8月23日の日曜日に、福岡市民ホールの中ホールで、Youth Dream Support Project主催、演出・振付・構成 遠藤康行「ふしぎの国のアリス-こころの迷宮-」を見てきました。

 

アリスが木村優里さん、アリスの恋人ジャックが渡邊峻郁さん、白ウサギが奥村康祐さん、影のアリス・ルナが遠藤ゆまさん、ハートの女王が原田舞子さん、マッドハッターが福田智子さん、チェシャ猫が市ノ澤直希さん。

 

福岡周辺の7つのパートナースクールから、幼稚園から高校生くらいまででしょうか、50名以上が参加して、インコやお花やトランプになって活躍しました。

 

不思議の国のアリスをモチーフに、遠藤さんが出演者の個性をアレンジしながら作り上げた2幕の作品で、美術はおなじみ長谷川匠さん。音楽はチャイコフスキー、と事前に発表されていたはずなんですが、プログラムには記載がありませんでした。短い曲の組合せでしたがほぼチャイコフスキーだったかと、知らない曲多かったでした。

 

よく考えられていて、見ごたえのある舞台でした。遠藤康行さん今作家的に絶好調なんじゃないでしょうか、とにかく振付の手数が豊富で、いくつナンバーを作っても無敵でした。子どもたちの踊りも、バレエの基本にうまくコンテンポラリーダンスの要素を組み合わせて、フォーメーションもちゃんと複雑で、見ごたえありました。それぞれの場面とキャラクターの理解度もきっちりしていて、最前列で見ていたのですが、小さいお子さんでも表情も動きもスキがなかったです。

 

峻郁さんはアリスの恋人ジャック、でどこかで聞いたことがあるヤツなんですが、こちらバージョンは活躍度が大違い。とくに2幕めは、原田舞子さんのハートの女王とジャックの一騎打ち展開になっていまして、ジャックが出ずっぱりの踊りっぱなし。最後に優里さんのアリスと長大超絶デュエットがありまして、コレデモカというたかふみ祭りでした。

 

木村優里さんは待望のアリス、水色がよく似合って、髪にウエーブをつけていてヴィヴィアン・リーみたいでした。子どもたちも多い舞台でストーリーを作っていく表現力がさすがです。影のアリス、という設定の遠藤ゆまさんとのからみは、振付的にもっとつっこんでくれていてもよかったかも。ゆまさんは、先日のような主演ではないせいか、肩の力の抜けたスムーズな踊り、遠藤スタイルのお手本のようでした。

 

奥村康祐さんはオリジナルで遠藤康行作品をいくつも踊っているのですが、関東ではあまり見られていないんですよね。奥村白うさぎ、もどこかで聞いたヤツですが、同じキャラクターにはならず、もっとクールでシニカル系なうさぎでした。アントルシャの連続技を見せてくれたのがご馳走でしたし、どんな場面も的確なお芝居がさすが。

 

原田舞子さんは遠藤作品ではバレエミストレスに名前があることが多くて、今回舞台で見るのを楽しみにしてました。峻郁さんジャックを羽交い絞めにしたりにらみ合ったり、美しくてお芝居がやっぱりお上手。女王とジャックを中心にした、主要キャラクターたちのパ・ド・トロワは大変面白かったです。

 

福田さん、市ノ澤さんはコンテンポラリー・ダンサーとしての活躍で、マッドハッターにチェシャ猫のキャラクターにぴったり。存在感抜群すぎて、各キャラクターがなんとなく横並びになってしまった印象はあったかも。

 

古典と比べてチケット販売など苦戦しやすいオリジナルの現代ものですが、地元の生徒さんを担保に?贅沢な公演が実現していて、でも妥協もなくて、とても水準の高い舞台でしたし、客席の反応も大変アツくなっていました。

 

