旅のつれづれ276 奈良 長谷寺
長谷寺(はせでら)は、奈良県桜井市初瀬(はせ)にある真言宗豊山派の総本山の寺院で、山号は豊山(ぶさん)、院号は神楽院(かぐらいん)、本尊は十一面観音(十一面観世音菩薩)です。開山は道明といわれています。初瀬山は牡丹の名所であり、4月下旬から5月上旬は150種類以上、7,000株といわれる牡丹が満開になり、古くから「花の御寺」と称されていました。また『枕草子』『源氏物語』『更級日記』など多くの古典文学にも登場します。中でも『源氏物語』にある玉鬘の巻のエピソード中に登場する「二本(ふたもと)の杉」は現在も境内に残っています。創建は奈良時代、8世紀前半と推定されていますが、創建の詳しい時期や事情は不明です。寺伝によれば、686年天武天皇のころ、僧の道明が初瀬山の西の丘(現在、本長谷寺が建てられている場所)に三重塔を建立、続いて727年、僧の徳道が聖武天皇の勅命により東の丘(現在の本堂の地)に本尊十一面観音像を祀ったという伝承が残っています。847年12月21日に定額寺に列せられ、858年5月10日に三綱が置かれたことが記され、この時期に官寺と認定されて別当が設置されたとみられています。長谷寺は平安時代中期以降、観音霊場として貴族の信仰を集め、1024年には藤原道長が参詣しており、中世以降は武士や庶民にも信仰を広めました。創建当時の長谷寺は東大寺(華厳宗)の末寺でしたが、平安時代中期には興福寺(法相宗)の末寺となり、16世紀以降は覚鑁(興教大師)によって興され頼瑜僧正により成道した新義真言宗の流れをくむ寺院となりました。1588年、豊臣秀吉により根来山(根来寺)を追われた新義真言宗門徒が入山し、同派の僧正専誉により真言宗豊山派が成立していきました。十一面観音を本尊とし「長谷寺」を名乗る寺院は鎌倉の長谷寺をはじめ日本各地に多くあり、240か寺ほど存在します。首都圏に住んでいると鎌倉の長谷寺をイメージしますが、他と区別するため「大和国長谷寺」「総本山長谷寺」等と呼称することもあります。新年早々に訪れたので初詣の参拝者で賑わっていました。近鉄の長谷寺駅です。