2023年の夏に初演した「白鳥の湖」のエデュケーショナル・プログラムが、ゴールデンウィークの最終日に再演されました。5月6日、1時と4時の2回公演、4時の部を見ました。

 

4時の部は、吉田朱里さんと渡邊峻郁さんの組合せで発表されたのですが、朱里さんの怪我降板で、木村優里さんが登場、ゆりたか白鳥に。

 

内容は同じなのですが、もう一度見ると、客席を暗くするのにいろいろな導入方法を使って、急に真っ暗、にならないようにしているんですね。小さいお子さんは暗くなるのが怖いそうで、そういう特性をよくわかっているさすがの構成なのでした。バーミンガム・ロイヤル・バレエのオリジナルだそうで、英国の舞台文化の奥深さがわかります。

 

冨田実里指揮の東京フィルハーモニー交響楽団が贅沢に。「ライモンダ」に続いて絶好調に鳴らしまくるチャイコフスキーでした。テーマのオーボエもナポリのトランペットも上手すぎます。

 

この舞台は王子が大活躍なんですよね。ナレーターで再び登場の関修人さんが客席のお子さんも大きなお友達もアタタメまくったところに、突然バレエの衣装でウロウロと登場する王子。会ったこともない人と結婚しなければならないなんて!と難しい説明もしなくちゃだし、最後に至ってはめでたくハッピーエンドになったことを言葉だけで説明するという強引展開です。

 

1時の部の福岡雄大さんは、わたしたちが効きなれた関西アクセントでなく、きれいな標準語でマトモ()な王子さまだったとか。しゃべる王子デビューは成功だったそうです。

 

渡邊峻郁さんは3年前の初演に続いての登場、関さんとも再タッグで、最初からイキもあって安定の展開でした。前のときより声のトーンは低めにして、メリハリもはっきりしていました。マイクをつけてマイクにのせて、大きな劇場でこどもさんにセリフを伝えるのは大変ですよね。ですがこういうの、お上手な峻郁さんなのでした、笑いもとれてました。

 

オデット姫は言葉を言うのはマイムの説明だけ。木村優里さんの発音の安定感🥰 白鳥は可憐に、黒鳥はゴージャスでした。今年は見られないはずだった「ゆりたか」の白鳥はやはりよかったです。コーダは峻郁さんが好調で、片足着地の、バネのあるしなやかな美しさに見とれました。

 

4羽の白鳥、2羽の白鳥を見せて、3幕はちょっとカットしつつ、チャルダッシュ、ナポリ、マズルカ、スペインを見せました。初役の人もいましたが完成度が高い!ゴージャスな衣装の着こなしもみなさんさすがでした。

 

ベンノは中島瑞生さん。ゆりたかコンビと並ぶと美貌度が振り切れているというか、眼福でした。舞台は美しいし、お子さんもいっぱいでよかったでした~





 

 

 

改修休館直前の、5月5日の東京文化会館で、金森穣演出・振付の東京バレエ団の公演「かぐや姫」を見てきました。昼1時の部、秋山瑛・大塚卓・池本祥真・沖香菜子組。

 

「かぐや姫」は2021年から、第1幕、第2幕、全幕上演と、足かけ3年かけて完成したプロジェクトでした。多忙な金森穣さんが本拠地新潟以外で創作するために、変則スケジュールになったのか、今年の再演はパリ・オペラ座などヨーロッパの上演も決まって壮行公演という感じ。

 

主役が秋山さんと大塚さんのコンビでしたが、特別感のある組み合わせですよね。イキが合う以上に、2人で踊るとすっととけあうような親しさがあって、複雑なリフトが美しく映えます。大塚さんは金森さんのスタイルをすごく身に着けた動きができる方で、もう金森さんの男ミューズじゃないかと思うくらい。秋山さんは役柄もあるのでしょうけど、そこまで金森節の踊りには見えなかったですが、「シテ」として地球から月まで支配してました。

 

2021年のスタートではミニキモノとか翁のおうちに位牌とか、市場に西洋野菜とかアレレな物件が目についてどうなることかと思いましたが、時間をかけて修正して、スタイリッシュな王朝ものに。最初に作った衣装や装置を全部ナシにしたのは英断でしたよね~。ほそ身のダンサーさんたちに、メタリックな全身タイツがよく似合っていました、スペースオペラっぽくなっていましたけど。

 

帝とお妃さまの影姫が屈折しててかっこよく、4人の大臣が狂言回しで面白いポジションでした、4人の衣装を色違いで見てみたかった。群舞は、3幕の白が、月光が悪質に侵入してくるみたいで大変よかったです。

 

全篇クロード・ドビュッシーの音楽で、ピアノ曲も管弦楽曲も原典のまま、つけたしカットもなしで使われたのでしょうか。たぶん既成の音源を使っていて、前回気になった音質は今回は均一になっていました。120分近くドビュッシー三昧で、作曲家の内面分析を見ているような気分になってきたのでしたが、金森さんの音楽に対峙した振付の効果ですきっと。

 