福岡に来るときの飛行機が、羽田の雷雨で3時間遅れまして、このまま欠航だったらどうしよう、ちょうど1週間前の上田の公演で新作を踊りまくる峻郁さんを見たばかりですし今回は諦めようかと思ったのですが、行けてよかったでした。ジャック役はきっとそんなに出てこないかもとか頭をかすめたのですよね、大変違って予想の10倍踊ってましたね~ 踊れるダンサーさんには、振付家はどんどん踊りを足してしまうものなんでしょうか、次々に続く新作オリジナルのこの質量、どうやって覚えて踊りこなしているのでしょうか…。





 

8月16日、長野県上田市のサントミューゼで「ESSENCE‐その先へ  Ballet Gala」を見てきました。上田市 の若林佳代さんが中心になって実現した、八幡顕光さんのプロデュース公演です。ただのガラではなく、気鋭の振付家、宝満直也さんをフィーチャーした意欲的なプログラムでした。

 

オープニングは当日発表の、八幡顕光さんのソロ。これが、デヴィッド・ビントレーの「カルミナ・ブラーナ」の、神学生2のソロでした。ビントレーさん、公演プログラムにメッセージを寄せているんですが、お祝いの一曲も提供したのですね~

 

懐かしいという以上に、テクニックも運動量も大変すぎる男性ソロ。どんなに激しく動いても優美な八幡さんでした。作品のパワーもすごいですねー、再演してほしいです。

 

続いて宝満さんの新作「Triptyque-Burning Water」 花形悠月・山本涼杏・上中佑樹・森本晃介、新国の4人で。

 

「トリプティーク」は、芥川也寸志の曲に牧阿佐美さんが振付たナンバーがありまして、とくに新国立劇場バレエ研修所の公演では超定番です。宝満直也さんは研修所出身なので、踊ったことがあるのか、知らないことはないと思うのですが、なので、この作品は牧先生へのオマージュでもあるのでしょうか。

 

牧版のさわやかなエチュード感のある振付が物足りなかったので(すいません)、今回の宝満版は曲のイメージがまさに燃えていて、とても見ごたえありました。女性の力強さが映える踊りですずゆずコンビを堪能。カップルふた組が交互に踊ったり、一緒になったりの変化も面白かったです。

 

次は「眠れる森の美女」を、佐久間奈緒さんと厚地康雄さんで。ピーター・ライト版の目覚めのパドドゥで、ド古典とは違う場面。佐久間さんのお姫さまらしい、ちょっと戸惑いつつなオーロラ姫が絶妙でした。ご夫婦でじっくり踊るのが素敵。

 

「Tarantella」は今回の目玉、ゴットシャルクのあの曲で、こちらはバランシンへのオマージュというかなんというか。

 

「ここには、猛毒を持つ、タランチュラが生息しているとも知らず」

 

と、詳しい解説ナレーションが入りました。女性のかわいい声で、微妙にシニカルですごく、すごくよかったのですが、バレエ団の堀之内早希さんがナレーターだったんですよね、宝満さんがインスタで発表していました。

 

五月女遥・八幡顕光・福田圭吾という日本一踊りがうまい3人に、タランチュラ役が小柴富久修さん。茶色い総タイツに頭に大きなタランチュラをつけて出オチなのかという姿。この作品、リハーサル映像が何度か出ていたのですが、足をかまれた、しびれてキタ、みたいな動きを圭吾さんが踊るだけでも面白かったのに、そこに小柴タランチュラが加わって、ひとりひとり順番にかぷ!と噛みつくタイミングが絶妙すぎて、笑って呼吸がキビしくなったほどでした。劇場が爆笑に揺れていました。

 

その次がこちらも目玉の新作「Eclipse-月が消えた夜」で、こんな大笑いのあとどうするんだろうと思いましたが、幕があいた途端違う次元になって、さすがでした。

 

チャイコフスキーの交響曲第5番の第2楽章をフルに使って、米沢唯さんと渡邊峻郁さんのデュエット。かぐや姫がモチーフだということですが、出会ったり、見失ったり、優しく寄り添ったり、激しく求めたり、と、くるくると展開が変わり、背景幕と照明もダイナミックな効果をあげていました。14分ほどの作品でしょうか、広い舞台にふたりだけで緊張感にあふれ、切なく泣ける大作でした。

