6月の区議会で出てきた議案の中に、区立デイサービスである高野台デイサービスの認知症対応型通所介護を廃止するという議案がありました。
高野台デイサービスは一般のデイサービスの定員が48名で登録人数が119名、認知症対応型のデイサービスが定員10名で登録人数が14名。7月から改修工事のためいったん休止になります。
2025年4月に再開後、一般のデイサービスの定員を30名に減らして、空いたスペースに地域包括支援センターと街かどケアカフェを設置、認知症対応型デイサービスについてはこの休止の段階で廃止するというものです。
今まで一般デイ利用登録をしている119名のうち、6月中旬の段階で88名がほかのデイサービスの移行を希望し、
同じ法人の運営する豊玉南のデイサービス 31名
他の区立デイ 3名
そのほかの民間デイ 50名
認知症対応型 1名
検討中 3名
という状況だったそう。
また、認知症対応型の登録14名のうち
豊玉南 3名
民間の一般デイ 2名
認知症対応型 8名
在宅で介護が 1名。
ここで、それぞれのデイサービスの説明を少し書きます。
利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護の負担軽減などを目的として実施し、一般のデイサービスと地域密着型の違いは定員数です。職員配置基準などは同じ。
認知症対応型の場合は、管理者に研修を求めたり、職員配置が手厚いなどの違いがあります。
〇一般のデイサービス:定員が19人以上のデイサービス
〇地域密着型:定員が18人以下(要支援の場合利用不可)
〇認知症対応型:定員が12人以下
認知症の利用者を対象にした専門的なケアを提供するサービスで、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう支援する。管理者が専門の研修を受けている必要がある。
(社会保障審議会 介護給付費分科会2020年7月20日資料1より)
上の表は事業所数の推移ですが、練馬区が発行している「ねりまの介護保険」や「ねりまの福祉」という冊子を過去に遡ってかとうぎが調べました。(定員19名以下の受け入れである小規模なデイサービスが地域密着型と位置付けられたのが2016年からなので、それ以前と以後でカウントのしかたが少し変わっています)
これより以前のものを見つけられませんでしたが、私が議員になった頃(2007年)から、練馬区だけではなく高齢者のデイサービスは多くなっていたように記憶しています。私が議員になる前、デイサービスで働いていて、数が多いから運営が大変だなと思った記憶がありますので。
しかしこの5年ほど、減少傾向にあるのが見てとれます。特に地域密着型と認知症対応型という少人数のデイサービスが減る傾向にあります。もともと競争が激しかったところにコロナ禍での利用控えで運営が厳しかったところも多いのではないでしょうか。
こちらは先ほどもご紹介した社会保障審議会の資料で、地域密着型通所介護や認知症対応型通所介護が減少傾向なのは全国的に見ても同様といえます。
区立のデイサービスは現在8か所あります。
「区立デイサービスができたのは介護保険ができる前後の頃で、介護保険開始時は区立を含めデイサービスが20しかなく、利用したくてもしづらい状況の中増やしてきた経緯がある。現在は認知症の人が利用できるサービスの選択肢も、小規模多機能型(15か所)看護小規模多機能型居宅介護(8か所)やグループホーム(39か所)など増えてきており、一般のデイサービスでも認知症の人や介護の度合いが重い人を受け入れた場合の報酬加算などもできて、従来区立が果たしてきた役割も終わりつつあるから、今後区立デイサービスは順次廃止する」というのが区の考え方です。
重度の人への対応や認知症への対応、コロナ禍で求められたきめ細かな対応などは、民間でも同様に対応してきている状況の中、私は、区立のデイサービスが役割を終えて閉じていくことは仕方ない面もあるのではないかと、基本的には思っています。
でも特に認知症対応型についてはどうだろうか。
高齢者人口、要介護認定者の人口も増えているにもかかわらず、認知症対応型は民間でも減少傾向にある。利用率は5割程度。その理由を問うたところ、「一般のデイサービスよりも高いために利用者負担額が大きい」「認知症という名称がついていることから本人・家族に抵抗感がある場合もある」という答弁がありました。それは確かにあるとは思いますが、だからといって利用が少ないから減らすということではなく、まずは少人数で手厚く専門的な対応をすることのできる認知症対応型デイサービスの良さを啓発し、活かしていく取り組みを区が率先して行うことが必要なのではないかと感じました。
あと、私は、このところ小規模なデイサービスが減っていることは憂慮することと考えています。
どんな場だったら自分が自分らしくいられるか、というのは、人によって様々だと思います。40名以上など、たくさんの人がいて、その中でいろんな人と友人になったりお話できたり交流することが楽しいという人もいるでしょうし、少人数でじっくり関係性を作るほうが良い人もいるでしょう。
例えば私などはあんまり人数が多いのは得意でなくて、あまり話せずしょぼんとしてしまうので、学校のクラスで友達を作るのが苦手で、卒業して再会して個々にお話しできてやっと友達になるということが多いので、高齢者になってデイサービスに行くなら少人数が良いと思っているんですが。私が働いていたデイサービスも少人数のデイサービスだったので、例えば視覚障害がある人に対して配慮した声かけをしたり、利用者同士でも気配りし合ったりすることができていました。個別性の高い支援をするには少人数のほうがしやすいという面があると思います。
区は、小規模多機能型などの選択肢も増えていると言います。たしかに小規模多機能は、泊まり、通い、ヘルパーを同じ事業所で利用できるので、認知症の人にとっては安心して使いやすいと言えると思います。さらに看護小規模多機能型なら看護師の支援もあります。しかし、これも利用率が上がらないのが課題で、改めて利用率を聞いたら、なんと認知症対応型と同程度の5割程度だというのです。これでは、代替サービスが充実したとはいえない。むしろ、認知症の人は増えているのに、本来適しているサービスにつながれていない人が多いと考えられるのではないでしょうか。
また、グループホームも代替サービスのように説明していましたが、デイサービスと小規模多機能は通所系(つまり、自宅から通って利用するサービス)だけどグループホームは居住系(つまり自宅から住み替えるサービス)で、どちらかがあれば良いということではなく、本人・家族の主体的な選択によって選ぶものなのだから、グループホームが増えればデイサービスは要らないというわけではないので、なぜ並べたのかなと思いました。
こうして考えると、高齢者も増え、介護が必要な人、特に認知症の人が増える中で、認知症対応型デイサービスは残すべき。例えば改修が終わった後に、定員を減らしてでも一般デイと併設させる形での認知症対応型を残すべきだったのではないかと思います。
今回の議案を検討する中で、区立だからと一律に廃止と決めるのではなく、その果たしてきた役割や事業の持つ性格を考慮した対応をすべきであると思いましたので、この議案には反対をしました。