエット」の3作品。

 

武満徹とダンスは相性がいいです。金森穣さんにも、もっと武満徹をとりあげてほしいです~、ドビュッシーを使った「かぐや姫」も見事ではありますが。

 

「ドリーム・タイム」は、沖香菜子さんがクイーン・マブぽくて大変魅力でした。明るい華やかなプリマさんがこういう変身をすることがあるのですねえ、醸し出す悪夢の女王感がステキ。

 

ロミジュリは、大塚卓さんの怪我休演で、演目変更で臨時?登板だったそうです。足立真理亜さんと池本祥真さん。レパートリーに加わったクランコ版なんですが、マクミラン版に先行する振付で、マクミラン版のバルコニーシーンが必要以上?にトリッキーなのは、クランコ版との差別化のためだったのかなと、ちらっと思ったり。足立さんと池本さんは、役を作ってきて芝居は出しすぎない芸風が似ていて、とてもいいカップルでした。池本さん、今技術的に最高潮ですよね凄かった。

 

ここの3作品は録音でしたが、「エチュード」と「ボレロ」は、イーゴリ・ドロノフ指揮東京シティ・フィルハーモニーック管弦楽団。大昔に、このNHKホールでN響の定期演奏会に通っていたのですが、管楽器系は当時はなかなか大変だったですよねー、今の日本のオケの水準凄いです。

 

上野水香さんは、ベジャールスタイルの権化みたいな踊りでした。腕の戻し方とか、間合いとか、ベジャール最盛期の20世紀バレエ団の空気感まで漂っていたような。ゲストではなく、台の上と下と同じバレエ団で踊ると一体感があって、あの「ボレロ」ですが、本来の作品がストレートに迫ってきたのでした。

 

 

川崎浩美さんが主宰する「BALLET NOW」の、夏の舞台は、今年は南大沢文化会館でした。貝川鐵夫さんも教師と振付で活躍されていて、ゲストが渡邊峻郁さん、速水渉悟さん、山田悠貴さん。外は雨でしたが賑やかな舞台でした。

 

ゲストとのパ・ド・ドゥも見せ場でしたが、小さいお子さんも参加のグループナンバーがよくて、貝川さんの振付なのかしら、いつも楽しみにしているのです。今年は、グノーのファウストのワルプルギスの場面の曲、ゴットシャルクのタランテラ、ガーシュインのメドレーと、バランシンにちなんだ音楽が使われていて、ときどきちょっとだけ、おなじみの動きがあったりするのも面白く見ました。

 

山田悠貴さんはアシスタント講師の井上明香さんと「ドン・キホーテ」、速水渉悟さんは宮田蒼衣さんと「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」、渡邊峻郁さんは斉藤紗菜さんと「眠れる森の美女」を。新国3人組はみなさんテクニシャンですけど、タイプが違ってよいバランスでした。

 

山田さんのバジルは丁寧なエスコートに、ソロははつらつで、衣装もお似合い。よけいな色をつけない踊りがきれいでした。バネと余裕がさすが。井上さんは山田さんとお似合いで、踊りが端正で美女、赤い素敵な衣装がお似合いでした🪭

 

速水さんのチャイパド、青年ぶりが似合うです、動きもやっぱり完璧。ここまで凄い水準でできていると、もうひといろ、バランシンらしいヌケ感も見せてほしかったかなー、またの機会に期待。去年の海賊に続いて、速水さんと共演した宮田さんもキュートでした。

 

渡邊さんは今シーズン4どめのデジレ王子。斉藤紗菜さんは3度めのパートナー。はじめて組んだときは、まだ華奢で小さかった斉藤さんが堂々たるオーロラに、斉藤さんは踊りに落ち着き感というか、ポーズのひとつひとつがすっと極まって絵になるのが魅力です。秋から留学されるそうで、どんなスケールのバレリーナになるのか、楽しみ🥰

 

発表会とはいえ、「眠り」はアダージオのテクニックも端折るところなく、難所も全部入りでした。目ではげましながらの峻郁王子に🥰 ソロになると高いカブリオルも、キャラクターによって見せ方が違うんですよね、王子のつま先が貴いです🥰

 