 

峻郁さんの冒頭のソロがクラシックをはずれた、ダイナミックで複雑な動きで、今回の舞台でもっとも「コンテ」な部分だったかも。宝満さんのこういう手法で踊る峻郁さんが見られて嬉しかった~。

 

で、相手が米沢唯さんなので、ここぞとばかりのトンデモリフトの連続でした。アクロバットなだけでなくて、表現の大事なプロセスになっていて、でもやっぱり派手な動きは見せ場ですよね。唯さんを高くかかげて一往復半走ったあげくに回転キャッチ、とか、ボリショイバレエもびっくりです。

 

大感動作に続いて、前半の終わりは「球とピンと私たち」 小柴富久修・渡邊峻郁・福田圭吾・上中佑樹・森本晃介・八幡顕光・山本涼杏・花形悠月。頭つきの白総タイツに赤いショートパンツで、ボウリングのピンになりきったダンサーさんがボウリング場のスケッチを踊ります。というかなんというか、これもほぼ出オチなんですが展開もバカな超絶技巧。

 

初演は宝満さんと小柴さんだったんですが、特別バージョンでは4組が踊りました。

 

エクリプスのあとなんですよねー、しかも峻郁さんは直前に悲恋を踊って間もおかずネタものに登場するという、さすがに衣装変えの都合で、途中からエレガントに遅刻登場でした。踊りは福田渡邊組で、キレキレでしたねー。爆笑と拍手のうちに幕がおりて、休憩時間に。

 

第二部の「美女と野獣」は、2020年に大和シティー・バレエで上演した作品です。晩餐会のシーンをハイライト再演。宝満さん初の全幕作品でした。

 

ベルの小野絢子さんとおサルの近衛兵隊長福田圭吾さん、オオルリの五月女遥さんが初演と同じメンバーで、ほかは一新。野獣は厚地康雄さんが。

 

お城に滞在するベルのために晩餐会が催されるのですが、不器用な野獣をはげますおサル隊長、かわいい小鳥たちに加えて、ベルを狙う求婚者トリオがサルにばけて侵入してくるというプロットを楽しく見せます。よくできているんですよねー、こんなワクワクするひと幕ってなかなかないです。

 

小野絢子さんのベルが、美女だけど本が好きで、どこかクールな性格で見せるコメディも絶妙。宝満さんが小野さんというミューズを得た傑作です。

 

野獣の厚地さんは、かぶりものなしで、メイクでケモノに。二枚目すぎますが圭吾隊長ともイキぴったり。新国のビントレー時代を思い出しました。

 

小鳥のディヴェルティスマンが五月女さんに山本さんと花形さんで、これがたいへん華やかで魅力でしたです~ 最近花形さんが、よりキュートでとても惹かれます。

 

宝満版美女と野獣の特徴である3バカ求婚者を、小柴・八幡・渡邊で。この作品も堀之内ナレーションがあったのですが、サルにばけて忍び込みます、という説明つきで登場しました。

 

峻郁さんがソロで踊っていて、初演にこんな踊りあったっけ?と思っていたら、あとからプログラムを読んだら新たに作ったとか。おサルバージョンの踊りでしたがかっこよかったです(笑) キャラクターものの巧みな小柴さん、八幡さんと一緒でしたが、ひときわ熱心にインチキサルをやりぬく峻郁さんでした。

 

「美女と野獣」は大和シティー・バレエのプロダクションで、衣装もそのまま。衣装協力に佐々木三夏さんのお名前が、三夏先生は上田にもいらっしゃってました。

 

メイドの小鳥が大島沙彩・鬼頭楓・下川佳鈴・堀之内咲希・松本鈴香・松本柚香。上川さんと森本さんは正規?のおサルの近衛兵。ガラの出演者18名でした。

 

期待していた以上のガラで、バレエファン人生ベストかも。宝満さんの才気あふれる振付に、踊り手も最高の顔ぶれでした。

 

峻郁さんが、唯さんとのデュエットはもちろん、球とピン、でも大事なアクセントを担って、おサルな求婚者は思いがけなく見せ場たっぷりで、しかも3本とも宝満さんなのに全然違うテイストなんですよね。それぞれに超順応して作品世界を見せてくれていて、ファン冥利につきました!

