毎週日曜日に連載中の『私が大切にしている言葉たち』シリーズ
私がこれまでに出会った恩師やダンサーの方たちの言葉の中から、大切にしているものを紹介していきます。
今週も、私がはじめてバレエを習った教室を主宰されていた先生の言葉から。
『あの子は、口が堅いわ。』
これも、私が直接聞いた言葉ではなく、他の方から「先生が桜さんのことを褒めていましたよ。」と教えてもらったものです。
それは、スタジオに事務のアルバイトとしてとして働き始めて1ヶ月ほどたった頃のことでした。
レッスンではめったに褒めない先生ですが、スタッフとしては、何度か直接褒めていただき、
「ありがとう。あなたが来てくれてから、私の仕事がめちゃくちゃはかどっているの。」
「仕事が早い!」
「教えてもいないのに、こんなことも出来るなんて、すごいわ!」
と、大絶賛していただき、時給も働きはじめて1週間で、1.5倍!にしてくださいました。
ますます、気合を入れて仕事をがんばる私です。
すると、先生は今度は、
「桜さん、せっかくバイト代もらっても、肩が凝って整体に行くようでは何をやっているかわからなくなるから、肩がこらない程度に仕事してよっ。」
と爽やかに笑いながら言ってくださり、私は
(先生は、本当に人の気持ちが良く分かる、気配りの方!こんな素敵な女性になりたい!)と感激したことを、昨日のことのように憶えています。
(よしっ、ますます、がんばろう!) と思ってから、(あっ、ダメダメ、肩が凝らない程度にだった)という無限のループにはまる、若き日の私なのでした。
周囲の人からも、先生が褒めてくださっていたのが、直接言われる10倍くらい伝わってきて、
「先生は、あなたが来てくれて、本当にめちゃくちゃ喜ばれていますよ!」
「これまで、何度もお忙しそうな先生に“大人の生徒の方に、スタジオのお手伝いをしてもらってはどうですか”と進言していたのだけれど、先生は頑として首を縦に振られなかったのが、先生は今、桜さんに手伝ってもらって、本当に喜ばれていますよ~!」
「せ、先生があなたのために、このスタジオを会社にしようとされていますよ!」
(これは、私が先生に、「うちでこのまま、ずっと働いてちょうだい。」と言われたのですが、私が「そうしたいのですが、このままずっとアルバイトという訳にはいきませんので、いずれは正社員の仕事を探します。」とお断りしたからです。)
そうやって、褒めていただいた言葉の中で、私が最も憶えているのが、今回の言葉です。
ある方が「先生があなたのことを、褒めていましたよ。」と言って教えてくれた言葉。
「あの子は、いいわ。明るいし。それに何より口が堅い。」
これを聞いて、私は驚いたんですね。
仕事のことで、口を堅くするのは当たり前だと思っていたからです。
その方が言われるには、先生が大人の生徒にこれまでお手伝いを頼まなかったのは、情報が他の生徒に漏れてしまうと困るからだったそうです。
生徒がスタッフとして教室の手伝いをすると、そこで知ったことを、普通はお友達である、他の生徒にしゃべってしまうのだ、と。
バレエ教室に通っていると、必ず仲の良いお友達やグループが出来ますからね。
たとえば、スタッフをしていれば、次の発表会がいつどこで開催されるのか、演目は何なのか。
先生や生徒たちの氏名、住所、電話番号などの個人情報。
かかってくる電話や届くメールから、先生方の交友関係。
ゲストダンサーの住所や連絡先。
そういった情報が入って来ます。
生徒や父兄の中には、そういったことを知りたがる人もいます。
実際に私も仲の良いグループの人に、次の発表会の演目は何なのかや、先生方のプライベートなことなどを、何度も聞かれました。
そして、それを教えないと、無視をされたり、悪口を言いふらされたりしたこともありました。
それでも、私は絶対に自分が仕事をする上で知った情報は他の生徒には言いませんでした。
おそらく、先生はそういったところを見てくださっていたのだと思います。