ゲスト3人はアイ・ガット・リズムにも参加。貝川さんのご子息、元基くんと力基くんと踊ったり、山田さんは小さい子をひきつれて、おかあさんといっしょのお兄さんでした。貝川さんのインスタにちょこっと様子が↓

 

 

最後は、生徒さんが皆さんそれぞれ、踊ってみたいヴァリエーションを披露しました。バレエシューズで踊る小さい人も、ちゃんとキモのポーズをキメてびっくり。舞台の最初から、司会をされた川崎先生とのやりとりも微笑ましかったです。

 

それぞれに先生のコメントがつくと、わかりやすいし会場の一体感もアップしてよいことずくめでした。ただ、バレエを見るのは言葉のないのも魅力のうちなので、お話、もうちょっとだけコンパクトに進めていただけるとより素晴らしかったかも~。

 

生徒さんが充実して、ふつう?の発表会になったバレエナウ。以前楽しかったので、貝川作品の発表の場としても、また見せていただけると嬉しいのですが。しかし無料で豪華すぎる舞台でした🥰

 

東京バレエ団の、団員が振付に挑戦して、作品を発表する企画、「Choeographic Project」、7月の2日間の公演のうち1日が、スタジオの空調設備の故障のために中止になって、振替公演が企画されたのだそうです。それが、8月22日の木曜日の夜のめぐろパーシモンホールで、当日券があるということなので、行ってきました。

 

例年ウワサは聞いていましたが、スタジオ・パフォーマンスなのでチケットも瞬殺だとか、縁がなさそうと思っていました。「めぐろバレエまつり」の最中で、会場は提灯も飾られて華やかでした。チケットを売ったり、案内をしているのは東京バレエ団の団員さんで、きれいな方がいっぱいでまぶしいのでした。柄本弾さんがプログラム売りを担当していまして、2,000円に1万円でお釣りをもらって恐縮だったのですが、「新しいお札と古いお札がまざってすみません」など言っていただいて、目があってどきどきでした🥰

 

作品は7つ、木村和夫振付「チャイコフスキー・ピアノ・コンチェルト第一番より第三楽章」、岡崎隼也振付「ふたつのかげ」、井福俊太郎振付「la Mano」、冨田翔子振付「ma vie」、ブラウリオ・アルバレス振付「Siamese」、ブラウリオ・アルバレス振付「Komorebi」、岡崎隼也振付「チェロからはじまる私とあなたの関係」 休憩なしに一気に上演されました。

 

「ma vie」「Siamese」「チェロからはじまる私とあなたの関係」はバッハ。使用曲は明記していなかったのですが、パルティータだっけと聞いていて、帰ってから楽譜を見たら違っていたみたいで情けなかったり。ブラウリオさんのは平均律クラヴィーア曲集から。

 

平均律クラヴィーア曲集を習ったとき、とりかかりやすそうなものから順番に練習したのですが、ブラウリオさんの選曲が、わりと最初に選びそうな、音符少なめなものだったので、ご自身で弾かれるのかしら、などと想像したり。このSiameseは、シャム、タイの舞踊の衣装で、動きにもタイ舞踊が使われていて個性的なナンバー。きれいで不思議な感覚でした。

 

岡崎隼也さんの「チェロから‥」は、「チェロ組曲第1番、全6曲の使用を想定」したものの、途中で変更したそうで、結局ストラヴィンスキーの「火の鳥」と「ペトルーシュカ」、最後にバッハ、という変則組曲になっていました。ペトルーシュカを使った部分がとてもよかったです、平木菜子さんが緻密とスケールを兼ね備えた踊りで素敵でした🥰

 

もっと出ている方のお名前がわかったりしたらより楽しめたのにと残念なところも。作品的にはあくまでも、スタジオで習作を発表するというものなので、気負ったり、未完成な部分があるのは当然ですが、もうちょっと整理したり、作者の思い、だけにならない展開も見たかったです。東京バレエ団はベジャールのスペシャリストだし、ノイマイヤーもキリアンもレパートリー、金森穣さんの大作も踊ったりと、見についた動きのヴァリエーションがさすがでした。

 

開幕前に団員さんによるマナー啓発パフォーマンスもありまして、東バのあたたかさを感じる公演でした。見られてよかったです🥰