 

こういうガラを企画して、実現して成功したのは日本のバレエ界としても画期的だったのでは。八幡顕光さんと宝満直也さんと、上田市の奇跡の邂逅でした。

 









佐々木三夏さんのプロデュース公演である、大和シティー・バレエ/ダンスが、「想像×創造 vol.7」として、「天守物語」を手がけました。劇場はやまと芸術文化ホール。

 

前田清実さんが総合演出、笠浦静花さんが脚本、演出・振付は竹内春美さん。前田清実さんはそもそも振付家なのですが、この肩書は舞台全体をリードしていく立場ということなのでしょうか。ダンスの新作は全般に、振付家が全部やる、になることが多いのですが、大和では複数の視点で舞台を作っていっているようで、その塩梅もおもしろいです。

 

今回の公演はマチネとソワレがあって、ソワレだけ見ました。ヒロインの天守夫人富姫は、マチネが石崎双葉さん、ソワレが本島美和さん。ほかの配役は同じです。

 

ダンス化ならではの工夫もいれつつでしたが、泉鏡花の戯曲の、逐語訳のような舞台でした。忠実すぎ、ストレートすぎにも思えましたが、自分の場合は覚えているセリフもあるくらいはまった作品、知らないで見るのだったら、また違う感想になるのかも。原作とダンスの関係は悩ましいところですよね。

 

殿様の鷹をダンサーさんが踊りました。かぶりものをしていて顔は見えないのですが、かわいかったです~、手乗りの鷹というか、目の前の人になついてなにも考えてない感じが鳥らしくて見とれました。で、このダンサーさん、アーティスティックプロデューサーの佐々木三夏さんだったんですよね~、カーテンコールで頭をはずしてご挨拶にびっくり。さすがの技量でした。

 

見る前から間違いなしな本島美和さんの、天守夫人富姫。今回の舞台化では、襲われて自害する美女のシーンからはじまったのですが、そのせいか、ただ妖怪というのではなく、人間の情味をたたえて、恋するシーンがとても素敵。「あなた、あの方をわたくしにくださいまし」って、言わないけれど聞こえましたもの。

 

図書之助は中川賢さん。意外とポジションの難しい役をきっちり的確に。中川さん、拝見する機会が多いのですが、ダンサーとして凄いのはもちろんなのですが、俳優さんというか役者さんらしい存在感がマシマシでした。ダンスって技術だけじゃないのが、こういう方を見ているとわかるような。

 

大和のエース、古尾谷莉奈さんが亀姫で、ちゃんと本島さんと拮抗する華をそなえて登場。もっとかわい子ぶってもよかったかも~。おつきの朱の盤坊が五十嵐ゆうやさんで、これも間違いない配役でしたけど、もうそれ以上にすべてが絶妙すぎでした。和の動きが入るとホントーに上手いです。遠くから来て、また帰っていく妖怪の距離感も出ていましたねー、不思議な感覚。

 

舌長姥と近江之丞桃六を、武元賀寿子さんが。前回の能楽集の小町に続いて、比類ない様子でした。というか、こういう役こそ、名舞踊手の存在感が活きるんですねー、天守物語のダンス化の意義、がすごく感じられる場面でした。

 

音楽は、吉松隆、石井真木、清瀬保二、ドビュッシー、サン=サーンス、ほか、となっていました。サン=サーンスはオルガンつきの、あの曲。玉三郎さまの天守物語は、音楽がラヴェルなんですが、この戯曲はフランスものと相性がいいのかも。というか、日本の作曲家だけにするか、フランスだけにするか、どちらかにしたらまとまりがよかったのでは。