やさしげな展開がいささかレトロには感じますが、ベジャールの作品になじんでいる東京バレエ団が、金森穣でこの作品という、つきづきしい感がたいへんよかったです~ いいなと思っているダンサーさんが活躍していて、たいへん楽しみました🥰

 

 

 

新国立劇場バレエ団の「ライモンダ」 直塚美穂さんと速水渉悟さんが主演した千秋楽を見ました。舞台稽古見学会でも見たおふたりでしめくくりでした。

 

「ライモンダ」、昨今の風潮で、人種的な偏見あり演目として上演しにくくなっているとか。ロンドン公演の候補だったのにその問題でジゼルにしたのだそうです。ジゼルもウケてましたけど、新国ライモンダはもっと人気になったのでは。こういう「バレエのためのバレエ」な作品はもともと設定も展開もテキトーなので、なにか上演しやすい方策を考えられないものでしょうか。ゲームな設定にするとか。

 

珠玉のヴァリエーションテンコ盛りで、ライモンダ役が5つ踊るほかに、女性5人が1こずつ受け持って、それぞれクセモノな踊りばかり。主役以外に上手いソリストたちが揃っていないと舞台が残念になってしまいます。いや、誰も失敗しないし、というかここまでできちゃいます、な踊りが次々登場して圧巻でした。

 

敵役アブデラクマンが異文化の人なのも、結局踊りに変化をつけたいからなんですよね。国籍不明のエキゾチックな踊りが続いて、なぜかしめくくりはスペイン。ロシアバレエの伝統を感じる展開ですが、こういうの日本のダンサーは巧いと思うのですよね、ヨーロッパとは違う民族の伝統があるというか。新国の長身ダンサーさんが踊ると迫力も華やかさも倍増で、ホントに楽しかったです。「サラセン人の踊り」の女性トップの根岸佑衣さんと関優奈さんはスゴかったー、ある意味ワルノリもできる方たちで、こういうのが「バレエ団の全幕バレエ」の醍醐味です。あと、3幕では宇賀大将さんが超絶のチャルダッシュを見せてショーストッパーでした。

 

3幕の最後、グラン・パ・クラシックの男性8人と、チャルダッシュの男性8人と、16人が舞台いっぱいに並ぶのですが、白タイツの足が見事に長くて均質な筋肉が見えて、新国の訓練の充実なのだろうと、圧巻でした。日本のバレエ団、かつては男性の身長だけでもなかなか揃わなかったですものね…。

 

新国の訓練といえば、直塚美穂さんは、入団してすぐは踊りのスタイルの違いがあって、何人かで踊っていても直塚さんはすぐ目につきました。それが最近、よく見たら直塚さんだった、になってきて、アクがぬけたというか、新国化したというか。そうしたら主役抜擢の発表がありまして、なるほどなーでした。

 

ライモンダの数々の踊りは、映像でロシアの人で見ていて、理想の形はそれなんですが、直塚さんの踊りはずっと、一番いいところ、に決まってくれるし、手足が長くてラインが美しいし、もっとヴァリエーションがあってもいいくらいでした。

 

2月の「A Million Kisses to my Skin」では渡邊峻郁さんと、持ち上げられっぱなしな過酷デュエットを鮮やかに見せた直塚さんでしたが、ライモンダも上がったらキレイ。速水さんとも相性がよさそう。渡邊直塚速水はフォーサイスでも、これまた過酷な踊りで活躍していましたよね。クラシックだけでなく、こういう作品の経験も、直塚さんの踊りのスタイルに影響があったのかとも思いました。

 

踊りとグラズノフの音楽の相乗効果も嬉しすぎる舞台でした。グラズノフ、交響曲を聴いてみたのですが、ご陽気展開でびっくりしました。こんな苦悩してないシンフォニーがあっていいのでしょうか、ライモンダは憂愁シーンよりみんなで、のシーンでアホほど盛り上がってしまうのは、作曲者のもともとの性質がそうだからなのかと、目からうろこのゴールデンウィークでした。

 

月がかわって5月、新国立劇場バレエ団の、木村優里さんと渡邊峻郁さんが主演する「ライモンダ」を見てきました。今週は火曜日も金曜日もゆりたかコンビ。

 

幕開けの紗幕ごしに、峻郁さんのジャン・ド・ブリエンヌが優里さんのライモンダにヴェールを渡す姿から情緒たっぷりで、渡邊拓朗さんのアブデラクマンが大きく訴えかけて、これはと思う出だしでした。

 

今日は「夢の場」が見事。夢のなかで、絵から抜け出てくるジャンのソロが、腕をひろげただけで恋人への思いが伝わってきて、ふたりで踊ると情緒も倍増。ここ、よく見ると振付は月並みすぎなんですが、静かな中にもドラマたっぷりのアダジオでした。別れるときにすっと頬をよせたのもナチュラルに美しかったでした。

 

すでに盛り上がって迎えた2幕は、めくるめく面白さ。キャラクターダンスもイタについて、新国のみなさんの、勢いのあるプロフェッショナルぶりが映えます。根岸祐衣さんのサラセン人のダンスがバカウマで話題に。木下嘉人さんのスペイン人もやりたいようにやっててカッコよかったです。