私にとっては当たり前のことでしたが、それは当たり前のことではないのだと、評価してくださいました。
その時、私は人は自分の長所は自分では『やって当たり前』なことだと思っているので、長所だと思っていないんだな、ということに気がつきました。
また、それと同時に、自分が尊敬している先生が、人のどこを見ているのかというと、やはりそれは
「この人は信用出来るか。」というところなんだな、ということも学びました。
学生時代や、男社会であった10年務めた会社では教えてもらえないことでした。
女性の上司に教えていただけることというのは、本当にたくさんあるのだなと思いました。
さて、これだけだと、ちょと私の自慢で終わる感じになってしまいそうな気がするので、先生にまつわるエピソードをひとつお話しますね。
ある日、スタジオで私が1人でお留守番していると、1本の電話がかかってきました。
電話の相手は、東京のとあるテレビ局の方で、先生に取り次いでほしいと頼まれました。
先生は外出中であることをお伝えして、ご用件をお伺いしたところ、BSの対談番組への先生の出演依頼でした。
先生はバレエの先生でもあり、教室の経営者でもありましたが、実は趣味でも有名な方であり、そちらの趣味のことで、坂東玉三郎さんと対談して欲しいというお話でした。
私は坂東玉三郎さんをダンサーとしてリスペクトしていましたし、舞台も見に行ったことがあるくらい好きだったので、震える手で電話を切った後、スタジオに戻って来られた先生に急いで、そのことをお伝えしました。興奮して、たぶん、声が裏返っていたと思います。
すると先生は、手帳を見て、
「ダメだわ。その日は舞台のリハーサルがあるわ。」と言われました。
そのスタジオの舞台ではなく、岡山のバレエ教室のそれぞれ上手な生徒が数名ずつ集まって行われる舞台でした。出演者たちはしっかりしているし、リハーサルも何度もしているし、先生がいなくても、大丈夫ではあったと思います。(ちょっと記憶があいまいなので、もしかしたら先生が役割をお持ちだったのかもしれませんが)
私は、差し出がましいと思いながら、先生にこう言いました。
「先生、大丈夫です、私、絶対に、絶対に、絶対、絶対に、絶対に、このことを誰にも言いません!お墓まで持って行きます!収録日と放送日は違う日ですし、私が黙っていれば誰にもわかりません。だから、だから、玉三郎さんの方に行ってくださいぃ~~~!!!お願いです~!先生~!玉三郎さんに~!!」
一体、なぜ私がこんなに必死になってお願いしているのか、今でもちょっと意味がわからないのですが、私が玉三郎さんにお会いしたかったんでしょうね。
そして、お二人が対談している姿を、テレビで見て見たかったのでしょうね。
先生は、「・・・・・。」しばらく無言で考えられていましたが、結局、そのオファーを断って、舞台のリハーサルに行かれました。
それを見て、「やっぱり先生はちゃんと責任を果たされるのだなぁ。」と思いました。
(今の私が同じ状況でも、やはりリハーサルをとると思いますが、相手が嵐だったら相当悩むでしょうね)
結局、対談には行かれなかったので、秘密にする必要はなかったのですが、先生も誰にもおっしゃっていないようでしたし、私も先生に「口が堅い」と褒められたこともあり、今日まで誰にも言ったことがありませんでした。
今日、ここで、はじめて言いました。
もし、当時同じ教室にいた方が読んでくれていたら、
「そうなのね!わぁ、先生すごい!!そして、先生らしい!」と喜んでもらえたら嬉しいです。
私はその後ずっと、心の中で、
「うちの先生、玉三郎さんと対談のオファーが来るくらい、すごいんやで!プライベートでも、すごい先生なんやで!でも、それを断ってでも、ご自分の仕事をまっとうされる、素晴らしい先生なんやで!」と1人で自慢していました。
今でも、私たちにとっての自慢の先生であり、この言葉は私が今でも大切にしている言葉のうちの1つです。
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