 

こちらの舞台はいつも、資生堂のチームが入ってメークやヘアスタイルが素敵なんですよね。衣装は三夏先生だし、ヴィジュアルをがっつり整えるのってやっぱり大事ですよね。天守物語はそういうのが映えに映えて美しい夜になりました🥰








 

山の日の8月11日に、埼玉会館大ホールで発表会を見ました。「ノリコクラシックバレエスタジオ NEIGE 第12回発表会」 古村典子さんが主宰の教室です。2年前の夏にも拝見したスタジオでした。

 

ゲストダンサーが渡邊峻郁さん、木下嘉人さん、益子倭さん、宮川新大さん。クラシック以外にも、パントマイムダンサーのひこひこさんと今川雅一さんが活躍しました。

 

発表会なので小さなお子さんの小品とゲストのパ・ド・ドゥが前半に。今回はそれぞれアダージオだけを、宮川さんのタリスマン、益子さんのパリの炎、渡邊さんのラ・バヤデール、と、すっきり見せました。それぞれ作品世界ははっきりしていて、峻郁さんのソロルもお美しかったです🥰

 

木下嘉人さんがこの舞台のために新作を発表したのがメインイベント、「undiscovered」 女性ソロからはじまって、木下さんも加わって充実のデュエットでした。雨宮瑳那さんは動きも表現も力があって、木下さんの強さを増した作風にぴったりでした。発表会は古典中心ですし、なかなか今の流れを取り入れにくいですが、こういう作品が入ると全体の印象が変わりますね~。

 

しめくくりは「ドン・キホーテ」をハイライト、というかかなり組み直して見せました。古村先生のほかに、長瀬伸也さんのお名前もあって、新鮮で楽しかったです。

 

キトリは中村美月さん、新国立劇場のバレエ研修所からアプレンティスで1年間バレエ団で活躍されたのですが、退団ということで残念。美しくてお芝居心もあるバレリーナさんなんですよね。バジルが峻郁さんでエスパーダを木下さん、益子さんがガマーシュにまわって、宮川さんはファンダンゴ。

 

木下さんの定評のムレータさばきが目の前で!ここの一連は木下さんのリードで男性ダンサーが踊りまして、宮川さんと峻郁さんが飛び交っていましたね、埼玉会館で急にこれ(笑)益子さんも鋭いマネージュなどさすがでした。

 

バレエコンサートや発表会で複数の男性ダンサーが共演することは多いのですが、東京バレエ団と新国立劇場バレエ団は出演が補完関係というか、スケジュール上、どちらかのダンサーが固まって出ていることが多くて、新国と東バのダンサーさんの共演って、ありそうであまりないんですよね、レア感がよかったです~

 

宮川さんはファンダンゴを、手にカスタネットをつけて踊りまして、踊り方が東京バレエ団の伝統をおさえていらっしゃるのだなーと。楽器もよく鳴っていました♪。こういうキャラクターダンスは各バレエ団で微妙に踊り方が違うのですよね。

 

峻郁さんはキトリの中村さんと並ぶと美男美女でお似合い。踊りはどんな動きも好きなようにできる今が旬のダンサーさんぶりでした。2回転レボルタード、でしたっけ、ナナメにきりもみで飛ぶの、いきなりすごい角度とスピードでスリル満点。舞台から飛び出しそうなマネージュと、今年も充実の夏のスタートでよかったのでした。

新国立劇場バレエ団の2025-2026シーズンが終わって、夏休みになりました。ダンサーさんたちはフリータイムになって、バレエ教室の発表会の助っ人に出たり、ふだんできない創作ものに出演したり。海外のダンサーさんみたいになってきたんですね~

 

2026-2027シーズンの幕開けは、新制作「街の灯」で、主な配役は6月に発表でした。

 

 

主演ペアは奥村康祐さんと米沢唯さん、木下嘉人さんと小野絢子さん、石山蓮さんと柴山紗帆さん、水井駿介さんと東真帆さん、と。作品のイメージを決定するのはたぶん奥村康祐さんで、勝利確定なんですが、石山蓮さんの大抜擢が目をひきます。