 

公演期間出ずっぱりな拓朗さんのアブデラクマン、佇まい、間のとりかた、踊りのアクセントのつけ方も申し分なく、連投の大変さより、その効果が大きかったというか。迫力のなかに異国の王様の純情も見えるのがなんともいいんですよねー。

 

そして激オコ!で登場する兄のジャン、兄じゃないけど。一瞬弟が「怒られた?」みたいな空気が漂って、体格差にかかわらず負けちゃうのはそのせいかも。こういう場面の峻郁さん、凄いマナザシで、剣をとりあげるのも手袋を投げるのも、巧くてステキ🥰 2どめの兄弟対決はさらに充実のスペクタクルでした。

 

最終幕は8人の男性ダンサーの白タイツの勢ぞろいが圧巻、パ・ド・カトルはいつも作品の技術最難関部分をになうメンバーで、超高水準でした。

 

優里さんのライモンダ、ヴァリエーションのひとつひとつに表現を載せて見せたのが新鮮で、最後のピアノの部分の深みに驚きました。

 

峻郁さん、ピルエットの調子も戻り、火曜日なんだか不調だったんですよね←、難しいジャンプも騎士として跳んでいました。ライモンダ見得というか、あのポーズもかっこよかったです~

 

火曜日の舞台も満足でしたが、ゆりたかならもっとできるはず、のその通りな舞台になって、非常に幸せでした🥰

 

新国立劇場バレエ団「ライモンダ」木村優里さん、渡邊峻郁さん主演の回を見てきました。

 

ヒロインライモンダが木村優里さん、婚約者ジャン・ド・ブリエンヌが渡邊峻郁さん。アブデラクマンは、中家正博さんが降板で、渡邊拓朗さんが出演することになって、思いがけない兄弟対決になりました。

 

ライモンダのお友達4人は、花形悠月・金城帆香・森本晃介・中島瑞生。全体に長身で、美形ぞろいのキャスティングでした。山本涼杏さんと根岸祐衣さんが、ヴァリエーションやキャラクターダンスで活躍しました。

 

ゆりたかはやっぱり名コンビです~、まず体格的にバランスが抜群、お似合いな美貌で、並んだだけで特別なのに、ふたりの表現の質感が共通していて、よくこんな組み合わせが誕生したものだと、今日もとても思いました。

 

ライモンダの優里さん、背中がとてもキレイで、上半身が柔らかく、回転も絶好調で、沢山の踊りを、ひとつひとつの色合いの違いを丁寧に表現して鮮やかでした。プリマ・バレリーナとしてひとつヌケた感じがしました。

 

ジャン・ド・ブリエンヌの峻郁さんはクラシックの型の中で見せる、全身の調和と表現力がさすがです。舞台を2周半するマネージュも、余計な力がなくふわっと浮かぶ超絶技巧。アブデラクマンの前に立ちはだかる姿は、前のときは激オコ!だったのですが、今回は氷の冷たさで登場。恐ろしいほどのマナザシが効いて、歌舞伎役者のようでしたわ。

 

お兄さんと対決した拓朗さんのアブデラクマン、美丈夫な異国の王様で、大柄な存在感もお芝居も素晴らしいー。もともと配役されていたとはいえ、中家さんの代役のぶんも出ずっぱりの、大活躍にふさわしいお姿でした。兄弟対決はお兄ちゃんの異常な気迫で、優しく負けてしまうのがさびしかったです。

 

2幕の、ライモンダとアブデラクマンと4人のお友達のパ・ド・シス、というか、1対5で踊るグラン・パ、これやっぱり最高に面白いですよね。アブデラクマンを遮ってライモンダを守ろうとして、でも取り返されてしまって、な緊迫のアダージオから、能天気、ただし激ムズなヴァリエーションの数々、続くコーダのスピード感。こういう場面の花形さんのお芝居がやっぱりよくて、あと、瑞生さんが踊りもよかったし、まっすぐな脚線に見とれました。

 

グラズノフの音楽はすごく美しいのですが、チャイコフスキーじゃないしストラヴィンスキーまで行かないし、どういう音楽?の曖昧な色あいを、アレクセイ・バクラン指揮の東京フィルハーモニー交響楽団が、これです!と教えてくれるような演奏。キャラクターダンスの民族的な響かせかたも絶妙でさすがでした。今回トランペットが素晴らしくて、どなたなんでしょう。2幕の大混乱に「ライモンダのテーマ」がトランペットで入るのですが、音色が鮮やかすぎてちょっと笑ってしまいました。

 

終幕、8組の男女を従えたグラン・パ・クラシック、昔の日本のバレエ界だと男子を揃えるだけでひと苦労でしたよね、目の前の威容に圧倒されました。クラシックバレエの厳しい条件を満たしたダンサーさんが、しかもこんなにキレイな方ばかり、なんて贅沢なんだろうと思った初台でした。