 

ムービー・スターという役が設けられていて、木村優里さんと福岡雄大さん、山本涼杏さんと速水渉悟さん、吉田朱里さんと渡邊峻郁さん、根岸祐衣さんと井澤駿さんの4通り。ですが誰がどの日に出るのかは未定のままという異例の発表でした。

 

これはちょっと、不安材料といいますか、峻郁さんの出る日がわからないのがワタシ的に困るんですが、それじゃなくてもなんでこんな中途半端なことになったのでしょうか。初日の4か月前にこれってのんびりすぎるのでは。

 

作品決定を聞いてチャップリンの映画「街の灯」は配信で見てみたのですが、お話や着想は魅力的ですが、大スターチャーリー・チャップリンの至芸を見せるための場面がたっぷり長くて、時代の違いで爆笑もできないし、という感じでした。というかタカフミさんはまさかチャップリンじゃないし、あえていえば富豪の役で、ナイトクラブで踊るようなアレンジにしたらいけるかも?など思って見ました。

 

配役が発表になったら、「ムービー・スター」というのができてて、これは酔っ払い富豪とは違う人なのでしょうか。そうすると原作映画には登場しないキャラクターだし、ディヴェルティスマン的に踊るだけの役なのかもしれません。

 

吉田都演出の「ジゼル」で、都さんは振付の改変部分をアラスター・マリオットさんにまかせて、それがすごく成功したんですよね。村の場面はきりっと見せ場になったし、ミルタを中心にしたウィリの踊りは的確なアレンジで、とってもかっこよくて、ロンドンでも大うけでした。

 

マリオットさん、舞台センスはとても素敵な人なのだと思うのですが、経歴を見ると、作品はひと幕ものやデュエットの小品が中心で、大規模な全幕ものをてがけるのは、「街の灯」がはじめてのようなのですよね。

 

「街の灯」は、ティモシー・ブロックさんがもとの映画の音楽を編曲?組曲にして、演奏会もしばしば行っているようで、アルバムも出ています。その音楽を活かして、舞台にしようというのがバレエ化の発想につながったのでしょうか、音楽主体な作品になりそうです。映画と舞台と、お話や場面のアレンジが許されるものなのか、読み替えをしてもいいのか、そのあたりは不明なのですが、映画の逐語訳?みたいなバレエができるのでしょうか。

 

そんな中、文楽も街の灯を手がけているんですよねー、こちらは題名が「まちの灯」で、夏の国立文楽劇場で幕をあけました。

 

 

桐竹勘十郎さんの人形のショットが先に出たんですが、いやーこの時点でもう、凄いです。首にかけた手ぬぐいの、色合いと角度だけで登場人物が、そしてまったく違ういで立ちなのにチャップリンです、さすが勘十郎師。初日からすごい反響だそうです。

 

こちら、音楽は鶴澤友之助さんが手掛けているんですよね。この方は長身イケメンの三味線弾きさんで、クラシック音楽の素養ばっちりで文楽に入った俊英。主な楽器が太棹なので、もとの音楽と同じには絶対ならないわけで、登場人物も着物を着ていて、ある意味「翻案」として、やりやすい作品だったのでは。

 

「蝙蝠の安さん」として、歌舞伎にもなっている「街の灯」なんですが、こんどの新国立劇場は西洋のまま、衣装は同じですよね。奥村さんと米沢さんだったらモノマネに終わらない作品にしてくれるはずなんですが、マイムで表現するのと、踊りになる部分との塩梅が難しそう。

 

華やかなドレスや燕尾服のパーティ・シーンもあるかと思うのですが、そしてムービースターの登場場面がそこだけだったらちょっとさびしい💦んですが。出演メンバーの全体スケジュールは、このぶんだと初日直前に決まっていたりして。もちろん期待なんですが、若干不安な新シーズンの幕開けです。